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あじあのおんがく

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アジアの音楽に関する記事を集めています
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2021年12月の記事一覧

Jaubi / Nafs At Peace

総合評価 ★★★★☆ パキスタン、ラホールの4人組バンドが多くのゲストを迎えて作ったアルバム。基本はジャズロックと北インド音楽(ヒンドゥスターニー音楽)の融合であるが、北インド音楽とロックの融合、という意味ではこの記事で取り上げたアーティストのような衝撃はない。その分、西欧音楽というかジャズロックの範疇には収まっており、より普遍的な層にもアピールできるというか、バランスが良いのかもしれない。インド古典音楽のファン層よりジャズロックのファン層の方が(インド文化圏以外では)多い

【未定義的衝撃:Mirror現象と国安法時代の香港カントポップ】 序:暗い時代に歌う歌 

ナチス時代に亡命生活を送ったドイツの劇作家ブレヒトは1939年の詩集の中でこう書いた。 彼が生きた時代がどんなに暗いものだったかは、間接的に想像するしかできないし、それを現代と比較することが適切なのかどうかはわからない。 けど最近の香港の様子を見ていると、この「暗い時代」という言葉をついつい思い浮かべてしまう。 2020年6月末に制定された国家安全維持法(国安法)によって、香港には大きな変化が生じている。民主化運動は弾圧され、選挙制度も変わり、映画ですら「国家安全に利す

「俺の才能はこんなもんじゃない!」 歌手LEEが新境地を見せた『力』は意外性満載のニューアルバム!

「LEEってこんなに表現の幅が広かったんだ!」 AppleMusicで先行リリースされた新譜『力』全曲を聞いたときの第一印象。私の中で”事件”でした(゚д゚)! ダンサブルなボサ・ノヴァ調があったり、どこかシティ・ポップの香りを漂わせていたり、かと思うと演歌か?!と思うほどダークだったり、正統派R&Bもきっちり挟んできたり…と、私の拙い語彙力では伝えきれない“力“作ッ!!まずはとにかく聞いてください!! 新譜『力』ラインナップ先行して発表されている3曲『荒島』『Old F

最新の香港音楽シーン~叱咤樂壇流行榜を例に~

加筆修正12/11 いまこちらのサイトで、投票が行われていますのでカントポップを追っている人はこの先も読んでみてください。現状のランキングを見た感想をお話ししてます。曲だけ聞きたいという方は、はじめの方に曲のリンクを載せてますのでそちらからどうぞ。 2021年、香港のネットでまた「樂壇已死」の4文字が話題となった、香港の音楽界は今もなお21世紀に入って迎えた香港音楽界の急激な衰退と同様に壊滅的な状態なのだろうか。今回は、最新の香港音楽シーンの実在に迫るため数々の若者シンガ

Coldiac - "Beautiful Day"(私とインドネシアの音楽)

私にとって「インドネシア」は切っても切れない国の一つだ。勿論一度も足を運んだこと等無いのだけど、かつて私が唯一立ち上げたアジアの音楽ばかりを演奏する為のユニット「mocha」発足の切っ掛け‥、それがインドネシアの音楽だった。 当時の私は「インドネシア歌謡」と「マレイ歌謡」の区別が付いていなかった。そんな折、記憶では1997年の秋だったか‥、島田歌穂のレア・アルバム『Malacca』の中の『Denpasar Moon』が私の脳天を突き抜けた時の、あの痺れた感覚を今も忘れること