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お父さんからの差し入れ

私は 趣味が 漫画で、 商売が漫画だ。
障害のせいにするわけではないが、 相当な遅筆で、 担当さんにはいつもご迷惑ばかりかけている。

生活のこと、 その他 もろもろの 事情、 お父さんとの時間。

精神的に落ちる時もあれば、 今夏のように エアコンがなくて 全く仕事にならなかった 時期もあれば、 秋口になって 突貫で徹夜して 一気に仕上げることもあれば、 徹夜が祟って 3日 潰れる時もある。

私の漫画は、コアなファンの方が 買って くださっているおかげで、 20歳から なんとか細々と、 漫画を 描くということを続けられている。

感謝しきりである。

ぶっちゃけ、 印税 というものは、 紙媒体では 1000円の本が売れても 100円 しか入ってこない。

今は 主に電子書籍 なので、 印税はもっと厳しく、 3ヶ月に一度、 出版社から 電子書籍の売上 明細書が 来るが、 月に数千円の世界である。

今現在は、 原稿料というものをもらっているので、 仕事の頑張り次第で、 貯蓄というものができ、 全く 稼げなかった時 漫画家の先輩から借りたお金を、 わずかながらも お返しするという、 そういったこともできるようになった。

漫画を描く労力や、 私がどれだけ必死で やっているかを 全く考えない知人などに、「 印税 あてにしてるよ」 などと トンチンカンなことを言われ、 げんなりして 縁を切った ことなども 過去にはあった。

遊ぶこともあまりないが、時には ガス抜きに電話で30分ほどバカっぱなしをしたりする。
付き合ってくれる悪友には感謝である。

原稿を 描くときは、 漫画読み のお父さんが 起きて 付き合ってくれて、 1枚1枚 描くごとに、 相談に乗ってもらったり、 描き直した方がいいか 厳し目にチェックを入れてもらったり、 デッサンする時 ポーズを取ってもらったり、 ほとんど 二人三脚で 描いている。

もう 我が家の食事はずっと、 蕎麦ととろろ芋。 食パンに チーズとハムを挟んで、 血糖値が下がった時 手早く 済ませている。

ずっと前から月3万の貯金を続けている。
この貯金は、 私とお父さんにとって非常に大切なお金である。

お父さんが 終末期に入った時、 私たちは 自宅での 看取りを希望しているので、 その時に かかってくる 大切なお金、 ゆくゆく 私の 両親が 老人介護施設に入る時、 その時にかかってくるお金、 貯金のお金は そのため の 費用である。

私たちは、 趣味にお金はかけない。
一切 お金を使わない。
必要最低限、 どうしても買わなければいけないものは 全て ダイソーである。

興味が あって どうしても欲しいもの、 去年とサイズが合わなくなったので 必要最低限の 衣類、 お父さんと話し合って、 必ず話し合って 購入している。

出前や 函館の ファーストフード店の ラッキーピエロの ハンバーガー などは、 お客様が来たときの、私たちの晴れの日の羽目外しで、楽しみである。

かつて お父さんが現役時代、 私は贅沢にも 専業主婦をやらせてもらっていた。

その当時、 私は毎月お父さんから5万円もらい、 食費を5万円以内に納めていた。

農家に行って野菜を安く買ったり、 魚屋で 安くて 新鮮な魚を ゲット しては、 お父さんに習った和食を 作るのが 実に楽しみであった。

今現在は 物価も上がり、 毎月の 食費から 消耗品費、 医療費など、 それにかかる値段が 恐ろしく、 月頭に 5万円おろし、月半ば 5万円 降ろして、 ヘルパーさん方から 何が いくら上がった という情報を集めて 生活している。

私の筆が もうちょっと早ければ、 お父さんが 万年筆を 調整する ドライバーの 一式を買ってプレゼントしたいところだが、 お父さんが退院してから かれこれ 5年、 本当に余分なものは買わなくなってしまった。

お父さんは、 日々 私を見ている。
50歳を過ぎて、 急激に疲れやすくなり、 無理が効かなくなった私。

原稿 を描きながら、「 頑張れ! 頑張れ!」 そんな独り言を言いながら、 目のかすみと戦いながらえっちらおっちら やっている姿を 見ていてくれる。

そんな私と お父さんの 生活の中で、 私たちのお金の重みは、 お父さんの思いやりと どうしても 遅筆になってしまう私との、二人で 稼ぎ出した 、 絶対的で かけがえのない、 本当に貴重なお金 である。

500円、 1000円、という お金であっても、 今現在の私たちは、 必ず相談し合いながら 使っている。

時々お父さんが 差し入れてくれる、 170円の カップに入った コーヒー。

私にとっては、 それが最高のお父さんからのご褒美で、 愛情で、 泣けてくるほど ありがたいのだ。

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25歳 上の夫(令和5年、77歳。重篤な基礎疾患があります)と私との最後の「青春」の日々を綴ります。

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