見出し画像

コミュニケーションの専門家がチームをサポートすると…

こんにちは。
スポーツコミュニケーションアドバイザーの田原直弥です。

コーチングセッションを続けてきたスポーツ指導者の方が、今、ゴール達成直前の道のりを経過中です。ゴール達成まで残り少し。その方は川崎市の少年サッカーコーチでチームの6年生を担当する大学生Yコーチ。「選手たちと等々力競技場で闘う(川崎市ベスト4)」というゴール達成にむけて2020年1月から2週に一度のセッションを繰り返してきました。先週リーグ戦を勝ち上がり、10月中旬から決勝トーナメントを闘います。今日はこれまでの取り組み事例を元に僕がどんなコーチングをしているか綴ります。(Yコーチの許可を得て執筆可能になりました!)

※等々力陸上競技場。ここでプレーすることを目指しています。

未経験の目的地へ運ぶCoaching

スポーツ現場でコーチングというとよく「技術指導」のことだと言われます。しかし、僕はスポーツ指導者に行っているのは技術指導ではありません

「Coach」とは語源が「荷馬車」からきていています。意味は人を目的地まで運び届ける。アメリカではスクールバスの運転手さんをコーチと呼んでいます。それに進行形のingがついたものが「Coaching」。なので僕がしているのは「人を目的地まで運び続ける」ということをしています。

なぜそれが必要かというと、人が未経験の目的地に向かおうとした時にそのプロセスで様々なことが起こるからです。海外旅行経験がない人が一人でフランスのパリの凱旋門に行こうとしたとき、航空券の予約で悩むかもしれないし、予定していたフライトが天候によって変更になるかもしれないし、フランスに到着しても言葉がわからず電車の場所や行先がわからないかもしれないし、トラブルに巻き込まれて携帯や財布を失うかもしれません。そういった起こりえる出来事を一人で頑張って乗り切るよりは誰かがいた方より早くより近いルートを通って目的地に到着できます。その誰かという役割をコーチが担っています。

実際、Yコーチと共に歩んだ9ヵ月、いろんなことが起こりました。

コロナによる練習・対外試合の禁止。春の主要大会中止。夏合宿中止。慣れない環境の中で選手育成の手段の検討。空いた活動期間を埋めるチームビルディング。活動開始後の選手のフォローアップ。ゴール達成の為のトレーニング考案。活動禁止中・自粛開けの活動方針をめぐるスタッフ同士の論争…。

事あるごとにYコーチの考えや意見をベースとし、乗り越えゴールに近づくための最適解を共に話し合ってきました。

Yコーチにとって「選手たちと等々力競技場で闘う(川崎市ベスト4)」というゴールは未経験の目的地。その可能性を高め、目的地により近づくべく、コーチングセッションを繰り返しました。

目的地に向かい続けるエネルギーマネジメント

未経験の目的地に向かおうとするとき、人には3つのエネルギーが働きます。1つ目は「推進力」。モチベーションや欲求が働き目的地に向かおうとする力です。2つ目は「抑止力」。目的地に向かう行動に対して不安や恐れなどが働いて抵抗する力です。3つ目は「恒常性」。人に備わっている機能で、元の状態に戻ろうとする力です(体を参考にすると分かりやすいです。人は熱を出した時には汗をかいて体温をもとに戻そうとします。なぜなら元の状態に戻る方が生存しやすいからです。そのため人間は日常から変化を嫌います)。未経験の目的地に向かうプロセスではこのエネルギーが常に変化します。

YコーチとYコーチが指導する選手たちも同じようにこのエネルギーが働きました。そこでコーチofコーチの役割として、Yコーチのエネルギーを最適化(推進力を高いまま維持する・抑止力をなるべく減らす・恒常性を元に戻らないように同じ力で支える)するアプローチを取りながら、Yコーチが選手のエネルギーを最適化できるように話し合い、時にアドバイスをしてきました。

田原「Yコーチはどんな時に推進力がさがる?」
Yコーチ「U-12なので子どもたちの気持ちに浮き沈みがあるのはわかるんですけど、選手の実が入ってないときはモチベーション下がります。熱量の差異を感じると(笑)。なぜそうなのかとか、その時の対応方法がわからなかったりするので…。」
田原「逆にどんな時に抑止力が大きくなる?」
Yコーチ「対保護者を考えると大きくなります。どんなことを言われるか、思われるかなどです。あと同じスタッフと考え方が異なった時です。正直レベルのコミュニケーションをしますが大変なので抵抗感ありますね。またか…。って(笑)」
田原「どんな時に恒常性が働く?」
Yコーチ「大会の時です。普段のTRMなら選手全員の育成を考慮して出場機会を平等にしますが、大会ではそうはいかない。出たい選手もいるのでそこに申し訳なさや葛藤があります。でも練習を頑張っている子と頑張ってないのに出たいと言う子がいて、大会では頑張っている選手の中で結果を求めつつ平等性も求めます。でも隣のベンチに座る選手が「出たいな…。」と言われるといつも葛藤してしまいます。」
田原「選手たちはどんな時にエネルギーが変わる?」
Yコーチ「大会前のTRMで負けた時、推進力下がりました。練習でやったことできない。このままじゃ大会でベスト4入れない。って思って。そこで推進力を上げるアプローチは取れました。」

なので状況に応じて、推進力を上げたり、抑止力を減らしたり、恒常性に負けないように同じ力で支えたり、時にフォーカスする割合を変え、時に3つ同時に行うなどして、当事者がゴール達成に近づきやすい状態をつくり出すエネルギーマネジメントをしています。

ゴール達成までの戦略会議

「選手たちと等々力陸上競技場で闘う(川崎市ベスト4)」というゴールと現状の差を埋める戦略会議を毎回のセッションで行なっています。Yコーチから出るアイディアと他チームの取組みの情報提示や僕のもつノウハウや知識、アイディアを提案しながら、今のチームにとって最適な取組みは何かを常に考えます。コロナで活動禁止になった時には、ベスト4以上の結果を残すために、選手の自主トレ向上とチームワーク(繋がり)を絶やさない施作を一緒に考えました。Yコーチが決めたことは
YouTubeでチーム用自主トレメニューの発信
ご家庭の協力を得て、定期的なグループzoomミーティング
①と②を掛け合わせた、YouTubeでサッカー動画を観る×ミーティング時に感想とこの場面ならこんな選択をするという選手の意見交流
を行いました。さらに、その取組みの評価を保護者に協力していただいて
④評価アンケートも取ろうとなりました。

「サッカーの面だけではなく人間としての成長を考えて企画して下さり有難く思っています。」
「一人で公園に行ってサッカーするようになりました。できるようになったことがあると自信につながってました。」
「制限された環境の中で様々なトライをしていただきありがとうございます。」
「チームの方針・各学年での取り組み等を明確に発信していただけるともっと分かりやすいと思います。」
「誰とも会えない中ZOOMをつかってコーチやみんなと交流できて嬉しそうでした」
「普段ではできない取り組むでとても濃い内容でした」

という意見を頂き、取組みに則した一定の価値の獲得とYコーチにとっては取組みへの自信と選手・保護者からの信頼を獲得する経験になったと話します。

※セッションはオンラインで。1時間と決めて戦略会議をしています。

また、ゴール達成のプロセスを俯瞰的に見つめて中期的なプロセスを計画することも定期的に欠かさず行います。よくゴールを数値化して話すことがありますが、「ゴール達成を100だとしたら、現在の数値はいくつになるか?」「今が40だとしたら、60になるには何が必要か?」「それにはどんな方法や手段があって、このチームに最適なものは何か?」などの質問しながら、中期的な道のりを確認してステップを明確にしていきました。Yコーチとのセッションではこの会話を行いながら、その時間で必要とするテーマをYコーチに決めてもらいました。例えば一体感の形成についてをテーマにしたり、選手の考える力の育成についてや技術差のある選手に対するフォローの仕方について、合宿中止に変わるチーム強化の取り組みについてなどをテーマにしたりしてゴール達成までの差を埋める行動をきめました。

効果的なコミュニケーションのアドバイス

コーチングを専門としている僕たちはコミュニケーションの専門家です。スポーツ指導と少し違う視点から目標達成に向けた有効なコミュニケ―ションを提案しています。

指導者の役割に選手の最大パフォーマンスを発揮するために、弊害をなるべく取り除くことあります。しかし、指導者が良く使う言葉に弊害になる言葉があることに気が付きました。例えば「なにやってんだよ!」「おい!」「おまえさぁ!」「ふざけんなよ!」「この試合絶対に負けんなよ」「勝たなかったらどうなるかわかるよな」といった脅しの言葉です。よく使われる場面を見かけますが、選手にとって緊張や不安を感じて最大パフォーマンスが発揮できません。当たり前に使われてきた言葉や、良かれと思ってかけた言葉が実は弊害になっています。また、曖昧な言葉も選手のパフォーマンスを落とします。例えば「もっと広がれ」だと、どこまで広がったらいいのか、どのくらい広がるといいのか分からず混乱します。だから「タッチラインを踏むまで広がって」とか「あと5㍍広がって」だと選手は理解して迷いなくプレーできます。

コーチofコーチとして、〈弊害となる言葉〉→〈ポテンシャルを高める言葉〉に変えて、〈曖昧な言葉〉→〈明確な言葉〉に変えるアドバイスを時にしながら指導のサポートしています。

田原「選手への声掛けについてコーチをつけてヒントになるようなことはあった?」
Yコーチ「ありまくりですよ。フォローで使う『選手の背中を押す言葉リスト』を自分自身で作成できたのは力になりました。あと考える力を高める為にコーチからすぐに答えを言わないで質問するとか、試合会場では選手の集合場所を保護者の前にしてミーティング内容を保護者にも伝わるようにするとか、関わり方の部分まで参考になりました。毎回のセッションで何か一つ自分の力になることが得られています。」
田原「効果的なコミュニケーションを知って選手との関係はどうなった?」
Yコーチ「より近くなりました。昔だったら今の6年と近づけなかった。密接になった感じです。これ(コーチングセッション)なしで9月30日になっていたら、フレンドリーな関わりにはなったと思うけど、密接になれていない。うわべじゃなくなりました。子どもたちをよく知れて、多面的に多くの視点からコミュニケションすることができるようになりました。」
田原「選手のパフォーマンスはどうなった?」
Yコーチ「結論言うと高まりました。選手が落ちた時に上げることができるようになったんで。それに関係性良くなって、選手のことをより知れるようになったことで選手に応じてこの子にはこう言った方が良いとかこの場面ではこれだっていうものが分かりました。だからパフォーマンス上がってます。あと選手間では試合中でも話せなかった選手が話せるようになって来てます。」

最後に

コーチOFコーチとして以上の4つを中心に行っています。

未経験の目的地に運ぶCoaching
❷目的地に向かい続けるエネルギーマネジメント
❸ゴール達成までの戦略会議
❹効果的なコミュニケーションのアドバイス

エネルギーの変化はどの指導者にも起きますし、どのスポーツのどんな選手でも起こります。だから対象になるのは全てのスポーツ指導者とスポーツ選手。一人で頑張るよりも誰かがいると心強く前進できます。また、スポーツ指導の知識や技術に加え、それを効果的に伝えるコミュニケーションスキルが合わさると鬼に金棒。コーチofコーチがスポーツ指導者の目標達成を共に目指します。

コーチofコーチの活動が気になった方は、全国各地でスポーツコミュケーションの研修も開催されています。効果的なコミュニケーションの取り方を身に付け、コーチのプレゼンスまで知れるチャンスです。チーム力向上、指導力向上のヒントに必ずコミットします。

日本スポーツコーチング協会のHPより応募いただけますのでコチラをCheak!!

鹿児島会場では10月10日(土)14:30~

また、チームや組織を対象にコミュニケーション研修を承っております。チームや組織を活性化させパフォーマンスを高めると評判です。

Yコーチ、今回は協力してくれてありがとうございました!
Yコーチのゴール達成を皆さん応援ください!!Jリーガーが闘う夢の舞台で、選手もYコーチも躍動する姿を想像すると心が躍ります。
ご声援お願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?