見出し画像

辛いけど仕事を辞めるわけにはいかないと考えている方へ

1.仕事を辞めるという重大な決断

私は働く人たちの健康を守る「産業医」の資格も持っているのですが、

近年、「ブラック企業」という言葉が耳慣れるようになってきているように、

働く人達が心身の健康を崩すというケースは増加してきており、

「健康経営」という言葉で健康の観点で職場の環境を整えるということも最重要課題の一つとして認識されてきています。

そんな中で目立つのはメンタルの調子を崩してしまう人達の多さです。

うつ病や不安症、適応障害などに代表されるメンタルの不調は職場における人間関係や環境が大きく関わっている場合も多いです。

その場合、仕事を辞めてその職場から離れることもメンタルを落ち着かせるために重要な選択肢のうちの一つとなってくるわけですが、

若い頃であればまだしも、40代にも50代にもなり、それまでその仕事一本で働いてきたという人にとっては、

今更、一から他の仕事を探して転職をするというのはかなりハードルの高い行為だという状況となってしまいます。

あるいはそうした世代の人達はこどもを育てている場合も多いでしょうから、

自分が仕事を失うことによって、家族にかけてしまう迷惑を考えると忍びないという場合もあるでしょう。

そして何より自分さえ頑張ればこの状況は解決させることができるのだから、たとえどんなに辛くとも自分が何とか持ちこたえればいいという発想にいたりがちですが、

しかし根本的にその職場における人間関係に問題があり、その関係性を自らで是正することができなければ、

その職場にいる限り、メンタルの状態は決して安定しないという悪循環に陥ってしまいます。

そしてメンタルの状態とフィジカル(身体)の状態は密接にリンクしますから、

メンタルのトラブルが長引けば、今度はフィジカルの状態も悪化して、病院に頼れば難病の烙印が押され、問題の解決はどんどん難しくなっていきます。

まさに「進むも地獄、戻るも地獄」の状態。こんな状況に追い込まれた時にはどうすればよいのでしょうか。

私はこういう時の方法は2つしかないと思っています。

一つは「メンタル不調をもたらす自分の価値観の問題点に気づき、価値観を変える」、もう一つは「メンタル不調をもたらす要因のある環境から離れる」というものです。

価値観を変えることは難しく、私もオンライン診療の中で患者さんと共にその難しいことに挑戦し続けているわけですが、

今回はそのように価値観を変えることがどうしても難しいのもう一つの選択肢、「その環境から離れる」の方に注目して考えます。

前置きで「それができれば苦労をしない」という話をさんざんしてきた中で言うのも何ですが、

私は「それでも、どうすればその環境から離れることができるかをあらゆる方法を駆使して考える」ということが大事だと思います。


2.苦境を脱するためには「相談」せよ

この時に「あらゆる方法を駆使する」という点が重要です。

例えば、前置きの内容で言えば、自分一人だけで考える場合には、

「仕事をやめても他に働ける仕事なんてない」

「仕事をやめて収入がなくなれば家族に迷惑がかかる」

「仕事をやめてもメンタルの不調が改善するとは限らない」

などという負の思考の一点張りとなってしまい、「よって、今の仕事を続けるしかない」という結論から逃れられません。

その結論を変える場合に「あらゆる方法を駆使する」、つまり「色々な人に相談」するとよいと思います。

「相談」とは、言わば自分にはない第三者の視点を借りることですから、自分では全く思いつかない予想外の解決策を提案してくれる可能性があります。

例えば私のような「産業医」に相談することもいいでしょう。

会社には50名未満の小さな企業でない限り、会社は産業医を選任することが義務づけられていますので、そうした会社であれば必ず「産業医」という人がいます。

「産業医」は健康上の問題を医学的に評価しつつ、業務の軽減や職場の配置転換などの助言を会社の上層部に進言する権利を持っていたり、その際に相談者に不利益を被らないように会社が配慮すべきことがルールとなっています。

「産業医」に相談すれば、今の会社にいながらにして「その環境から離れる」ことも不可能ではないかもしれません。

あるいは「ハローワーク」のような職探しに詳しい所で相談してみるのも一つでしょう。

「自分にはこの仕事しかできない」という凝り固まった考えに、様々な仕事の選択肢を提示し、「これなら働けるかもしれない」という可能性を示してくれるかもしれません。

あるいは失業保険のことであったり、休職中に受けられる制度について色々と教えてもらい、職探しに際して心に余裕が持てるようになるかもしれません。

あるいは「家族」にも胸のうちを十分に話してみることです。

そもそも「気を遣う」というのは自分の心に負担がかかる行為です。それを全くしなければただ傍若無人になるだけなので「気遣い」が全く要らないわけではありませんが、

気遣いも過剰になればそれさえメンタルの調子を崩す原因となります。

大事な家族のいる場がさらに自分を苦しめる場にならないように、思いの丈を打ち明けることが必要です。

ただしそこで「難しいかもしれないけれど、新しく仕事を変えたいと思っている」などというように前向きに今一歩を歩き始めている姿勢があることが重要です。

人は頑張って前を向いて歩こうとしている人のことを応援したくなるものです。ましてやそれが親密度の高い家族であれば尚更です。

もちろん家族との人間関係によっては、その協力が得られない場合もあるかもしれませんが、それでも自分にできるだけの誠意は見せるべきだと私は思います。

そうすれば休職期間中に家族の誰かから金銭的なサポートを受けられるかもしれませんし、家族は家族でこの難局を協力して乗り切ろうとそれぞれの立場で奮起してくれるかもしれません。

このように自分だけで悩み、自分だけで考えていた時に比べて選択肢は圧倒的に広がるのです。


3.いざとなれば「一からすべてをやり直す」

「もう無理だ」「そんなことできっこない」

そんな風な場面に遭遇すると、頭の中には「それをすることができない理由」がたくさん浮かんでいるのかもしれません。

でもそんな時は「それができるようになるにはどうすればいいか」という方向へ思考のベクトルを切り替えてみて下さい。

自分の中でも色々な可能性を考えれば道が見つかるかもしれませんし、

誰かに相談することでその可能性はさらに広がっていきます。

もしもそこまでやっても解決策を導くことができないのだとしたら、それは本当に解決することができない問題なのかもしれませんけれど、

そんな問題はそうそうないと思いますし、

いざとなったら、一からすべてをやり直したっていいじゃないかとも思うんです。

よくないのは、まるでそこにしか自分の生きる場所がないかのように思えてしまい、

心と身体がむしばまれて、生きることが地獄に思えてしまうような人生を送ってしまうことです。

いかに自由に生きてよいと言っても、そうなってしまうくらいなら「一からすべてをやり直すという選択肢」を考えてほしいと思います。

ここで「ゼロからやり直す」という選択肢を私はお薦めしません。ゼロはすなわち自らの手で命を絶つことだと思います。

一からであればやり直せますが、ゼロからはやり直すことはできません。

是非、今自分にたまたま見えていないだけで、可能性はまだまだあるのだということを信じて「やり直してほしい」と私は願います。

患者がもっと自由に自分の健康を管理できる新しい医療のカタチを具現化できるように情報発信を頑張っています!宜しければサポートして頂けると励みになります。頂いたサポートはズバリ!私の大きなモチベーションとなります(^_^;)!