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世界最強現役アスリートのビジネスとは?

普段あまり本を読むタイプではないが、最近読んだ「Lebron Inc.ーThe Making of A Billion-Dollar Athlete」という本が面白過ぎて(自分の興味関心ドストライク)、インプットだけで終わらさず、珍しく「アウトプットせねば!」と思い、この本からの気づきやレブロン・ジェームズのビジネスを整理したくなりここで書く事にした。

レブロン・ジェームズは周知の通り、現役最高のNBA選手の一人であり、競技分野を超えても世界最高峰のプロアスリートである事は間違いない。ただ世界を見渡しても、ここまで多岐にわたってビジネスを手掛けている現役プロアスリートはいないのではないだろうか?

この本の話題の中心でもあるレブロンが手掛けている数々のビジネスとその内容、レベニュー規模などをざっと以下に整理してみる。

1.アスリート業
 ・プロバスケットボール選手(NBAロサンジェルス・レイカーズ所属)
  US$154M(約160億円)/4年(2019〜22年)
2.エンドースメント業(参照*契約終了している企業の記載はなし
単純なスポンサーシップモデル。レブロンを使用したマーケティングを展開したい企業が、お金を払ってその権利を得るスキーム

 ・ナイキ(年間:US$30M)*つい先日ナイキとは生涯契約を締結
 ・コカ・コーラ(年間:US$2.5M)*正式にはSpriteブランドの広告塔
 ・Upper Deck(トレーディングカード会社/年間:US$1M)
 ・KIA自動車(年間:US$5M)
 ・State Farm(保険会社/金額不明)
 ・Intel(年間:US$4.5M)
 ・ダンキンドーナッツ(金額不明)
3.エンドースメント+投資業
レブロンのエンドースメント対価をスポンサーシップフィー(キャッシュ)ではなく、その企業の少数株を対価とする(もしくはその企業にレブロンが出資できる)スキーム
 
・Cannondale(高級自転車メーカー)
 レブロンが最初に行なったエンドースメント+投資事業。レブロンのフィナンシャルアドバイザーで数々の投資を手助けしているPaul Wachter(投資家)が仲介して投資を実施。レブロンが少額投資した一年後にCannondaleは売却され、4倍以上の価値がつき数ミリオン(USドル)を儲けた。この成功体験を機に、レブロンは「自分のネームバリューを活用してスポンサー企業のマイノリティオーナーシップ権を持つ」投資ビジネスに価値を見出し、以後積極的にWachterを通じて数々の投資事業を行う。
 
・Blaze Pizza(ピザチェーン)
全米に400店舗以上を持ち、海外へも出店を加速させてるファストフードピザチェーンレストラン。レブロンがUS$1M出資とバーターで10%のエクイティを保有し、バーターでレブロンがBlaze Pizzaのアンバサダーとして広告・PRに協力。現在企業価値はUS$250M以上で、レブロンの株はUS$1MからUS$25Mに化けた。。
 
・Beats by Dre(高級ヘッドフォンメーカー)
 ラッパー・Dr. Dreがプロデュースする高級ヘッドフォンメーカー。2008年にレブロンがBeats by Dreをプロモートする代わりに、数%のエクイティをバーターで取得。2014年にBeatsがアップルへ売却された時の金額がUS$3B(1ドル120円換算で約3600億円)で、レブロンは約US$50Mのキャピタルゲインを得たとされる。2008年北京五輪でレブロンがUSドリームチーム全員にこのヘッドフォンを配りバス乗車中や試合前に着用させ、それが全米テレビで中継され、それまで全く認知のなかったBeatsは一気にブレーク。IOCに一銭も払わず五輪を最大限活用し商品の認知を拡大させたこのマーケティング手法は、多くの業界関係者を唸らせた。

・Fenway Sports Group(スポーツチーム・メディア投資会社)
 これもPaul Wachterが仕掛けた投資案件で、レッドソックスやリバプールFC、NASCARチーム、リージョナル放送局(NESN)を傘下に持つFSGとのエンドースメント+投資事業。FSGがレブロンのアセットをマーケティングで使用できるバーターで、レブロンがリバプールFCのマイノリティーオーナーになると言うスキーム(約2%程度)。FSGオーナーのJohn HenryとTom Warnerがリバプールを買収した2010年から4年で企業価値が4倍以上になり(US$480M→US$1.9B)、レブロンの保有株もUS$30M以上になっている。。
④共同事業経営 
 
 ・LMRMマーケティング
 レブロンが信頼する旧友と設立したスポーツマネジメント・マーケティング会社。レブロンのオン・オフコートビジネスの管理から、一時は他選手のエージェント業務やエンドースメント業務へも手を広げたが、そこからは手を引き現在はレブロンのエンドースメント契約やロジ周りなどを管理。
 
 ・Uninterrupted 
 親友のMarverick Carterと共に作った選手のための選手によるスポーツデジタルメディア・ネットワーク。”Uninterrupted”(直訳:誰の邪魔もさせない)という社名の由来は、レブロン自身が2010年FAシーズンに、ESPNで番組タイトル”THE DECISION”と題して、大々的に派手な演出で自身のFA去就(ヒートへ移籍)を発表した際に全米から大バッシングの嵐を受け、その世論に流されるようにレブロンを批判的に情報操作・偏向報道するメディアに対して不信感を抱いたレブロンが、自らが誰にも邪魔される事なく、切り取られる事なく発信するメディアを選手自身が語る場所を作るために設立された。Time Warner(米国大手ケーブルネットワーク)からUS$16Mを出資を受けている(参照)。
 
 ・SpringHill Entertainment
 元々は、”More Than A Game"と言うレブロンの高校時代を追ったドキュメンタリー映画を作るために設立したプロダクション会社(当時はSpringHill Productionという名前)。SpringHillは、レブロンが幼少期から貧困ゆえ何度も引越しを経験した後に、ようやく母親と腰を据えて居を構えることが出来た住宅団地が由来。今やハリウッドにオフィスを構え、大手全米ネットワーク局やケーブルTV局と数多くのテレビ番組や映画を製作。CarterがCEOとしてハリウッドの重鎮達とプロジェクトを切り盛りする。
 
・Ladder
サプリメント・プロテイン製品のオンラインサブスクリプション会社。Paul Watcherの紹介で知り合った彼の最大顧客であるシュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)と、2018年に共同で立ち上げたビジネス。

上記以外にも、手がけた事業はまだ他にもあるし(Sheets Energy Stripsという下で溶けるエネルギー食品への投資、等)、俳優業(映画「Trainwreck」や現在製作中の「スペースジャム2」など)や慈善事業(地元オハイオ州アクロンで行なっているバイクチャリティイベントや”I Promise"学校の設立・寄付など)も合わせると、この世界最強アスリートの持つ顔は数えきれない。

今シーズン前にレイカーズとの4年US$154Mの契約を締結した事で、レブロンの生涯資産がU$1Bを超えたと報道されており、34歳の現役プロアスリートが大富豪の代名詞であるビリオネアの仲間入りを果たすという、前代未聞の偉業を成し遂げたのである。

レブロンがビリオネアになれた3つの理由

その1:ヒト
レブロンの大きな成功の理由の一つは、正しい「人」を見極め信頼し、一生涯のパートナーとしてビジネスを託すことができたからだろう。得てして超有名アスリートには彼らの稼ぐ大金目当てに多くの投資家や大手企業、「友人」や「恩人」を名乗る人たちが近付いてくるが、レブロンはそういった「輩」の匂いは直ぐに嗅ぎ分けるセンスがあり、そうではなく、レブロン自身と成長し、一緒にレガシーを「built(築き上げる)」生涯のパートナーであるかを見極めていた。

特にレブロンが「Brother」と呼ぶ昔からの親友3人は、レブロンがNBAデビューする前からオン・オフコート両面でレブロンを全面的に支えた。Marverick Carter(レブロンの子供時代からの友人で、レブロンのオフコートビジネス全般を支え全幅の信頼を置かれている経営者・アントレプレナー)、Randy Mims(片親だったレブロンの父親代わりのような存在で、レブロンのロジ周り全般を担当)、Rich Paul(Kluch Sports社長。高校時代からの友人で、レブロンのエージェントとして選手契約やチーム・GMとの交渉を担当)、そこにレブロンが加わった4名が、彼らの頭文字を取って「LRMRマーケティング」というLebon Inc.の礎となる会社を作ったのだから、全ての物語の始まりはここにある。

(写真は左からRandy Mims、レブロン、Marverick Carter、Rich Paul)


また、レブロンの数々の投資事業の全ては、Paul Wachter(元判事の著名投資家でレブロンのビジネスパートナー)がいなければ実現しなかった。上記エンドースメント以外のレブロンの投資事業は全てWachterが関わっている。本の中でも、「Wachterをビジネスパートナーとして選んだ事が一番正しい判断だった」と言っている。このWachterを通して、ハリウッドの世界や投資家コミュニティ、またごくわずかしか許されないビリオネア達のネットワークに入り込む事が可能となり、大手映画会社や放送局と多くの作品を手掛け、数々の投資案件が舞い込むようになった。

その2:ビジネスに対する考え方

この本でも何度も「I want to build something」というレブロンの引用があるが、彼のビジネスに対する考え方として、自分で何かを「築く」事が一番大事で、パートナー企業を選ぶ時も、金額の多寡ではなく、レブロンがその企業と「永続的な関係・繋がりを持てるか」かどうかが判断基準だと言っている。ビジネスの世界を何も知らなかった18歳の新人時代に、リーボックからUS$100M以上(7年)のシューズ契約を提示されても、それよりUS$30Mも低い提示だったナイキを選択したのはその理由で、今やナイキとは生涯契約を締結しているのでこの判断は「Best Decision」だとレブロン自身も言っている。(事実、Reebokはレブロン獲得失敗の数年後にアディダスに吸収されバッシュ事業をかなり縮小している)

またそれは、単なるエンドースメント契約から得られるコミッションビジネスで数千万・数億円を稼ぐ事より、企業のオーナーシップを得る方が自分で「築いている」という実感が持てるのと同時に、数十億円レベルでのリターンも見込める。Blaze Pizzaの投資で数十ミリオンドルの儲けを出した時に、レブロン自身もこれが自分かやりたかったこと(築く事)だと語っている。レブロンであるという強みを活かして、自身のアセットと引き換えに投資事業を行う、これまでビジネス教科書にも乗っていなかったようなローリスクハイリターンの画期的なビジネスモデルを確立させた事が、ビリオネアになった一番の理由だろう。

その3:普通じゃない天性のセンス

これはもう説明し難いのだが、3つ目はレブロンにはスポーツにおいても、ビジネスにおいても先天的なセンス・感がメチャクチャ優れていたという事じゃないかと思う。上記2つの理由にも書いているが、お金に困って日々の生活もままならない片親育ちだった18歳が、US$100M以上を保証するリーボックの契約提示を「普通は」断らないだろうし、新人時代から選手契約からいくつものエンドースメント契約を取り仕切った重鎮エージェントを切って「普通は」友人にエージェント業を任せないだろうし(業界から当時はかなり批判された)、マクドナルドから提示されたUS$15M保証のエンドース契約を断って、名も知らないスタートアップピザチェーン(Blaze Pizza)をパートナーに「普通は」選ばないだろうし、多少の失敗(というかレッスン)はあったものの、レブロンのビジネス判断・決断はほぼ成功していると言っていい。このあたりの天性のセンスも、Lebron Inc.を大きくした要因と言って間違いない。

【最近発表された「Forbes Sports Money Index」という、スポーツチームやエージェント、アスリート、スポンサーを含めた総合的なマネーランキング(どれだけ稼いでいるかだけでなく、どれだけ世界的に認知や影響力を与えているかを計算した総合指数)で、NikeとPepsiに次いで個人アスリートトップの3位にランクインされたレブロン】


アスリートでありながら事業家、投資家、経営者、慈善事業家、メディアプロデューサー、俳優、教育者、指導者、父親であるレブロン。最近はプロアスリートの枠を超えて活躍する人がかなり増えてきているが、レブロンほど多様な顔を持つ現役プロアスリートはまずいないのではないか。現役時代でこれほどまでにビジネスで成功したレブロンが、現役引退後にどのような道に進むのか(スポーツチームオーナー?それとも政界進出か??)、本当に楽しみで仕方がないのである。

以上。

DJ KIM
Twitterアカウント:@DJ_kim_NY

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1985年�神奈川県生まれ/茅ヶ崎市出身��/スポーツマーケター�/広告会社勤務/ニューヨーク在住/�海とバスケをこよなく愛する。��好きなスラムダンクのシーンは「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本の時か?オレは………オレは今なんだよ!」
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