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バッティングを考える。(基礎編)

バレルゾーン

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引用元→http://m.mlb.com/glossary/statcast/barrel

書籍やSNSなどの普及もあり、バレルゾーン・フライボール革命はすっかり浸透しました。
バレルゾーンとは打球速度と打球角度の組み合わせで構成されるゾーンのこと。
ゾーンに入った打球は必ず打率5割、長打率1.500以上となり、簡単に言えば「どんな打球」を「どんな角度」で打ち出せば長打になるのかを示す指標。

バレルの最低条件の目安とされているもの。
ヘッドスピード:約128km
除脂肪体重: 約65kg(体脂肪率15%程度の場合で体重が約75kg )


インパクトの正解

研究者の方々の功績によりインパクトの正解は提示されてきていますね。
現在では19°アッパーでボールの中心の6ミリ下を打つのが最も飛距離が出るとされています。
下図左のようにボール軌道にスイング軌道を合わせ、正面衝突させると打球速度が最大になります。(衝突のエネルギーは打球速度に変換される)

下図右は最も飛距離が出るとされているボールの中心から6ミリ下を打った場合です。
バットとボールはほぼ正面衝突なものの、中心がわずかながらズレているため、衝突のにエネルギーは打球速度とギア効果によるバックスピンへと変換されます。
(実際にはバットのローリングも加わります)

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衝突のエネルギーの一部がバックスピンに変換されていることで、打球速度は完全な正面衝突よりも落ちますが、バックスピンによって揚力が生まれるので打球の高さが出やすく、トータルの飛距離としては伸びます。

柵を超えたらホームランという野球のルール特性としては飛距離とフェンスの高さを超えないといけないので打球の「高さ」というのは重要な要素です。

スピンをかけるのも、スピンに変換される割合が増えれば増えるだけ打球速度は遅くなっていくのでスピンが多すぎると飛距離は落ちます。
ゴルフクラブのドライバー(1W)も飛距離性能を上げるために低スピンを売りにしている商品がドンドン開発されていますね。


アッパー軌道をどう作るか

投球されたボールというのはどんなに綺麗なバックスピンの効いたファストボールでも落下しながら向かってきます。
そのため、昨今しきりに言われているアッパー軌道で打ったほうが良いというのは、ボールの軌道にスイングの軌道を合わせるというイメージです。
下から上に打てば良いというわけではありません。

下図の水色矢印はダウンスイング、緑矢印はボールの軌道に合わせたややアッパー軌道、オレンジ矢印は極端なアッパー軌道です。
どれが最もインパクトゾーンが長いかは明白かと思います。
また、点のポイントで打ったとしても打球速度が速くなるようなボールとバットの正面衝突に近いインパクトを作れるのは緑矢印の軌道のみです。

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つまり、いかにスイングプレーンをボールの軌道に入れ込んでいくかがポイントになります。
ゴルフでもシャロースイング(ボールに対してのクラブの入射角を浅くすること)が流行ってきていますが、野球でもそうなってくるのは想像に難くありません。

インパクトゾーンの長いシャローなスイング例↓


バレルゾーンを目指していく上で、スイングスピードの速い適度なアッパー軌道を作っていきたいですが、スイングプレーンを作る際に自身のパワーポジションや体幹の前傾を崩さないよう注意が必要です。

gif①は投手側股関節・骨盤から回転していくことで、その後の運動連鎖もスムーズですし、身体の良いつながりをキープしたまま捕手側の肘とバットをボール軌道に入れ込んでいき、適度なアッパー軌道を作っています。

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gif②は手元からフォワードスイングが始動してしまい、捻転差・全身の一体感、安定性の無いスイングです。

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gif③は、バットヘッドを落とすことでアッパー軌道を作っていますが、いわゆるアーリーリリースのカタチにコックが早々と解けてしまいバットのコントロールを失います。
重心がが極端に軸脚方向へ変位するすることで、目線がブレ、下から煽るようなスイングになります。
ミート力が落ちるのはもちろん、アッパー軌道がキツイことでトップスピンのゴロになりやすくなってしまいます。

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身体のつながりを感じながらスイングの始動の順番や連動スイングプレーンを確認するように、ゆっくり小分けにした素振りをするのも良い練習方法の1つです。


肩を下げるな!について

私が野球少年だった頃は肩を下げるな!(右打者なら右肩、左打者なら左肩)バットヘッドを下げるな!としきりに言われたものです。
実際には脊柱は前傾・側屈が入ってきますので捕手側の肩が下がるのは何もおかしくありませんし、問題ありません。

フォワードスイングへ切り返す際に捕手側の肘を入れ込むスペースを作るのも重要です。
前傾をキープしたまま下半身から捻転していくことでスペースができ、バットが取り残されてタメもできます。

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上も下も同時に動いてしまい、捻転差が無い初動になると、身体のつながりが解けます。
捕手側の肘を入れ込むスペースもできず、体幹の前傾もキープできません。様々な狂いが生じます。

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切り返しでバットが倒れる感覚を掴む

切り返しタメ

「倒す」のではなく、あくまで「倒れる」
下半身始動の回転に伴い、運動連鎖が生じ、バットが取り残されるようにして捻転差が作られます。

体幹の動きというのは背骨の構造上、丸太のような回転ではなく、3次元的な動きの混ざった動きです。
そのため、回旋に伴い、側屈という捕手側に倒れるような動きが入ります(アッパー軌道を作る動きでもあります)。
これによって、捕手側の肩が下がり、バットが背中側に倒れるような動きになります。

人気商品のカウンタースイングもコレをメインにしているのではないかと思われます。
ゴルフではパッシブトルクと言われるものがコレに近いかなと思います。
いわゆるタメを作るのに重要なポイントです。
バットがトップの位置で取り残されて相対的に背中側に入ることで、バットの加速距離が長くなり、ヘッドスピードの増加につながります。

また、背中側に少し下がることによってボールの軌道にバットを入れていく入射角が浅くなりますので、長いインパクトゾーンを作ることができます。
(シャローなスイングになる)

下gifは切り返しでバットが倒れる感覚を感じやすいドリルです。
あえてハンドルを投手方向に切るようにテイクバックをとり、スイングに移行します。
バックスイングからフォワードスイングに切り返す瞬間にバットヘッドが自然と背中側に倒れる感覚が感じやすいと思います。

パッシブトルク


グリップエンドを引っ張らない


インコースのさばき方で肘を抜いて打つんだみたいなことが言われますが、コレも捉え方を間違うと良くない気がします。

下gifのようにパワーポジションをなるべくキープしたまま、引き手を抜くだけでなく、身体の回転も上手く調整してインコースをさばく必要があります。

インコースでの肘の抜き方



下gifのようにグリップエンドを引っ張るように腕だけでどうにかしようとするとパワーポジションが崩れます。これでは強い打球が打てません。
(体幹に対する肘の位置や、角度が変わることで力が入らなくなる)

グリップエンドを引っ張る


ムチなどもそうですが、先端を振るためには手元が止まって(減速や逆方向への動き)おかなければなりません。

グリップエンド(手元)を引っ張ると、バットヘッドは出てきません。
苦し紛れにバットに当てただけになってしまいます。

ネットや壁に近づいた状態でバットを振るような練習方法もありますが、振り方によっては悪い癖がつきかねないので注意が必要です。



"ヘッドが下がる" ってなんなの?


空間的な上下で言うとほとんどの場合、バットヘッドはグリップよりも下になります。
下引用画像の山田選手も空間的にはバットヘッドはグリップよりも下になっています。
しかし、指導者や選手が感じているヘッドが下がるというのはそういうことではないように感じています。
むしろこの山田選手はヘッドがしっかり立ってると言うんじゃないかと。

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引用元→https://www.sanspo.com/baseball/news/20190304/swa19030405050004-n1.html


つまり、現場で言われているヘッドが下がるというのは、
大雑把に言うとコックを解くなということではないかと思われます。

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ゴルフで言うところの「アーリーリリース」や「フリップ」という動作ですね。

コックを保ったゴルフスイング

ゴルフスイング

アーリーリリース

アーリーリリース


コックが解けてパワーポジションのカタチが崩れると、慣性力に対する身体の安定性が保てずにヘッドスピードが低下することはもちろん、バットが波打つようにブレてしまってミート力も落ちます。
(ゴルフではロフトが寝る。野球ではいわゆるドアスイングになる。)

耐衝撃性の観点からもインパクトをどういうカタチで迎えるかは重要です。


そして、コックの作り方やコックの角度の大小には個人差があると思われます。
一番しっくりくるグリップの仕方もタイプによって違うと思います。
そうなると構えはもちろん、コックのカタチやインパクトのパワーポジションも変わってきます。
コックの大小によってヘッドを立てるに関しても、強く立てる人・ややヘッドを落とし気味にスイングする選手のタイプがいると思います。

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引用元→https://www.nikkei.com/article/DGXLSSXK50633_V10C20A5000000/


インパクトからスイングを作ってみる

インパクトからスイング作りを始めるのも1つの方法です。
インパクトの衝撃に対抗できるだけのパワーポジションでインパクトを迎えられるか、インパクトまでにヘッドスピードをいかに加速させるかというのは結果に直結するといっても過言ではありません。

どういったグリップでどういう姿勢(全身の姿勢・バットの位置関係)が最も心地よく、安定するか。イメージに合うか。力強いスイングができるか。

まずは、しっくりくるインパクトを決め、そのインパクトに向けて加速させるためのスイングプレーン(バット軌道)を作っていく。
小さいアークから作り、徐々に大きくしていく。


バットは面ではない

バットは円錐に近い形状のものです。
主にボールを打つ部分は円柱状と言っていいでしょう。
打球はインパクト時のバットの運動方向だけでなく、どの部分に当たるかによって打球の方向や高さ・スピンのかかり方が変わってきます。

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↓記事より引用


打球の打ち分けは通常、インパクト時にバットが向いている方向、ボールに対するバットの入る軌道(インサイドアウトかアウトサイドインか)で決まるというのがほとんどです。


これを利用すれば結果は流し打ちだけど、バットは引っ張り方向に向いていたなんてことが起こります。

もしかしたら、ゴルフのドローやフェードのように球筋を打ち分けるなんてレベルにまで到達するかもしれませんね。
引っ張りすぎてファールだと思われた打球がフェードしてホームランになる。
これがマグレではなく、れっきとした打者の技術として浸透するなんて日が来るかもしれません。

スイングスピード=回転速度×回転半径

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ヘッドスピード=回転速度×回転半径の関係です。
回転速度と回転半径というのは相反するような関係になっているというのがポイントです。

回転速度はフィギュアスケートのスピンやジャンプをイメージしてもらうと分かりやすいですが、広げていた手を畳むと身体の回転は速くなりますよね?

回転半径が大きいほうがヘッドスピードが速くなるというのは、ハンマー投げなどをイメージしましょう。
鎖のついたハンマーをブンブン回していますが、もし、鎖が1/3の長さだった場合、通常の長さより遠くに飛びそうですか?
長いほうが先端の鉄球は高速に周り、遠くまで飛んでいくイメージが湧くのはないでしょうか?

ヘッドスピードはこの2つの要素でなっています。

バットを短く持った場合は、慣性モーメントが小さくなるので回転速度は速くなりますが、回転半径が小さくなることで、実はヘッドスピードは遅くなります(同じバットの場合)。

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ある選手がバットヘッドの軌道を線で引いた時に長い線になるバッターが良いバッターだと言っていましたが、軌跡が長いということは加速する距離が長いとも捉えられるため、ヘッドスピードを上げることに関しては重要な要素です。


「引きつけて打て」について

データとして明らかになっているのはホームランなどの長打はベースよりも20〜30センチ前でインパクトされているということです。
つまりベース上くらいまで引きつけたら飛ばないってことです。

また、インパクト時に打者に当たった感触が伝わった頃にはボールはバットから離れているということも明らかになっています。
つまり、実際にインパクトでボールが当たったと認識した後に押し込むことはできません。

これらのデータによると、引きつけて捉え、インパクトでボールを押し込んで長打を打つというのは実際には困難に思います。

そういった表現はあくまでその人(言っている選手や指導者)の感覚的なものとして捉えたほうが良いかもしれません。
そもそも、どこで捉えることを”引きつけている”と言っているのかという基準がありません。
感覚的に、前で打ちすぎている感触があり、以前よりもボールを引きつけて押し込むイメージで打ったら結果が良くなったという人もいるかもしれません。
それはそれで良いと思います。

反対に、ポイントを前で打つんだという意識のほうが結果が良いという選手もいるでしょう。

これらは一見全く逆のことを言ってるようですが、実は両者とも求めているインパクトの位置というのは同じかもしれません。

前方向にズレているか、後ろ方向にズレているかで修正のコメントは変わりますよね?
そのため、両意見があるのではと思います。

また、引きつけてというのも投手-捕手間のインパクト位置ではなく、身体に対する腕やバットの位置関係のことを言ってる場合もあるので注意が必要です。


ヘッドスピードとスイング時間

スイングスピードとスイング時間を混同するといけません。
ヘッドスピードはスイング中に最も加速した瞬間の速度でしかありません。
スイング時間はバックスイングからフォワードスイングに切り替わった瞬間(バットを振り始めた瞬間)〜インパクトまでの時間です。
そのため、ヘッドスピードが速い人はスイング時間が短いわけではありません。

ミズノのスイングトレーサーなどのギアではバットのグリップエンドに装着した状態でスイングすることで、ヘッドスピードやスイング時間を計測することができます。

ミズノ社の方もおっしゃっていましたが、スイング時間が短くなるとヘッドスピードは遅くなる傾向にあります。
逆にヘッドスピードが速いとスイング時間は長くなる傾向にあります。

これは、スイング時間が短いということは、加速する時間も短く、回転半径が小さいコンパクトなスイングになるからだと思われます。

スイング時間が短いとボールを見極める時間的猶予が長くなる可能性はあります。
しかし、それと引き換えにヘッドスピードは低下するため、打球速度や飛距離が落ちます。ヒットになる確率や長打の確立は下がるでしょう。

反対にヘッドスピードを上げようと大きなスイングにしても、スイング時間が長すぎると、スイングの始動を早めないといけなくなるため、速球や変化球に対応できずに実践では通用しないなんてことも生じます。

つまり、このヘッドスピードとスイング時間のちょうど良いバランスを求めてスイングを作る必要があります。


軸脚メインか、踏み出し脚メインか

下半身の使い方についても様々な意見があると思いますが、個人的には両足とも大事ですし、エネルギーの作り方にはタイプがあるのではないかと思っています。

拇指球ねじり型とフロート型といった分類も目にしますが、それに関しては気にしなくても良いのではないかと思います。

軸脚メインでもジャンプするように軸脚で地面を押し、発生した反力を踏み出し脚を地面に突き刺すように受け止めて上半身へとエネルギー伝達するタイプも多いです。この場合は軸脚はフロートします。
松井秀喜選手のように軸脚で地面を押したままインパクトを迎える選手もいます。
また、同じ選手でもスイングによって浮くとき、浮かない時があります。
軸脚がフロート型も拇指球ねじり型もがホームランを量産している選手は居ますので、力を入れやすい方を採用したら良いと思います。

個人的には4スタンスのAタイプBタイプにによって下半身の使い方は変わるのではと考えています。
もちろん両脚使いますが、スイングにおいて力を生み出していく時にどちらの脚(軸脚 or 踏み出し脚)をメインに出力しているかという違いはあるように思います。

※以降Aタイプ、Bタイプに分けて書いています。
4スタンスにおけるAタイプBタイプについて気になる方は廣戸先生の書籍やブログ・You Tube等を御覧ください。

以降の図における矢印等の説明

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Aタイプの特性としては軸脚に体重を乗せ、並進していき、踏み出し脚を着いたら、踏み出し脚にウェイトシフトして前脚股関節の伸展・外転・外旋で床反力を生み出して上半身へとエネルギーを伝達させる。
踏み出し脚を地面に固定した状態で、筋出力は前脚股関節伸展・外旋方向に出力する。末端である脚が固定されているので骨盤が回転し、軸足は踏み出し脚に引きつけられるように浮いてくる。
インパクトに向けて 前脚の”股関節” を伸ばす。

Aタイプ床反力



Aタイプと思われる選手例

Mike Trout 選手


大谷翔平 選手



Bタイプの特性としては軸脚をメインに出力して床反力を使い生み出したエネルギーを踏み出し脚にぶつける。そして踏み出し脚を強固に地面に突き刺すように固定することで上半身へとエネルギー伝達を起こしていく。
膝を主に動かします。インパクトに向けても前脚の ”膝” を伸ばす。

Bタイプ床反力

Bタイプと思われる選手例 

Jose Altuve 選手



Bryce Harper 選手


このようにタイプが違うので、「軸足を捻じれ!」 「いいや捻らず外転方向に地面を押せ!」などは逆のタイプの選手に押し付けると悩ませてしまう可能性があります。

イメージがしっくりくる選手をお手本にした方が良いでしょう。


前脚がめくれるのはどうなのか

上半身にエネルギーが伝わる前にめくれるのは良くないと思われます。
足がめくれるということはエネルギーを逃がしているとも捉えられるので、それによってバットに伝わるエネルギーが小さくなるのは問題です。

しかし、インパクト後にフォロースルーに入る段階ではめくれることは全く問題ないです。
むしろいろんな部位をうまく使ってエネルギーを逃がすことで、加速したバットのエネルギーを身体に負担の少ないように減速させることは重要です。
しかし、打ったら走らないといけないという競技特性がありますので、その選手の能力やプレースタイルによってフォロースルーに何を優先させるかは変わってくるかと思います。


ドアスイングは本当にいけないのか?

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バッティングの不良例としてドアスイングがあげられます。
ドアスイングでは慣性モーメントが大きくなりますが、慣性モーメントが大きい、回転半径が大きいということは実はスイングスピードを上げる要素でもあります。

ドアスイングのデメリットとしてはスイング時間が長くなることです。
また、バットの慣性モーメントに対して回転中心となる身体・腕などがしっかりと固定できずに負けてしまうと、バットが波打つようにブレてしまい、操作性が落ちます。
慣性モーメントに負けてバットに身体が振られるようになった場合には、スイングスピードも落ちます。

当たれば大きいが・なかなか当たらないというのはドアスイング傾向の打者に見られることが多いかと思われます。


バットの選び方

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長く・ヘッド側に重さがあるトップバランスの場合、回転半径が大きくなり、バットの重さ自体でヘッドを加速させることができますが、回転速度は遅くなるため、振り出しにかかる時間が長くなり、速球に対応できなかったり、操作性が落ちることでミート率が下がるといったことが起こる可能性があります。
反対にミドルバランスで短いバットであると慣性モーメントが小さくなるため、回転速度が上がり、スイング時間が短く操作性も良いけどスイングスピードは遅くなってしまいます。

長くて速く振れるバット。を想像した方いらっしゃいますか?
そうです。それってノックバットなんです。
飛びますよね? ノックバット。

かといって、ルールに適用するようなノックバットはほぼないですし、実際に投手の速球をノックバットで打つと、、、、
折れます。(危険なので絶対にやめましょう。)


スイング時間が遅くなりすぎず、スイングスピードが最も出るバットが自分に合ったバットの目安になるかと思います。

バットの重さに関しては、重いほうが飛距離が出やすい傾向ですが、ある程度の重さになるとあまり差は出ません。
それに対してスイングスピードは上がれば上がるほど直線的に飛距離と相関します。
重いバットの方が飛びやすいですが、重すぎて振れないと返って飛ばないし、バットが波打って当たらないなんてことになります。

基本はスイングスピードが最も速くなるバットを探していく方向です。
スイング時間・操作性・ミート力が落ちすぎない範囲で、速く振れる長さ・重さのバットを見つけるのがベストかと思います。

打ちっ放し的なバッティング練習

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引用元↓


ラプソードヒッティングなどの測定ギアも出てきていますが、今後は置きティーなどによるゴルフの打ちっ放し的な打撃練習が増えていくのではないかと思われます。
ミズノからもグリップエンドにとりつけてスイングスピードやスイング時間を測定するギアが発売されていますね。

打ちっ放しの良いところはスイングを作っていく上で結果(ボールの飛び方)のフィードバックをすぐに得られることです。

さらに、置きティーにすることでスイングの要素をメインにチェックできます。(投手のレベルや球種・コース・カウントや試合展開といった影響を外して考えられる)

そのため、スイングの要素(軌道やスイングスピード・打球スピード、ミート率、スイング時間、打球の角度や回転)に集中して試行錯誤できます。
スイング改造やバット選びなどには使いやすいものではないかと思われます。
今後主流になっていくでしょう。

並進運動で動きすぎることの弊害

並進運動で大きくウェイトシフトして勢いをつけるタイプと、あまり並進せずに小さいステップの後、ほぼその場で回転するようなタイプのバッターがいます。

もちろん勢いをつけた方がスイングスピードは上げやすいかもしれません。
しかし、スウェーによって頭の位置が大きく動くことは、目線がブレやすいとも言えますし、並進に入るタイミングが早く、並進している時間が長いと急なクイック投球をされた時にはタイミングやバランスを崩されやすい可能性もあります。

置きティーでの練習で気をつけなけらばならないのはこの点です。
ティーに乗っているボールをより遠くに飛ばす競技なら、おそらく全選手が大きな重心移動を伴う並進を使って打つでしょう。助走までつける選手も出てくるかもしれません。
しかし、対投手でのパフォーマンスが最終的な目的だということを忘れてはいけません。

実践ではタイミングというのも重要になってくるので、タイミングをとれるフォームなのか、スイング時間的に速球投手にも対応できるようなフォームなのかという問題が浮上します。

大きく重心移動して並進しても置きティーくらいならばある程度のミート率を出せるかもしれません。
しかし、対投手ではミート率の落ち幅が著しくなると予想されます。
そして、それは単に目線がブレるからだけでなく、スイング時間が長くなってしまっていることが問題になるでしょう。

高く脚を上げ、大きく並進して打つフォームが置きティーでは最も飛ばせても、試合でタイミングを合わせられない、予備動作が大きすぎて速球や変化球に対応できない。では本末転倒です。
特にスイング時間の長いスイングではレベルが上のカテゴリーに行った時に通用しなくなることが少なくありません。

ゴルフでもPGAツアーのトップ選手とドラコン競技のトップ選手のフォームは素人が見ても分かるくらいに違います。
これは目的が違うからです。(飛距離+アキュラシーなのか飛距離のみか)

小さいスイングから作っていく

ハーフスイング素振り

小さいアーク、小さい重心移動でいかにスイングスピードを出すか。
ハーフスイング・クォータースイングでいかに飛ばすかなどを練習するのはオススメです。

最高峰のMLBでは平均球速が150キロを超え、日本の高校球児でも140キロ、150キロをマークするのは昔ほど珍しくなくなりました。

ラプソード等のデータ解析の普及、お股ニキさんの著書「ピッチングデザイン」の流行もあり、変化球の質や投球の組み立てなども飛躍的に進化してきています。
高く脚を上げたり、大きく並進するバッティングフォームでは対応が難しくなってきているのではないでしょうか。
(大谷選手もMLBに行ってからはステップを変えましたよね)

ここまでの流れですでに明白ではありますが、いかに短いスイング時間でスイングスピードを出すかというのが共通の命題になってくるでしょう。

操作性やスイング時間、ヘッドスピード、目線や姿勢のブレなどすべてが自分にとって最も良いバランスになるフォームを追い求め、試行錯誤することこそがバッティングフォーム作りかと思います。


なぜ様々なスイング理論があるのか

SNSやメディアでも国内外問わず様々なスイング理論、練習方法がありますよね。

最近では中村紀洋さんなどが推される、所謂最短距離で出すダウンスイングというのは、フライボール革命に逆行しているなどと言われたりすることもあります。
しかし、回転半径を小さくして回転速度を上げる・過度なアッパー軌道を修正するという方向のアプローチとも捉えられます。
著名なドアスイングやアーリーリリース、極端なアッパー軌道の選手には有効な修正方法ではないでしょうか。

対して、宮川理論などの遠心力最大化、バットの重さや長さを最大限に使うのを推奨しているものは、回転半径を大きくして、慣性モーメントを高めることでヘッドスピードを上げようというアプローチではないでしょうか。

スイングがコンパクトになりすぎて、スイングスピードが上がらない、アッパー軌道が上手く作れずに長打が打てないといった人にはちょうど良い修正ドリルだと思います。

結局どれが一番良いなどではなく、バランスが大事なんだろうと私は思います。

また、個人的には4スタンス理論などのように人には姿勢の傾向や、力の入りやすい動き方の個人差が数タイプ存在すると思っています。
実際にNPB・MLBで活躍するような選手でもバッティング・ピッチングにおける身体の使い方は選手間で少しずつ違います。

誰々が言ってるから、なんか良いらしいから

知るキッカケはそれでも良いかもしれません。
しかし、取り入れようかなと思っているのであれば、目的をしっかりと把握し、かつ自分の現状や課題をを分析・明確にしてから取り組むべきだと思います。

タイプ等関係なく、科学的に共通の正解らしい要素もどんどん明らかになってきています。
(ヘッドスピードが速い方が打球が速い・飛ぶなど)

まずは、そういった基準にできるものを設定する。(効果判定の基準)
それをどうやって高めていくかの方法は1つではないと思います。

回転速度をあげようと回転半径を小さくしたコンパクトなスイングにしすぎると、バットの加速距離は短くなり、ヘッドスピードが落ちます。

反対に回転半径を大きくしてバットの長さ・重さを最大限に利用したスイングに偏りすぎると、ヘッドスピードは上がるかもしれませんが、スイング時間が長くなってしまいます。

グリップや構えのパワーポジションは人それぞれ

グリップは本当に人それぞれだと思っています。
4スタンスタイプなどで大まかな方向性は示せるのかもしれませんが、しっくりくるものと出会うまで試行錯誤するのが一番良いのではないかということです。これはゴルフでも同じだと思います。

力が入らないグリップが良いというわけでもありません。
左右同じとも限らない。目的によってかなり変わります。
(手首を固定したいのか、柔らかく使いたいのかなど)

構えも指導者によって色んなことを言われると思います。
「バットヘッドを投手側に立てろ。」 「立てずに寝かせろ。」

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引用元→https://youtu.be/VUTW4FsMeNQ よりキャプチャ

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引用元→https://youtu.be/PdKGBSwtUNs よりキャプチャ

「足は内股が良い。」「ガニ股が良い。」
「どっしりと腰を落とせ。」「お尻を高く。」

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引用元→https://youtu.be/1wfK37YE4CU よりキャプチャ

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引用元→https://youtu.be/yRFtqbb775Y よりキャプチャ

MLBで活躍する選手でも、内股の選手・ガニ股の選手、手元を低い位置から高い位置に上げるように動かす選手・反対に高い位置から下げるように動かす選手など、けっこう違いがあると思いませんか?



4スタンス理論を活用したパワーポジションやグリップの見つけ方、構えやトレーニングのことなどもいずれ記事にしたいと思います。
(実用的なレベルにまとめられたら)

なにか1つでも参考になることや気づきがあれば幸いです。
ご指摘や質問等あればお気軽にコメントでも、Twitter DM等でも構いませんのでご連絡ください。

最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。


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