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「先生にお任せ」しないで

1.何も自分で決めていない返事

私が医者になってから患者さんから最も頻繁に聞かれるダントツ第一位の台詞があります。

それは「先生にお任せします」というものです。

気持ちはわかります。このわけのわからない病気に関することなんて、自分なんかが判断するよりもいっぱい勉強してきた先生が判断する方が正しいに決まっているのだから、

どう考えても「先生にお任せするしかない」、と思ってしまうのは理解できます。

しかしこれが病気をこじらせる最大のNGワードだと言っても過言ではない、と私は思っています。

なんでかと言うと、すべての病気の原因は突き詰めれば、自分自身から生み出されていると考えることができるからです。

皆さんも母親や恋人から「今日、何が食べたい?」と聞かれて、「何でもいいよ」と答えた経験はないでしょうか。

ここで言う「何でもいい」は、先程の「先生にお任せします」に通じます。

つまり、「自分では何も判断しません。あなたの判断に委ねます」という意思表明であったりするのです。

ついでに言えば、「何でもいい」と答えておきながら、いざ自分の望んでいないものが作られていたりすると不満を感じていたりしませんか。

せっかく料理を作ってくれた人に対して、間違っても不満を口にしないで下さいね(^_^;)。喧嘩のもとです。

何で喧嘩になるのかと言いますと要するに「何でもいい」と言っている人も、本当に「何の料理が来ても私は受け入れられる」という意味で言っているのではなく、本質的には「私は何も決めません」ということである方が多いと思うのです。


2.任された他人が下す決断とは

これが単なる日常の食事のワンシーンだけの話であれば、せいぜいちょっとした喧嘩が起こるくらいのことで終わるでしょう。

しかしもしこれがこと健康のことに関して「私は何も決めません」という決断をしてしまうとどうなるでしょうか。

医師は確かに医学知識はたくさん持ち合わせています。しかしあなたのことは初めて会ったばかりで何も知らないかもしれません。

あるいは長く定期的に通院していたとしても、1回に顔を合わせる時間はせいぜい5分〜10分、やっぱりたいしてあなたのことを知らないかもしれません。

そんなあなたのことを何も知らない人間があなたの健康のことを全面的に任されたら、医師はどんな行動をとると思いますか。

医師は常識的な価値観に従って、あなたにとってよいと思われる提案をすることでしょう。

しかし、その常識的な価値観の中にはあなた固有の問題は決して含まれていません。

あなたが幼い頃から持っているコンプレックスのことは考慮されていませんし、

あなたが抱える家族の独特の問題についても把握されていませんし、

あなたがどんな食生活を送っているかも認識されていませんし、

あなたがどんな性格で、どんなことに怒りを覚え、どんなことに悲しみを感じるかということも全くわかっていないことでしょう。

そんなあなたしか知り得ないあなた固有の情報を除外した常識的な価値観によって下された判断が、本当にあなたの健康課題を解決することができるのか、という話です。


3.さぁ「先生にお任せします」をやめましょう!

この「先生にお任せします」からの脱却を私は強く勧めています。

せめて「先生、どう思いますか?」に変えるべきです。

より正確に言えば、「私はこう思うんですけれど、先生はどう思いますか?」ということです。

俗に言う「まな板の上の鯉」という言い方も同じくらいよく聞く台詞です。手術の前の患者さんからよく聞きます。

確かに手術自体は「まな板の上の鯉」状態かもしれません。

でも「手術を受けるべきかどうか」については自分の頭で考える余地があるはずです。

他ならぬ自分の身体の問題であるわけですから。

しかし、そのことさえも「先生にお任せ」してしまってはいませんか?

もっと情報を整理して、なぜ今自分がこのような状態になったのかを考えて、その上で本当に手術をするべきかどうかを考えるべきではないでしょうか。

断言します。「先生にお任せします」は病気をこじらせる最大の原因です。

なぜならば、最も病気を治す可能性の高い自分という存在をないがしろにする決断であるからです。

先生にお任せしないでほしい」と心から願います。

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