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中国製のプロダクトが悪い?

昨日記事で、goyemonさんの中国産の切子グラス 「Fuwan-浮碗-」を取り上げたけど、中国製のプロダクトが悪いと言いたいわけではないので、改めて記事を書いてみる。


同時期に販売が開始された、中国産のプロダクトの二つの良い例があったので、とりあげてみる。


dripさんの中国製のハンガー「oneger」

一本でパンツもジャケットも掛けられる、クローゼットを「掛ける収納」に変えるハンガーです。様々な機能を一筆書きの線で描くシンプルかつジェンダーフリーなデザイン。肩や首まわりを伸ばさない、服に優しい設計


goyemonさんの中国製の切子グラス 「Fuwan-浮碗-」

切子の持つ美しいデザインを、最新技術を取り入れ機能的にリデザインしました。結露しにくいのでコースターいらず!電子レンジも使えて、すぐに素手で持てる!ペアでご贈答用にも!こだわりのパッケージでお送りします。


これ2つが共通すること・明らかに違うことがあるので書いてみる。そこから、日本のモノづくりと中国のモノづくりの違いを考えていきたい


共通点① 日本でのコストが高いから中国で生産する

なぜこの二つが中国生産するのかというと、コストが安いという点が一番大きな理由なはず。または技術的に日本での生産が難しいから中国で生産を行う。(この場合でも日本の工場はコストが合わないので断ることが多い。)

日本が高いと表現するよりは、それほど海外・中国での生産コストは安い。原価でいれば、約1/5から1/2以下にはなるはず。金型の製作費も、中国で作れば、かなり安くなる。製造費には人件費が大きく関わってくるため、海外や中国の人件費が安いため、生産コストも安くなる。

と言っても、中国の人件費もだいぶ高くなってきているので、めちゃめちゃ安かったころに比べてると、関税や輸入コストなど煩雑な業務などがあるので、そこまで大きな差は無く、メリットあるかなとも最近思える。


共通点② 中国で生産しても質は高い

まだこの二つの実物を見ていないから何とも言えないけど、基本的な質の話で言うと海外産、特に中国産はかなりレベルが高い。不良率が多かったり、流通の問題はあるけど、数十年と大量生産を経験してきた積み重ねなどで、質は確実に向上した。

勿論、日本の質は非常に高いんだけど、ただ費用も高い。

これも60年代辺りからの大量生産大量消費時代に、海外で生産することによって日本の製造業が衰退したせいなんだよね。製造メーカーや職人の数が減れば、その分だけコストがかかる。だからと言って、このまま安いからと言って海外での生産を続けると、これか更に加速すんだよね。これを結構前から分かっていることなのに、何故続けるのかな。

自分がデザインしているインダストリアル製品は中国や上海で製造することも多いので、質がかなり向上していることも知っている。でも日本の文化に関わるものは日本で作っていきたいよね。


共通点③ 中国で生産すると、ロット数が多くなる

この二つのプロダクトも、中国産なので初期ロット数が非常に多い。

ロット数というのは、1回で生産する製品の定量のこと。つまり、最低はこの数は、初回生産で作らないといけないんだけど、その数は中国の場合は、非常に多い。形状や大きさにもよるけど、最低では1000個以上、普通でも3000個から10000個となる。基本的には数増えるほど、一つに掛かるコストは下がる。大量に作ることで、原価やコスト下げることができるのが中国生産のメリット。

この逆が日本では手加工や長年の技術や知識を活かして、少量生産・多品種に対応できるのが日本のモノづくりの強みと言える。数多く作る場合はそれなりの設備や人手が必要になるけど、数十個、数百個単位では日本の方が向いている。


共通点④ 2人組の同世代が開発・販売を手掛ける

これは中国産とか関係ないんだけど、この二つのプロダクトは20代の二人組ユニットが手掛けている。一方はメーカー、もう一方はデザイナーであるんだけど、若い同世代がものづくりをしているのは素直に嬉しい。

この二つともmakuakeというクラウドファンディングサイトを利用し、2-3日で完売しているのも共通している。

つまり、これは自分達で一からものづくりできる環境が整っているということ。ネットの環境が整ったことで、資本や特別なスキルや経験が無くても、企画から生産、販売までできてしまうのが今。みんなやろう。


決定的な違いは、伝統を売りにしていない

まず、dripさんの中国産のハンガー「oneger」。

これは素直にめちゃめちゃ良いプロダクトだと感じる。自分たちが使いたいものを突き詰めて行って、試作も何回もして、色々と生活の中で使い倒したんだろうなというのが伝わってくる。その結果、あの形状や機能になったのだと思う。

dripさんの開発ブログでも書いていたけど、最初は日本での製造を考えていたけど、原価だけでも当初の2倍以上になったので、中国の生産にしたと書いてあった。ユーザーのことを考えると、安くて良いものを作りたいとなるので、このプロセスは納得できる。


次に、goyemonさんの中国産の切子グラス 「Fuwan-浮碗-」

前回の記事でも書いたので多少割愛するけど、コンセプトが切子×ダブルウォールグラスというもの。つまり、ダブルウォールグラスというのは既にあるものなので、日本の伝統技術としての切子を組み合わせることがこのデザインの肝だといえる。

こちらはgoyemonさんの活動レポートから、日本での製造が技術的に難しいという判断から、中国での製造に踏み切ったと書いてある。日本の職人さんには一円も落ちておらず、ユーザーは中国製の安価な切子グラスが手に入る。これが本当に誰にとって、プロダクトなのかを考えていきたい。

日本の生産は行われず、中国での生産になった切子グラス。この製品の伝統の要素は、七宝と呼ばれる伝統文様のみ。せっかくアイデアは素晴らしいので、切子や伝統という言葉を使わずに販売して欲しかった。

つまりは、日本の伝統技術とか伝統工芸品を売りにしつつ、中国で安く作って販売するのは駄目だと改めて言いたい。


最後に

これは自分の考えなので、押し付けるつもりはないけど、日本で作るのは高いから、海外で作るという考えや選択肢は減らしていきたい。

日本で作るのをやめていく影響などもあって、日本の中小規模の製造業がどんどん潰れているのが現状。日本には約40万社の製造会社があるけど、毎年5000社ずつ倒産しているので恐ろしい

その倒産していく企業の中には、そこでしか作れないものや技術があり、それが永久的に失われてしまうのよね。それが今、もしくは未来のものづくりにおいて欠かせないものであることもあるはず

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三島大世
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