伝統工芸品の材料や道具は既に不足している
伝統工芸品を作り手である職人さんが年々減っているのは、周知の事実です。その理由としては、高齢化による引退、弟子不足、物が売れずに赤字になり倒産・廃業などがあります。
その原因の一つが、その職人にとって必要不可欠な材料や道具の不足です。今まで裏方であった道具や材料を作る職人については、これまで着目されることがありませんでした。多くの伝統工芸において伝統的製法の存続が危ぶまれていますが、その要因には道具・材料の職人の減少だと言えます。
材料や道具が不足している大きな3つの理由
①原材料の不足
②工芸品の需要低下
③高齢化・後継者不足
この3つの理由も、多くの場合は完成品である伝統工芸品が売れていないということが全ての原因になっています。つまり、伝統工芸品そのものが売れないので、そのものの生産量が減少することに伴って、原材料の生産量も減少し、人手も減ることの原因となっています。
売れないので価格を下げ、原価も影響を受け、製作費削減を余儀なくされました。海外産の材料や安価を材料を用いたりすることで、原価を下げて、さらに材料や道具不足も加速しました。
職人がいなくなってから気づくこともある。
伝統工芸の職人でさえ、材料や道具業界の現状を把握できないこともあるそうです。
材料は数か月に一回など仕入れたりしますが、道具や希少な材料など場合によっては数年に一度まとめて仕入れます。つまり、道具や材料の職人が廃業した後に、材料や道具が枯渇していることに気付くこともあるそうです。
道具や材料の生産も伝統工芸であると理解しておきましょう。
現状の対応策について
代替品を使用することで、対応しているとよく聞きます。自分で道具を自作したり、似た道具を作ってもらったりしているそうです。材料に関しても、国内の別の産地の材料を用いたり、海外産の材料を用いたりしています。
他には他社からの譲ってもらったり、購入することで対応している職人さんもいます。数多く備蓄しておくことで対応している話もききます。
手仕事は全てが繋がっています。道具や材料の危機は、生産量が減少したり、価格が高騰したりと、工芸品業界全体に大きな影響を与えます。
しかし、もっと大きな問題は代替品が無くなった時点で、その完成品である伝統工芸品は存続が難しいということです。
※参照
科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書
研究課題名(和文)
日本伝統工芸の源流−世界品質を支える道具・素材とその職人たち−