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短編戯曲『大きくなったら、死ぬ。』(2021)

※上演ご希望ございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。著作権は田口アヤコに帰属します。

世田谷パブリックシアターの公募企画、
「世田谷パブリックシアター若手演劇人育成プログラム Hatch Out Theatre ハッチアウトシアター2021「子どものためのリーディング公演+ワークショップ」【戯曲】【演出+WSファシリテーター】同時募集」について。

応募対象外の年齢なので、
勝手に戯曲を書きました。
オンライン上演とかもいいかと。
https://setagaya-pt.jp/news/20210112-91387.html?fbclid=IwAR3BjZFBXbZq6coceHsfh5JWDSPm_uJxnKEpjTnwPivyaZnQlKxoAEL5Elo

お題「子どもに伝えたいこと/子どもと考えたいこと」

*********

『大きくなったら、死ぬ。』


みんな違う。

昨日の自分と、
今日の自分と、
今の自分と、
あしたの自分も違う。

母とも違う。父とも違う。

友達とも違う。

兄とも、姉とも、妹とも、弟とも違う。
いとことも違う。

先生とも違う。

まわりのひとたち、みーんなと違う。

そして、必ず、さよならする。
わたしは、ぼくは、死ぬ。

「お姉ちゃんと違う」
「こーた君と違う」
「みさきちゃんと違う」
「タカハシ先生と違う」
「弟と、違う」
「お母さんと違う」
「おじいちゃんと違う」
「パパとは違う」
「そーた君のママと違う」
「りなちゃんと違う」
「ゆーとと違う」

「さよなら」
「さよなら」
「さよなら」
「さよなら」
「さよなら。」

子「おばあちゃん、死んじゃったの?」

母「うん、そうだね」

子「まにあわなかった」

母「そういうもんなの」

子「うん」

母「これで、お通夜ってのがあって、あーまーお葬式、するから。学校、、何日か、お休みするから。」

子「うん」

母「お母さん、学校に電話しとくから。大丈夫だから。」

子「大会、出れる?」

母「や、そんな休まないよ(笑い)。そうだよね、間に合うから。まあなんかね、おばあちゃんを焼くのに、あんま時間かかるようだったら、お父さんと先帰ってもいいから。」

子「え」

母「その火葬の、火葬場の順番とか、あるのよ」

子「(間)焼きたくない」

母「うん、そうだね、でもそういうわけにもいかないからね、」

子「わたし(ぼく)も、焼かれたくない」

母「そうだね」

焼いて、
骨になって、
こつつぼ、に入って、
お墓のあな、に入って、
そのあとどうしよう
ゆうれいになって、
ゆーとん家行って、
驚くよーなこと考えて、
でも多分気づいてもらえなくて、
そのあと
そのあと
マック行って、
ポテト食べたいけどやっぱ食べられないし、
自転車乗って、って考えたけどやっぱ乗れないし、
あーなんか、さんずのかわ、ってのを渡るんだって
聞いたの思い出して、
たぶんぽろぽろ泣くと思う。

無人島に行くとして、
なにかひとつしか持っていけなくて、
ってのをこないだ話してて、
いやーなにかなーゲームっしょスマホっしょ、てか、スマホあったら無人島から簡単に帰れんじゃね?ってマジウケて、
あれ?
あたし今何才なんだっけ?
死んだんじゃないっけ?
死んだらなにも持ってけないじゃん
おじいちゃんもぜんぶ焼かれちゃったじゃん
なんか入れたやつ
おじいちゃんの書いた本とか
将棋の駒とかそんなんもぜんぶ
骨しかなかったじゃん
てか骨も
骨かどうかわかんないみたいな
ぜんぜん怖いとかそういうのないやつ
ドクロ的なやつじゃなくてさ、
切れっぱし、
かたくて白っぽいから骨っぽいけど実際なんだかわかんないやつ
わりばしでこう、挟まなきゃいけなくてさ、
嫌だな。
かるかるかるかるかるかるかるかる、
あんなに、
軽くなって、
骨、になって、
いやもう絶対に幽霊になりたい
幽霊のまんまいままでどおりに学校いってさ、
夜寝てさ、
朝起きてさ、
学校行ってさ、
でも引っ越しとかするかもしんないよね
あーまー無理か。
そりゃそんなんさ、
死んだんだから。

子「わ!」(起きる、目覚まし時計見る)

母「なに?早いじゃん
いまご飯用意するから」

子「死んだ夢みた」

母「なにー?ゆめ?見るよねー(笑う)」

子「あたし(おれ)死んでた」

母「そういうの、夢占い的にはいいやつなんだって。」

子「え、なんで?」

母「いや、切り替わり? いままでのなんかモヤっとしたやつてかそれこそ自分がさ、変わるチャンス〜みたいなやつらしいよ」

子「チャンスってなに」

母「え、いいタイミングですよ、っていう、なんかあれよ?夢とかって、自分の頭の中が出てきてんのよ?あーあれじゃない、どっちかっていうと、いま『変わりたい』って時に見る夢なんじゃないの」

子「え、なんかめっちゃ怖かったんだけど」

母「怖いよねー」

子「なにそれすごい適当」

母「いやなんかさ、お母さんも昔よく見た! てか、こないだも見たわ。お母さんのはさあ、ひゅーーーーーーってどこまでも落ちてくの。で、あ、これ、あたしもう死んだんだな、っておもうの」

子「夢で?」

母「いやわりとさ、夢の中で、『これは夢だわー』ってわかってんのよ、」

子「怖かった」

母「よしよし、(ハグ)夢は、夢。」

同じが嫌で違うのがよくて、
違うっつったって浮くのはヤバくて、
でもなんかみんなおなじじゃん、
なんかおんなじゲームとかしてさ、
YouTubeの話してさ、
先生のモノマネとかでウケてさ、
すげー練習したりしてそれでまたウケてさ、
1人でいる子とかヤバいじゃん、
てかほんとは1人でいたくても居る場所もないしさ、
大きくなったら何になりたいか
保育園のとき「サンタクロース」って言ってた子がいたな
でもさ、絵本でもサンタクロースって何百人とかいたじゃん、「1年に1度のサンタ会議」とかって「誰が良い子かを決めます」とか
もう良い子とかはてきとうに流してるけど、もうマジでサンタクロースになろうかなー、
サンタクロースとかマジでマジでマジで生きてる価値あるじゃん、プレゼント欲しいもん!
良い子とかそーゆーのじゃなくて、
自分が自分で自分が自分で、自分が自分で、
ボーッとしてても、
自分じゃん。って
違う。
生きてる。
自分。
って。
死ぬ前に。
てか、死ぬまでに。
いや生きてるし。
違うじゃんね。
わたしは、わたしじゃんね。
サンタクロースになるって、どうやってやんのかな。まず短冊に書こっかな七夕の
で、なんか、神社とかでもあの初詣のときとかにもお願いしてったらなれるかな?
あ、おまじない的な、
「サ、ン、タ、ク、ロー、ス」って手に書いてさ、飲み込むってやつ、
ちょと意外と恥ずいし
や、言う必要も無いし。
変わったら、また手に書いてさ、飲み込んでさ、
「天才科学者」とかさ、
「飛行機の、パイロット」とかさ、
「大統領」とかさ、
「お菓子屋さん」とかさ、
「保育園の先生」とかさ、
「消防士」とかさ、
「サッカー選手」とかさ、
「バレリーナ」とかさ、
「お金持ち」とかさ、
「YouTuber」とかさ、
「電車の、運転する人」とかさ、
「宇宙に行く」とかさ、
「大学の先生」とかさ、
「鬼を退治する」とかさ、
どんどん、違っていって、変わっていって、また「サンタクロース」とかさ、
「ゾウ」とかさ、
「みみず」とかさ、
面白くても、面白くなくても、
自分は自分で、
死ぬときまで、自分は自分で、
決める。

(終)

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