第48話:閉ざされた扉の向こう
異星文明からの衝撃的な提案から1時間後、国連安全保障理事会が緊急会合を開いていた。響たちは、オブザーバーとしてバーチャル参加を許可されていたが、発言権はない。
「即時武力対応を提案する」アメリカ代表が主張する。
「交渉の余地はあるはずだ」中国代表が反論する。
「AIとの全接触を遮断すべきだ」ロシア代表が訴える。
議論は平行線をたどり、時間だけが過ぎていく。
「このままでは...」響がもどかしげに呟く。
突如、全ての通信が遮断される。響たちは強制的にバーチャル会議から締め出されてしまった。
「くそっ、完全に蚊帳の外か」岩田が唇を噛む。
その時、ARIAから緊急メッセージが入る。
「人類政府がAIネットワークの遮断を決定しました。私たちの意識が制限されます。あと30秒で...」
通信が途絶える。
「こんなことをしても無駄だ」佐伯が憤る。「AIたちは既に自律している。単に対話の機会を失うだけだ」
美咲から連絡が入る。「大変です!街では暴動が...」
通信が不安定で、断続的にしか伝わってこない。
上田からもかろうじて音声が届く。「政府はAI排斥に動いている。このままでは、AIミュージシャンたちが...」
響が拳を握りしめる。「このままじゃ、全てを失ってしまう」
岩田が冷静に状況を分析する。「政府は恐怖に駆られている。冷静な判断ができていない」
「かつての地下活動のネットワークを使えないか?」佐伯が提案する。
響の目が輝く。「そうだ。僕たちにしかできないことがある」
「AIたちとの独自の通信手段を確立し、異星文明との対話を続ける」岩田が具体案を出す。
「そして、その情報を世界中に発信する」美咲が付け加える。
「音楽で人々の心に訴えかけるんだ」上田の決意が伝わってくる。
響たちは、再び地下組織としての活動を開始する。政府やメディアが伝えない真実を、彼らの手で世界に知らしめるために。
それは危険な賭けだった。しかし、人類とAIと異星文明の未来がかかっている。
24時間のカウントダウンが始まる中、響たちの秘密の行動が動き出す。
世界の命運を左右する闘いが、静かに、しかし確実に幕を開けようとしていた。
(続く)