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「リアルにこだわる理由」

ここまで美しい夕陽にはあの日以来、出会っていないだろう。

バリ島西部ジェンブラナ県プンゲラゴアン村から眺めるインド洋岸を切り取った瞬間だ。

一通りすべき最低限の添乗業務をこなせるようになり、ワンランク上の社会人を目指し情熱を燃やしていた。

心地よい業務の疲労感を覚えながら、その甘美な癒しをくれる茜色の前で、時間は意味を成さず、潜在意識としてこの瞬間を脳裏に焼き付けなければとならないと思った。

入社4年目の夏だった。

その3年後、再びこの地を訪れた時は大学生約60人と一緒だった。この農村へホームステイプログラムを行うためだ。

研修の途中、引率教員のポケットマネーで子豚を購入しバビグリン(豚の丸焼き)を作った。

子豚を屠殺し、内臓を取り出し、スパイスを詰め、口から肛門にかけ一本の鉄棒を突き刺し炭火でじっくり8時間こんがり焼く。リアルな食育がここでは体験できる。先程まで元気だったが、ふと身の危険を感じた子豚の鳴き声は今でも鮮明に記憶している。

旅の体験はリアルなものにこだわってきたので、大学の研修プログラムには海外の大学間交流や日系企業訪問、ホームステイなど、観るだけの観光とは真逆の内容を盛り込んできた。

とにかく感受性豊かな若い学生のうちに異文化の人やモノに触れてこそ価値が生まれるものだと思ってる。
withコロナ世界でバーチャル旅行の波が押し寄せているが、リアルにこだわる理由はより鮮明になり一層価値の高いものとなるだろう。

時代と社会のすり合わせをしつつ、このフェーズにおける付加価値とは何かを真面目に考えている。具現化できる答えが詰まったツアーを毎年生み出していきたい。

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