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現場から考えるオンライン教育の是非?

オンライン学習をする・しない議論

2020年4月13日から5月22日までの期間、オンライン朝の会・帰りの会・個別指導を行なってきました。

そこで感じたのは、今までの学校でやってきたことを全てオンラインに置き換えるのは難しいなと。「じゃあ、やめときましょう」ではなく。

やってみたからこそ、オンラインでできること・できないことが少しずつ分かってきました。

オンライン学習をやるか、やらないかという議論ではなく

学校とはどういう存在になっていくか?という視点で教育に関わる全ての人が考え直す必要があると思っています。

そして、その目標を達成するためのツールの一つとしてオンライン学習があるのでは?という視点を持とうと思いました。

もちろん、学校での教育活動は、文科省より出ているマニュアルを参考にしながら、試行錯誤していく必要があると思いますが

https://www.mext.go.jp/content/20200522_mxt_kouhou02_mext_00029_01.pdf

もう一度、学校とはどういう存在になっていくか?を考え、オンラインの良さと対面の良さをバランスよく配合していくために試行錯誤をする必要があると思っています。

2ヶ月のオンライン学習から見えてきたもの

オンライン朝の会・帰りの会・個別指導をスタートして驚いたのは、子どもの順応スピードは速い、ということ。想定していたよりも、タブレット操作に慣れ、オンラインでのミーティングで人と話しているという感覚をもてる児童が多かったです。(もちろん、苦手な子もいるのでフォローを複数考えました)

何よりも、「繋がっている」ということを実感することに意味があると思いました。

以下のような時間割を各家庭に提案しました。

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休校中こそ、自己調整学習に取り組める機会だと思い、大まかな枠組み(時間割)を決めることが手助けになるのでは?と考えました。

また、見通しが持てることで安心することができた児童もいました。

なので、休校中であっても学校と家庭で同じ時間割を共有することが支援の一つとなり得ると感じました。

オンライン学習の難しさ

やはり、オンラインだからこその難しさも感じました。

それは、「情報に対して注意を払い続けることの難しさ」でした。大人でもPCやタブレット画面を見続けることが難しいし、とても疲労を感じます。今まで学習でPCやタブレットを使用してきてなかった子どもたちは、よりそれを感じるはずです。

「大人も感じるから子どもはより感じるだろう」という推測であったため、そのメカニズムは何だろう?と詳しく調べてみようと思い、以下の本を読みました。

第8章の「テクノロジーを活用した学習」ではテクノロジーによる学習者の認知のプロセスを論じています。Richard E. Mayerによると認知科学の研究から3つの重要な原則があると論じています。

二重チャンネル:人は、言葉の素材(声を含む)と画像の素材を処理する際に別々のチャンネルを用いる。
容量の限界:人は、各チャンネルで同時に少量の容量の素材しか処理できない。
活動的な処理:学習者が学習の過程において適切な認知的処理をしている場合、たとえば、関係する素材に関心を向ける、素材を一貫した説明へと結びつけ組織化する、関連した既有知識に統合する、といった場合には意味のある学習が生じる。

少し難しい説明ですが

(1)言葉と画像の処理は別々で

(2)同時には少ししか処理できなくて

(3)情報を既に知っている知識と組み合わせ、まとめることで意味のある学習となる

と私は解釈しました。となると、テクノロジーを活用したオンラインでの学習では、同時に色々なことを行ってしまい子どもたちに負荷がかかり過ぎていないか?という視点を持つようになりました。

また、対面ではないオンラインでの学習は、画像と音声がメインとなり、情報の組織化と統合化(3)がより難しいのではないか?という視点も持つようになりました。

既有知識が少なく、知識を組み合わせて考えることが難しいという課題を持つ子どもにとって、オンライン学習を意味のある学習にするのは難しいなと。

例えば、赤ちゃんが初めて「飛行機」を学ぶとき

・親(教師)が指差したもの

・飛行機=HI・KO・U・KI という音

・空を飛んでいるもの

・「キーン」という音を立てる物体

・胴体に翼があり、尻尾みたいなものがある形をしている

など、日常生活の中で周囲の人や状況からの情報によって「飛行機」の定義を形作っていくのではないかと思います。

つまり、経験もなく知らない情報をオンライン上で意味のある学習にすることは難しく、オンライン学習でできること・できないことは「学習者の日常生活における経験値や既有知識」によって大きく影響を受けるのではないか?と推測します。

あたりまえだと言われるとそこまでですが、認知科学の視点から学習を振り返ってみると、なるほどなぁと思うことが多々ありました。

おわりに

冒頭でも書きましたが、オンラインでの学習をする・しない議論ではなく、オンラインの良さと対面の良さをバランスよく取り入れた学習とは何か?という議論をすべきだと思います。

その議論を深めるためにも、認知科学の観点から考えていくのもありだと思います。この記事がそのきっかけになれば嬉しいです。

これからも現場で試行錯誤を続けていきます。