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「自己中」を、肯定してみる。


一般的に「自己中」は良くないものとされている。

自分優先。わがまま。エゴイスティック。独りよがり。配慮がない。自分の考えを押しつける。これらの言葉に当てはまるような人間は白い目で見られる。あなたのそばにいるかもしれない。

そんな、誰もがそう思われないように生きている「自己中」という性質を、今回、なんとか肯定してみたい。どうか屁理屈とか言って怒らず優しく見守ってほしい。

まず「自己中」を肯定する上で無視できないのは、「この世の中に、自己中な側面を持っていない人なんていない」という仮説だ。「自己中」という性質を実は誰もが隠し持っていて表に出していないだけなのではないか。

ひねくれた見方をすれば、「あなたが幸せなら私は幸せです」という言葉には、「あなたが幸せなら私も幸せですと思える自分が好き」という部分が少なからず含まれている。いい意味で。(いい意味で、と最後につければ許されるなんて思ってない)

人間は誰のために生きているのか。この哲学的な問いへの回答は「自分のために生きている」が一番違和感がない。「私の一生を主に捧げます」というような敬虔な信徒はのぞいて、自分の人生は自分のためにあるというのは一般的な共通認識のはずだ。

「自己中」の定義を調べてみると、「自己中心的の略。何事も自分を中心に考え、他人については考えが及ばないさま」と記されてあった。

「他人について考えが及ばない」の部分は肯定しようがないので置いておいて、「何事も自分を中心に考える」の部分は、実はそんなに悪いことではないかもしれない。何事においても自分を大切にしているということでもある。ある意味、当たり前の話だ。

現実社会には、身分の上下や立場の強弱があっても、映画やテレビドラマみたいな脇役なんていない。経営者と平社員、有名アーティストと一ファン、総理大臣と一国民、レギュラー選手と控え選手、それぞれがそれぞれの人生の主役だ。みんな、自分を中心に世界はまわっているはず。そう、この惑星には主役しかいない。

このnoteだって、多くの人たちが、自分のために書いているはずだ。誰かのために書くなんて大義名分を掲げていたって、やっぱり自分のために書いていると思う。


『僕はあなたを幸せにする自信なんかありません。でも僕が幸せになる自信はあります』

これは、映画「釣りバカ日誌」主人公の浜崎伝助の、みちこさんへのプロポーズの言葉だ。

言っていることは自己中そのもの。にも関わらず、多くの人たちの心の琴線に触れ、釣りバカファンで知らない人はいないくらいの名台詞になった。自分もこの言葉にものすごく惹かれた。なぜだろう。

たぶん、人を愛する気持ちに含まれる一方的・独りよがりな部分を隠していないから。むしろさらけ出していて清々しい。ネガからポジに転換する言葉のレトリックももちろんあるけれど、ありのままの純粋な思いに好感が持てる。

『「誰を好きか」より「誰といるときの自分が好きか」が重要らしいよ』

この言葉の主が蒼井優であることを明かしたツイートは「いいね」が16万件を超えて大きく話題になった。山ちゃんこと山里亮太と結婚発表をした後の、ヒャダインの祝福ツイートだった。

素敵な言葉だなと思う。やっぱり琴線に触れる言葉には嘘を感じない。心の奥から発せられる本当の言葉には、だいたい、自己中エキスが混ざっている気がする。愛は自己中を許容するのである。知らんけど。

『例えば誰かの一人の命と引き換えに世界を救えるとして僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ』

知っている人も多いであろうミスチルの有名な歌の一節だ。これ、桜井氏の確信犯的な歌詞だと思う。だってこの「男」というのは、この曲を聴いているほぼ全ての人のことだから。いきなり自分の自己中を言い当てられてしまった、ほぼ全ての聴き手が一気に歌に引き込まれてしまう。うまいなあ。



これら三つの言葉に共通しているのは、本当はわざわざ口に出したくない「自分のために生きている」という側面をさらけ出していることだ。心の奥底から発せられたありのままの言葉だと思う。だからこそ、これらの言葉は多くの共感を呼んだのだと思う。

本当はみんなわかってるんだよ。自分は自分のために生きているという当たり前のことを。

実際、社会は、多くの人間がお互いの自己中をうまく手で覆いながら、お互いの距離感を絶妙に取り合い、お互いの自己中を尊重し合いながら成立しているのかもしれない。

もし「本来、人間は自己中な側面を持っている」という仮説が正しいのだとしたら、自分が自己中であることを否定しない人間の方が、客観性があるぶん信用できる。「自己中」は人間らしいとは思う。でも、それによって、誰かに迷惑をかけたり、傷つけたりするのはやっぱり良くない。


・・・うーむ。今回、「自己中を肯定する」というテーマに挑戦してみたけれど、やっぱり難しい。話がまとまらないし、展開が強引になる。立ち向かう山が高すぎた。



#エッセイ #人生論 #自己中 #利己主義 #利他主義 #自己中心的

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