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博愛なのです。

ふとあの人どうしてるかな?と、昔アルバイトをしていた会社での出会いを思い出した。
Rodrigo y Gabrielaを教えてくれた人だ。
体育会系のスタッフが多く、私と彼は浮いていた。
くせ毛で黒縁メガネ、色白で長身の、私と同い年だったかな?ハリポタラドクリフに似てるかな。
休憩時間はモード系のファッション誌を広げお菓子をぱくついている姿が可愛らしかった。言葉少なで、しばらくは業務に必要なことしか話さなかった。
社員と、社員に可愛がられている後輩や同じ空気をまとった長いものに巻かれる系のアルバイトたちはこぞって彼を小馬鹿にする態度をとったり意地悪な質問をしていた。彼は適当にあしらって気にはとめていないようだった。
んー、なよなよってほどでもないのにな。いつでもどこでも、いじめの対象を作りたがるこれってなんなのだろう。暇だから?いじりの感覚だと思うけど、付き合いきれないやれやれな感じだった。

彼は誰にでもいつも話しかけるなオーラがバンバン漂っていた。ある日の休憩時間が被った時に、よく読んでいた雑誌をもっていたので話しかけてしまった。

彼「えっ、○○さん、こういうの読むのですか?」おどおどしながら、ウィスパーボイスの優しい話し方だった。

外国人の街角スナップってオシャレだし、着こなしが自由でみていて楽しいのだ。

彼は「女の子は羨ましいです、ファッションが素敵だから。僕ならこう着たいなとかイメージしても楽しいです。」と言った。水を得た魚だった。

彼「あっ。ボクと話さない方がいいですよ、あいつら面倒です。」と少しトーンダウンした。

私「知ってるー。大変だね。あんなのに付き合ってて凄いと思ってた。」

それから休憩が一緒のたびにバイトの愚痴やファッションの話や音楽の話などでも盛り上がった。揚げ物料理は本当ならしたくないのですが、かき揚げの美味しさにハマってしまったので毎日かき揚げばかり食べてます。とかはシンプルに面白かった。

「恋愛とかそもそも男とか女とか、そんな概念がないのです。」と言っていたのが印象的だった。
あと謎だったのが、私をビオラ奏者に似ています!といつも言うけど誰!何!?だった。

なかなか表面に出さなかった皮肉ったらしい話し方もしてくれるくらい打ち解けていた。

彼がどれだけ偏見の中にいたかは計り知れなかった。それは会話の中にも現れていて、突っ込んでくれる時は不器用で更に笑いを誘う下手なツッコミをする。

目の付け所が鋭くて、流行りにも敏感だし、何より服が好きだったから、あなたは服飾の仕事に就くべきだよ。と言ったことがあった。
「ボクはそのうち実家の農家を継がなきゃならないだろうし、いいのです。このままで。」と表情を変えずに言った。

ある日の帰り際に、「僕の最近のお気に入りなの、兄弟デュオでギターのみなのですよ。○○さんに貸してあげます。」とCDを渡された。


ふんむっ情熱的。無茶苦茶かっこいいではないか!ギターとスラム奏法だけで、体の何かがさざめきたち神宮花火を見た時のような高鳴りをくらった。

ライナーノーツについていた付箋に、「気に入るといいな。P.S.〇〇さん好きです。男女のではなく、博愛なのです。」

ふーん。可愛いことすんじゃん。ニマニマ

私が彼におすすめしたのはそのころタワーレコードの視聴機で初めて聴いて、号泣してしばらく動けなかったTETEのアルバムだ。

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動画はお気に入りのPVの曲。
英語ではない曲でこんなに惹かれたアーティストは少ない。(ささ、この動画を眺めて一息ついてくださいな。)


彼といる時は平和でとても心地よかった。

それ以上もそれ以下もなくて、すごく特別な存在。

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