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大院海
2020年9月8日 21:50
今から少しだけ前に、毎日その中心を通った校門。隅にはちんまりと「文化祭」の看板が立てかけられていた。あぁ、変わんない。そっと一瞥した後、入り口で受付を済ました。卒業生です、と告げた時に受付をしてくれたのは、見知らぬ先生。そうか、来てくれてありがとう、とにこやかに応対してくれた。ありがとう、なんて言われる筋合いは私なんかに、ないのに。先生、というひとはどうも優しいらしい。少し歩いて、滅多に通らなか
2020年9月6日 17:28
「今年もまた、来ちゃったよ」 そんな私を、君が笑ったような気がした。 いつもみたいに、私とは正反対だった長い髪を垂らした、君が。 今は文化祭の中夜祭真っ最中。装飾の残った、薄暗がりの校舎の中はがらんどうとしていて、ほとんど誰もいない。それでもそっと目を閉じると、ついさっきまでの喧騒が頭の中で強く投射されて、生徒達の残した微かな高ぶりを感じることができる。 私は、この虚空に浮かんだ時間