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あじあのおんがく

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アジアの音楽に関する記事を集めています
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2022年3月の記事一覧

ボーダーレスなベトナムのギタリスト: グエン・レ (Nguyên Lê)

先週、マダガスカルの音楽への愛を記事にした。そこで思いの30%も書くことはできなかったが、ヴァリハという竹筒のまわりに弦をはった箏のような楽器とその魅力に触れた。 この中で次のように書いた。 実は、インドネシアにヴァリハとよく似た楽器がある。ササンドゥと呼ばれるティモール島にある楽器で、ヴァリハと異なる点としては、竹筒の同様の本体のまわりに椰子の葉でできた音響反射板を持つことだ。少しネットで検索してみたら次のサイトが見つかった。ティモール島まで製作者を訪ねて聴き取り調査と

#009. 突如としてインドに現れたヘヴィメタルの化け物、BLOODYWOOD。

はじめに日本列島にはいくつの島があるのか、ご存知だろうか。 政府の公式発表では、北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を含め、その数、なんと6,852島である。 領土は先人の努力の結晶とはいえ、この数は半端じゃない。 ちなみに、本土を除いた6,847島については、全て「離島」としてカテゴリされている。 その中でも、人が住んでいる有人島はたったの416島。 それ以外の6,432島は無人島と呼ばれている。 無人島。 ああ、無人島よ。 これほどロマンを感じさせる日本語が他にあった

YOASOBI『THE BOOK』『THE BOOK 2』第14回CDショップ大賞2022 特別賞受賞記念 YOASOBIチームインタビューYOASOBIパッケージ制作の魅力に迫る

第14回CDショップ大賞2022で、入賞と特別賞を受賞した、YOASOBI『THE BOOK』『THE BOOK 2』。楽曲への賛辞はもちろん、両作品のパッケージには数多くの賛辞が寄せられました。 『THE BOOK』『THE BOOK 2』は、配信リリースされた楽曲を、初めてパッケージ化したものです。両作品の完全生産限定盤は、曲ごとに異なるデザインが施された歌詞カードを、購入者がひとつずつバインダー形式のジャケットに収納し、本のように楽しむことができます。 今回は、パッケー

私的ブータンヒップホップベスト6+α

0. ブータンヒップホップ史概略 「ラップはブータン人のDNAに組み込まれている」 「なぜなら、それは私たちがとてもリズム感のある文化を持っていて、口承伝統があるからだ」 これはブータンのラジオ局Kuzoo FMのマネージングディレクターが残した言葉である[Dasai 2018]。 口承伝統が発達し、即興で韻(ライム)を踏む文化があるところでは、ヒップホップが親しみのある音楽として受け入れられやすい[e.g. 島村 2020]。 確かにブータンでも、詩的な言葉を比喩など

Spotifyデータでシティポップの音楽地図を可視化してみる

先日Spotifyのビッグデータを使って藤井風さんのアーティストネットワーク分析を行った記事を公開したところ、思いのほかたくさんの方に読んだりRTしたりしていただきました。御礼申し上げます。特に最新の音楽シーンに詳しい方からのコメントのおかげで、僕も新たな気づきを多くいただきました。 今回は、松原みきさんを起点としたアーティストネットワーク分析を通じて、「シティポップ」がどのようにリスナーに「発見」されているのか?を探ってみたいと思います。 分析用データは前回同様、Spot

映画「梅艷芳Anita Mui」と共にアジアを代表する女性歌手の一生を振り返る

 香港・大陸で話題の、映画「梅艷芳Anita Mui」が大阪アジアン映画祭で公開されていたので大阪遠征し、黄金世代の歴史を勉強しに行ってきました。90年代後半生まれの私にとっては知らないことが多いので、映画を見る前に予告動画から予想される彼女の曲を振り返ったり、日本の大スターとの恋愛を振り返ったり、映画で重要になってくる「父」との関係を調べてから映画館へ。本科時代に広東語の授業で映画をたくさん見てくる宿題があったのですが、それも今思うとやっておいてよかったなと。  さて、映