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21世紀へ #05


 数日後、不具合を修正し、バー
ジョンアップしたオムツを再び、
試してみた。

「井上君! 直したぞ。今度は問
題ない。見てくれ」

「今度は大丈夫ですよね?」
 彼女は、疑わしげに僕を見てい
る。

「今度は大丈夫だから」
 僕はトイレに入って、おむつを
付けて、そのまま、朝のおつうじ
をしてみた。
 今度は、大も小も、問題なかっ
た。

「やったぞ! 完成だ。見てくれ」
脱いだ、オムツを彼女に見せた。

「本当だー。オムツの中はきれい
ですね」

「うんうん。やっと完成した。
あとは、女性用だな」

「え? オムツに男性用と女性用
があるんですか?」

「当たり前だよ。女性用の試着も
しないとね」

彼女は、急に寡黙になった。
「……。今度は、わたしの番です
か?」
 この頃になると、彼女の訛りも
すこしずつ無くなっていた。

「井上君。頼むよ、君しかいない
んだ。この開発は企業秘密で、他
に漏れてはいけないんだ」

「……」

「ね? 頼むよ。 頼みます!」
 彼女の前で、土下座をして頼ん
だ。この際、土下座だって、何だっ
てする。お構いなしだ。
「女性用は、たぶん大丈夫だから」

「本当ですか? この前の社長み
たいに成りませんよね?
 オムツが取れなくなるのは、嫌
ですよ。オムツの中に漏らすのも
嫌ですけど……」

「ぜったい、大丈夫。漏らしても
気持ち悪くないから。むしろ、気
持ちいいぐらいだ」

「え? 気持ちいい?」彼女は半
信半疑で、女性用のオムツを受け
取った。
「トイレの中で試してみますから、
見ないでください」

 そういうと、トイレに入り、ドア
の鍵をかけた。

 トイレへ入った彼女は、なかなか
出てこなかった。

 心配になった僕は、トイレをノッ
クした。
「井上君! 大丈夫か?」

「ああ~。ああん。うふん」

 扉の向こうから、何か、うめき
声が聞こえてくる。
 僕は、更にはげしくドアを叩い
た。

「井上君!大丈夫か!」
扉の向こうからの声がしなくなっ
た。
「井上君!井上君!大丈夫か!」

 しばらくすると、トイレのドア
が開いた。

 頬を真っ赤にした彼女が、オム
ツを持って、出てきた。
「社長、これ、ダメです……」

「この前の僕と同じ状態に成った
のか?」

「はい」

 彼女は恥ずかしそうに俯いて、
僕にオムツを差し出した。

 男性用の不具合を修正して、
女性用も見直したのに、それでも
ダメだった。やはり、男性用と女
性用では、想ったより差異があっ
たようだ。

 しかし、考えようによっては、
これは別の意味で需要が有るので
はないか?と思った。

 例えば、WEBで次のような商品を
検索してみると……。
「ハンディーマッサージャー
小型 電動マッサージ器 USB充電式
20種振動パターン 強力 振動 静音
防水」と、売り文句が並ぶ。
 なぜ、「防水」なのか、わから
ないが……。

つづく

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