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職人の世界は分業制

職人の世界は基本的には分業制で、製品として完成するまでに多くの工程に分かれており、その一つ一つにその専門の職人が存在しています。つまり、一人で完結する仕事ではなく、協業して成り立っていると言えます。

例えば、陶磁器。ひとつの焼き物が完成するまでに、陶土屋、型屋、生地屋、窯元など非常に多くの職人が関わっています。

なぜ職人は分業制になっているのか?というとそれぞれの工程が、非常に高い専門性を必要とするので、1人前になるのに10年かかるとも言われています。つまり、分業せざるを得ず、其々が代替不可能な人材とも言えます。

どの工程も無くてならないものであり、全ての工程が大切だと言えます。


各業界の分業制について。

まずは、分業制が具体的にはどんなものかを知ってもらうために、各業界の分業制について、ご紹介します。後日noteでも詳しく書いていきます。

・陶磁器
陶磁器業界の分業としては、陶石から生地を作る「陶土屋」、陶磁器の石膏型を作る「型屋」、その型から生地を作る「生地屋」、その生地を焼く「窯元」、絵付けや装飾を施す「上絵屋」などがあります。

・漆器
漆器業界における分業は、大きく3つに分けられます。木工をする「木地師」と、漆を塗る「塗師」、装飾を施す「蒔絵師」です。その前段階に、漆を取るために、ウルシの植栽と生育の管理をする漆掻き職人も居ます。

・織物
織物業界における分業は大きく5つに分けられます。デザインや色を決めて紋紙を描く「企画」、撚糸や染色をする「原料準備」、製織をするための織機や道具を準備する「機械準備」、織機にセットされた経糸に緯糸を織り込む「製織」、検反や洗浄、シワ伸ばしをする「仕上げ」があります。

これらの製品が完成後に、注文をまとめて卸す「問屋」や消費者に販売する「小売店」などを経て、ひとつの製品が消費者の手に届きます。


分業制の利点

より質の高いものを、より早く、より多く生産できる点にあります。生産効率を高めることができ、経営的にも安定することもできます。さらに自分の作業に集中でき、専門分野の技術を高められる点もあります。

すべての工程を一人や一企業だけでこなしていくのは、時間がかかり、少量しか生産ができません。その分、生産者への負担が大きくなります。

そのために分業制が生まれ、分業に関わる人の負担を減らし、安定して収入が得られるようになりました。


分業制の問題点

まず相互依存が高く、共倒れの可能性も高い点にあります。特に伝統工芸は素材加工をする川上から、成果物を仕上げる川下まで、全てが一つに繋がっている運命共同体と言えます。成果物の伝統工芸自体が売れなくなると、この分業に関わる全ての職人に影響があります。

また専門分野に特化しすぎたせいで、他分野に応用できない点があります。本業で用いられる技術を転用することができれば、仮に伝統工芸の売れ行きが下がっても、経営的には破綻することは少なります。

個人だけでは完成しないので、アンバランスな力関係が生じてしまうことがあります。成果物を仕上げ納品するのは、最終工程を担っている元締め。つまり、陶磁器なら窯元さんや織物なら織元さんの立場が強くなってしまうこともあります。


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