22年目のタイムカプセル (前編)
「みなさま、お待たせいたしました。
まもなく当機は、
タンソンニャット国際空港へ着陸いたします。」
当時の自分にとって、
今回の一人旅はまだ2回目。
学生時代までの海外と言えば、
家族旅行や
4人以上で友だちと行く旅行、
10人以上の卒業旅行くらいしかなかった。
そんな友だちと行く旅行では、
出発の数週間前、みんなでるるぶを持ち寄る。
1日目はこことここに行こう!
最終日はこれ食べよう!
そうやって、みんなでわいわい計画を立てる。
(この瞬間が、最高にたのしい。)
もしくはツアーに参加し、
知識豊富なガイドさんに案内してもらう。
そんな感じだったから、
誰にも頼らずに
すべてを自分で決めていく一人旅というのは、
すべてが大冒険。
しかも今回は 、事前にまったく計画を立てていない。
いつ、なにが起こるのか、予測不能だ。
当然、楽しみや期待だけではなく、
不安や恐怖で胸がはりさけそうにもなる。
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窓から陸地が見えてきた。
みるみる高度が下がる。
ずっと青だった景色が、みるみる緑に変わっていく。
ここまでいろいろあったこの旅(↓記事参照)だけど、
ようやくベトナムにたどり着けるようだ。
軽い振動、衝撃とともに、新たな土地へ着陸する。
飛行機は小さい頃から何度か乗っているが、
この瞬間が大好きだ。
いろいろあったせいで、
ホーチミンに滞在できるのは
もう残りほぼ24時間しかない 。
さぁ、なにをしよう。
どこへ行こう。
そんなことをぼんやりと考えながら両替を済ませ、
空港の自動ドアを抜ける。
エアコンの冷風から解放され、
もわっとした熱風に包まれる。
ついさっきまで極寒の大雪だったが、
ここでは季節が180度変わっている。
異国独特のにおい。
「▼×◯~!!」聞きなれない言葉の応酬。
空港のドアが開いたこの瞬間。
いつも、僕のわくわくは最高潮になる。
すべてから解放され、自由になった感じ。
同時に、孤独と不安も
波のようにおそってくる。
日本の日常では、
意識せずとも僕らは、
たくさんのラベルを貼って生きている。
◯◯県出身、◯◯大卒、◯◯社勤務。
年収は◯◯、役職は◯◯、
彼女や奥さんは◯◯、子供は◯◯。
でも、今日ここからは、
ありのままの自分で勝負。
ここでの自分のラベルは、
23歳。男。アジアの観光客。
それだけだ。
ここから先、
自分を守ってくれる先生も友達も親も
上司も先輩もいない。
ここからはぜんぶ1人だ。
1人で考え、決めていく。
その代わり、何をしてもいい。
究極の自由、そして自己責任。
心の底からわくわくが沸いてくる。
そんな気持ちを抱え、
僕は空港の外へと、一歩足を踏み出した。
一歩踏み出した自分を待っていたのは、
客引きの嵐。
ホーチミンでの初戦がはじまった。
最初の冒険は、
「空港からホーチミン市内まで、無事にたどり着く」こと。
どの国でも最初に苦労するのが、
空港からの市内への移動。
電車や地下鉄がある国なら簡単だけど、
ホーチミンにそんな電車はない。
タクシー一択だった。
地球の歩き方には、
気を付けるべきタクシーの色が書いてあった。
車体の色と運転手の顔をみながら、慎重に車を選ぶ。
幸いにも、優しそうなおじさんの車を見つけた。
よし、これにしよう!
ドアをノックして、
ホーチミン市内に行きたいと片言の英語で伝える。
なんとか伝わったようだ。
タクシーの中では
「Where are you from? 」
「Japan!」
「Oh! Nice country! I love Japan! 」
そこからは、
観光かい?ホーチミンではどこ行くんだい?
フランクに話してくれ、
オススメの観光地やレストランも教えてくれた。
なにより、僕の片言の英語でも通じるのが嬉しい。
小さな小さな成功体験だ。
30分ほど走り、目的地のホテルへ到着。
サンキュー!と言い、財布をとりだす。
提示された金額は、数千円。
あれ?少し高いような…?
「ちょい高い気がするんだけど、そんなことない?」
「そんなことないよ!通常運賃だよ~~」
笑顔で気さくな運転手の顔を前に、
チキンな僕は、なにも言い返せなかった。
下車してすぐ、
Google先生に「ホーチミン タクシー 相場」と聞いてみる。
返答は、予想以上だった。
どうやら僕は、
相場の3倍の金額を払ってしまったようだ。
そういえば、、
タクシーのメーター。
動いてなかった。。
さて、今日という1日。
なにをしようか。 どこへ行こうか。
予定はなに1つ決まっていない。
なにも決めずに、
その場その場での自分の興味に身を任せる。
それもまた、旅の楽しみ方の1つだ。
なんかおもしろいものないかな。。
ホーチミン中心部についた僕は、
街中を放浪していた。
------そんなとき。
「ハロー…!」
「ニイハオ!!」
声が聞こえてきた。
また客引きか。
海外では、本当によく客引きが絡んでくる。
特に、僕みたいに1人の若者は狙いやすいのか、
本当によく声をかけられる。
ずっと1人でいると寂しいので、
ちょっと嬉しかったりもするけれど。笑
声のした方を振り返る。
バイクに乗ったおじさんが、
手を振りながら近づいてきた。
怪しい。
めちゃくちゃ怪しい。
聞こえなかったフリをしよう。
「怪しい人には近づかない」が
小学生のころからのモットーの僕は、
その場を足早に遠ざかることにした。
「はーろー?にーいはーお?? 」
「ヘーイ!!」……
無視。
徹底的に、無視。
「Oh,, にい…はぉ……」
なんだか
声色が寂しそうになってきた気がする。
いや、気のせいだろう。
てか、中国人じゃねーし。
無視作戦、成功。
ニイハオおじさんの声はだんだん遠くなり、
やがて聞こえなくなった。
一人旅2回目でまだまだ慣れてないし、
できる限り、危険とは関わりたくない。
適当に雑貨屋に入る。
「ハロー」やさしそうなおばあちゃんだ。
15分ほどのんびり。
帰国後に使えそうなおしゃれノートとペンを買い、
外へ出た。
異国の地は、
こうしてただぶらぶら歩くだけでも、
すべてが新鮮だ。
------そのとき。
「Wow! にいはーお!!!!!」
まさか……
見てはいけないと思いつつ、声がした方を振り返る。
ヤツだった。再会してしまった。。
このあと僕は、
人生に影響するような出会いを果たす。
そして
「旅の魅力」に
深々と引き込まれていくことになる。
(後編へ続く↓)
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