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「個人の時代」なのに、なぜチームで戦うのか。僕が"小さな編集部"を結成した理由

数年前に始まった「個人の時代」ブームが、そろそろ終わると思います。

なぜなら、結局のところ、ひとりでは遠くに行くことができないからです。もう大半の人たちが、その事実に気づき始めています。

「個人の時代」の次にやってくるのは、「チームの時代」です。互いにないものを補完し合う、小さく、俊敏で、強いチームが勝つ時代になります。

個人の時代から、チームの時代へ

僕が代表を務めるVAZは、YouTuberをはじめ、SNS時代のタレントが所属するインフルエンサープロダクションです。

所属するタレントの多くは、「個人の時代」を象徴するインフルエンサーたち。自分の表現したい世界観をSNSを通じて発信し、若年層を中心に注目を集める人気者になりました。いわば、“セルフブランディングのプロ”です。

極端な話、彼らは一人でも食べていけるだけの影響力を持っています。それでもプロダクションに所属する理由は、マネタイズの手段をディスカッションできたり、仕事を獲得する営業活動を一任できたり、煩雑なスケジュール管理を任せられるから(あくまで一例です)。

インフルエンサーの多くはタレントであってビジネスパーソンではないので、事務所に所属することで、自分にないものを補っているのです。

このタレントとプロダクションの関係性は、インフルエンサーという概念の誕生以前から変わっていません。

ただ、SNS時代のプロダクションは、所属タレントにもっともっと価値を提供していかなければいけないと思っています。

上記のサポートを行うことにももちろん価値はあると思いますが、そもそも一人でも発信を行える彼らが、それでも事務所に所属していたいと感じてもらうには不十分だからです。

冒頭でもお話ししましたが、たとえ現代が「個人の時代」であっても、ひとりでは遠くに行くことができません。そしてその事実には、大半の人が気づき始めています。

個人の時代とは、いわば個人が光り輝ける時代のこと。一人で全部やった方が上手くいく時代ではないのです。

強いチームを結成し、総合戦で戦うから、本当の意味で個人が光り輝くことができる。VAZは、そのチームをつくれることが、これからのプロダクションの価値になると思っています。

そうした考えから、昨年のはじめより、チーム戦で所属タレントを伸ばす新たなアプローチを実験的に行ってきました。その第一弾が、ねおを編集長に据えた、“小さな編集部”構想です。

ねお率いる“小さな編集部”は、彼女と僕と3名のマネージャーに加え、YouTubeプロデューサーである弊社COOの渡辺、きゃりーぱみゅぱみゅさんやゲスの極み乙女。さん、WANIMAさんを世に送り出してきた音楽プロデューサー・鈴木竜馬さん(ワーナーミュージック・ジャパン執行役員)によって形成されます。

ここに都度、数名のサポーターが加わり、ねおが描く世界観の実現の向け、それぞれが強みを発揮し合っています。いわば、ねお(所属タレント)の価値を最大化する取り組みです。

総合戦で戦うから、個人が光り輝ける

チームねおは、ねおが編集長を務め、僕がチーム編成責任者です。ねおが方向性や世界観を描き、その実現に必要なメンバーを僕が集めてきます。

チームに所属するマネージャーには、それぞれ役割があります。大手広告代理店出身の岡田が戦略設計など“攻めのマネージメント”を、俳優の付き人をしていた経験がある福圓が危機管理など“守りのマネージメント”を担当していて、もう1名、現場でねおのサポートをする現場マネージャーがいます。

SNSとマスを行き来する令和時代のインフルエンサーは、ありとあらゆる側面から、多角的にアプローチしていかなければ生まれません。そこで、気鋭の音楽プロデューサーである鈴木竜馬さんをチームに迎えました。ねおは今年、アーティストデビューすることが決定しています。

また、YouTubeチャンネルのグロースは弊社COOの渡辺が担当。登録者50万人超のガールズチャンネル「MelTV」を創り上げた知見をベースに、ねおがつくりたい世界観を入念に企画に落とし込んでいます。

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小さな編集部を結成し、「チームで戦う」ことを明確に意識してから、目に見える成果が出ています。YouTubeチャンネルの再生回数は2.16倍に増加し、テレビ出演数は前年比で5倍に伸びました。ここ一年のねおの活躍は、“快進撃”と呼ぶにふさわしい。

ねおは自分の睡眠時間を削ってまでファンとの時間を大切にするので、相変わらず忙しい毎日を送っています。

ただ、意思決定やコンセプトづくりなど、「ねおにしかできない仕事」に集中することができるようになりました。僕からすれば、彼女のスタイルはさながら経営者です。

インフルエンサーの成功には、ビジョンが不可欠

ここで僕が強く伝えたいのが、能力の高いメンバーを集めてチームを結成したからといって、成功が約束されるわけではないということ。インフルエンサーの成功は、インフルエンサー本人が本気にならない限り、絶対にありえません。

ねおは常々、「唯一無二の存在になりたい」「同世代の一番になりたい」と夢を語っています。そして、その実現のために、誰よりも努力をします。だから僕らも、彼女に負けじと本気で対峙することができる。

岡田は学生時代から著名なイベントをプロデュースするなど、若い頃から大きな実績をつくってきた、いわゆる“やり手”です。エンタメ業界の大手企業から複数のオファーを受けていましたが、「新しい文化をつくりたい」とVAZを選んでくれました。

福圓もこれまで、誰もが知る著名人の付き人をしていた、芸能界をよく知る人物。ただ、個人に光が当たり始めた現在のムーブメントを、ブームで終わらせず文化にしたいと、思い切ってVAZに入社してくれました。

こうして周りを本気にさせるから、“快進撃”が起こるのです。日本経済を牽引する大企業も、個人に光をあてる小さな編集部も、大切なことは変わりません。もっとも大事なのはビジョンであり、ビジョンに向き合う姿勢なのです。

令和の大スターは、小さな編集部から生まれる

インフルエンサー市場には、たくさんの競合企業が存在しますが、戦い方はシンプルで、「トップインフルエンサーがどれだけ所属しているか」です。市場の黎明期から、このビジネスモデルは変化していません。

しかし今後、市場が大きく変化していくことは明白です。ネット発のインフルエンサーが、テレビや雑誌といったマスメディアへと進出し、「スター」を定義する境界線が曖昧になってきました。

その逆も然りです。テレビを主戦場とするタレントたちが、SNSに参戦し、ソーシャルメディアとマスメディアの境界線が溶け、「スタービジネス」という大きな括りでの勝負になっていきます。

すると、個人の時代を個人だけで戦っていくのは、ますます困難になるでしょう。

僕は個人的に、ねお率いる小さな編集部プロジェクトが、インフルエンサー市場の「常識」をぶっ壊す試金石になるのではないかと思っています。

個人の時代において、小さな編集部の存在は、インフルエンサーがタレントとして成功する上でもっとも重要な指標になるはずです。


編集協力:オバラ ミツフミ(@ObaraMitsufumi

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