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逆噴射プラクティス

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伊勢貝マモルの終活(終)

伊勢貝マモルの終活(終)

【承前】

手に汗握って状況を見つめていた魔王は驚愕と共に、あの女神だけは差し違えてでも討ち滅ぼすという決意を固めた。

地上13階からアスファルトへの落下衝撃だけでは、あるいはマモルの息の根を止めるのに不十分かも知れぬ。しかし制動の効かない空中で守るべきものを抱えた今、いかな勇者といえども暴走轢殺トラックの轍から逃れる術はない。

鮮やかな裏切り、謀殺である。元より無関係の外世界人を害して己が尖

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伊勢貝マモルの終活⑧

伊勢貝マモルの終活⑧

【承前】

――わたし、マモルくんが悪く言われてるの……笑って聞いてるしかなかった、いつだって。

コノヨの姿が視界から消えてゆく。二歩、三歩と踏み出し加速。速度を稼ぐ。

その一言でマモルは、彼女が生きてきた地獄の一端を理解した気がした。崩れゆく家庭を、淀み歪むばかりの人間関係を、彼女はただ守ろうとした。何一つ見捨てられず、すべての方向を同時に向こうと努め、必死に回り続けるうちに、まっすぐに在れ

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伊勢貝マモルの終活⑦

伊勢貝マモルの終活⑦

【承前】

13階。息を整える間も置かず、階段室に備え付けられた屋上への梯子に足をかける。視界のスミに、すっかり見慣れた影が形をとった。性懲りもなく。

『……ま、待て。待つのだ小娘よ、我の話を聞け』

一段、二段。施錠されていたらどうしよう。いざとなれば、13階の窓から飛び降りたってそうは変わらない。

『貴様……異世界転生に興味があるのではないか?』

コノヨは初めて影に瞳の焦点を合わせた。

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伊勢貝マモルの終活⑥

伊勢貝マモルの終活⑥

【承前】

最悪。最悪だ。

誰にも見られていないと思ったのに。誰にも知られるはずがないと思ったのに。

どうして、今、ここに、他でもない、彼が居るのか。どうしてわたしの名前を呼んだのか。まさか……止めようとしている?いつものように力づくで?

階段はもう使えないはずだけど、彼なら壁をよじ登るくらいは普通にするだろう。彼は間違った事を許さない。誰におもねったりもしない。誰の気持ちを忖度することもな

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伊勢貝マモルの終活⑤

伊勢貝マモルの終活⑤

【承前】

――庶民の暮らす灯りを高みから見下ろす、緑のセレブリティをあなたに。

東が丘マンションの在りし日のキャッチコピーだ。地上13階建、郊外の小高い丘から市内を一望出来る景観と、牧場や里山に周囲を囲まれた自然豊かなロケーションが売りであったが、あまりの立地の悪さから買い手がつかなかったばかりか完成直前に施工業者が悪質な違法建築で検挙され、大手ゼネコンも巻き込んだ全国的な社会問題に発展、その

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伊勢貝マモルの終活④

伊勢貝マモルの終活④

【承前】

思い切って声に出してみた。思ったよりも響いてびっくりしたけど、悪い気分じゃなかった。

そういうラノベを好きで読んでいることは誰にも内緒だった。佐々木さんグループにはどう考えたって絶対ウケがよくないし、無口な沼田君と笑顔でおしゃべりすることはできても、彼と『ながとに』新刊について感想を言い合うことはできない。

『無気力な俺が最強勇者?美少女女神と子犬系魔王に言い寄られて面倒臭くなった

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伊勢貝マモルの終活③

伊勢貝マモルの終活③

【承前】

『あの、本当に悪意というか……そういうのは無いんです、すみません』

「悪意のない住居不法侵入か」

『本当にすみません、こっちには来たばかりで……悪い事とか、よくわからなくて』

『マモル、何をしているのですマモル!早く息の根を止めるのですマモル!』

「黙ってろ死神。で、アンタが魔王だって?」

魔王ルヴァーナ。廻槃界《ニールカーン》の守護者・女神リーネを脅かす恐怖存在であり、越え

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伊勢貝マモルの終活②

伊勢貝マモルの終活②

【承前】

――お天道様に向かってまっつぐ、生きていりゃあよぉ。

いいことの一つや二つ、必ずあるもんだ。なぁ、マモル。

だから、まっつぐに胸張って生きろ。寂しくっても、貧乏くじでもよぉ。

なぁ、マモルよぉ……――

「……爺ちゃんを、嘘付きには出来ねぇもんな」

目に浮かぶ臨終の際の無念の形相を、遺影の笑顔で上書きしようと努める。両親のものは残っていない。遺影も、上塗りしたい記憶も。

『マ

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ぬばたまの君

生まれて初めての暗闇だった。

人が生活圏を発光建材や蛍光塗料で漂白し始めたのは半世紀前の事だから、母の胎内ももう少し明るかった筈だ。

ぬばたまーー塗端魔、濡万玉とも書く。一定照度以下の暗闇が病んだ万色に置き換えられる現象にその名称が定着するのと、文明の光が照らす事のできる領域が如何に狭い範囲に収まるかを人類が思い知るのとはほぼ同時だった。

それは夜の大地を油膜のように覆い尽くし、日の光に照ら

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伊勢貝マモルの終活

伊勢貝マモルの終活

トラックの前照灯に引き伸ばされる子供の影。誰もが目を覆う悲劇はしかし、身を挺して小さな体を突き飛ばした青年によって阻まれる。

けたたましいブレーキ音に続くか細い泣き声。子供は無事だ。しかし。

タイヤ痕生々しいアスファルトに柔らかい光。

『──勇気ある青年よ。』

光と共に降り立った女性の表情は哀しみに沈んでいる。

『貴方はここで死すべき運命にありません。新たな世界で新たな生を与えましょう。

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君に出会うその日まで

この想いを、感知されてはならない。

新宿。交差点。

悲鳴、轟音。肉や骨が潰れる音。

秋空の下、当たり前のようにあった日常は些細な歯車の食い違いで呆気なく毀損される。暴走トラックドライバーの青ざめた顔。目が合った次の瞬間には赤く染まったフロントパネルに視覚を覆い尽くされ、僕の体はなす術もなく

『修正点を観測。60秒後に再演算を開始します』

ふぅ。
大規模修正に遭遇するなんて、なかなかレアな

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トライリンガル・ケースファイル

「大丈夫、慣れてますから」

不本意だけど。そう言って僕は支配人の遺体を調べる。悲鳴を受けて僕らが駆けつけ、お爺さんが扉を破るまでここは完全な密室だった。これ見よがしな。

お姉さんは可哀想に俯いて震えている。ごめんなさい、行きずりの二人を巻き込んでしまった。

このホテルの支配人が《組織》の一員だという情報は掴んでいた。尻尾切りを兼ねた挑戦状。上等だ。

「安心して。この事件、僕が必ず解決します

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ヘイルトゥーコロナ!!!

ヘイルトゥーコロナ!!!

お前もどうだ。ライムは切ってある。

あのあついメキシコの日々を思い出すと、俺の頭は熱病におかされたようになる。記憶も曖昧だ……

ダッシュボードは男の武器をしまう場所だ。真の男はそこに潜ませたGUNを眺めて、激しい戦いの日々を解雇する。

俺はこのメキシコの荒野に17発の弾丸を放った。セブンティーン……モラトリアムにゆれ、未だ熟さぬ青い火を宿す、それはKEMONOの数字だ。

17発の弾丸は、五

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摩法少女☆あかりちゃん

《断捨離!》
「許して!プレミアが!」

恐怖!旦那の物を捨てる嫁!男のコレクションは最早風前の灯!

「させないわ!」

立ち塞がるはやや着崩した尼装の少女!

「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ!」
《あー!》

声明(ファイアブレス)!大阿闍梨もかくやの火力!
降伏の護摩法が化生を折り伏せる!

九死に一生!男が喜びに顔を上げると、不意に断末魔の爆風が尼装フードを巻き上げた。

見事な禿頭で

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