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大草原の小さなトイレ

トイレあれこれ

『日本の災害避難所のトイレ』

 今、災害が起きたとき、まず最初に避難所に運ばれてくるトイレは、イベント会場などでもおなじみの和式の「ポットン」トイレだとおもいます。随分と日本も災害支援も変わってきていますから、トイレも変わってきてるのではないかと期待したいところです。
以下は、2016年熊本地震の時の小学校にあった避難所にあったトイレの話です。

避難所となった小学校に設置された避難者用トイレ

 このトイレは、多くの被災者を悩ませました。被災後の困難な避難生活に加えて、日常では使い慣れないこのトイレを使うことが被災者にとってどれほどのストレスであったことか・・・。子どもやお年寄りは便器の横に新聞紙を敷いて使用していらっしゃいました。新聞紙だってそんなに簡単に手に入るわけではありません。事実、この段差で転倒したお年寄りの救急搬送もありました。妊婦さんだったら、とても使えるものではありません。手すりもなかったから。
 このようにどうしても和式トイレが使えない人がいます。そのような方たちのために設置されたのがラップポンです。(以下写真参照)これは袋の中の凝固剤で汚物を固めて、一般ごみとして処理できるというものでした。しかし、非日常の中で、凝固剤を用を足す前に入れて、その後、ごみ箱まで汚物を捨てるという作業を確実に行うことは、お年寄りにはかなりハードルが高く、ごみ処理業者の方にかなりの負担をおかけしたこともありました。

避難所に設置されたラップポン

 このように避難所のトイレは、被災者を日常からかなりかけ離れた生活を強いる大きな要因となっていました。
加えて、トイレが感染症の温床となることもあり、公共のトイレの衛生状態をいかに清潔に保つかということも避難所運営としては大切なことでした。

 学校再開前を目前に水が出なかった小学校に児童用の仮設洋式トイレが運ばれてきた時は、不便な学校生活を送らざるを得ない子どもたちのことを思うとかなり心配しました。しかし、幸いなことに、学校再開の数時間前に、上下水道が復旧し、先生方とともに胸をなでおろしました。
 小学校が再開しても避難者用の仮設和式トイレは避難所となった体育館の横に残りました。そして、2022年の現在、その跡には、マンホールトイレがいつでも設置できるように整備されています。災害から学んだ大きな教訓が生かされています。

『ハンガリー、ウクライナ避難者施設のトイレ』

 今年3月、私は、ハンガリーとウクライナの国境でウクライナからの避難者の方々のための支援活動を行いました。(支援活動の様子についてはこちらをご覧ください。)その避難所があるベルグシュラーニ、Help center の仮設トイレです。そうです。仮設なのに水洗トイレ! 日本の災害支援、まだまだ改善が必要なことを教えてくれます。


『大草原の小さなトイレ』

 最後にこれまでで「最高」なトイレについてご紹介したいと思います。冒頭のタイトルの写真、これはモンゴル、ウブルハンガイ県。用をたしながら、見た風景です。あまりに美しく思わず写真を撮りました。

 AMDAのプロジェクトで子どもの眼科健診をこの地でしました。首都ウランバートルから車で7~8時間。時には、数えきれないほどの羊に道を塞がれ、時には凸凹の道にタイヤを取られ左右に大きく揺れるバスの壁に頭を打ち付け、大地の向こうに広がる地平線を見ながらただひたすらに草原の中を走りました。この前の年にも同じようにこのウブルハンガイ県、グチンウス村にある小学校に眼科健診にきましたが、トイレが「ポットン」トイレなのです。それも深い深い穴に板が二枚左右に渡してあるだけ。トイレットペーパーを落とすと、かなり長い時間、揺れながら落ちていきます。ここに落ちたら命はない!とすぐに直感でわかります。

 和式トイレと同じ感覚で、ドアを後ろに壁を前にして恐る恐る足元を確認しながら、持つところを探しました。でもそんなものない・・・・。すべての行動をゆっくりゆっくり。終わって出てくる時には、これがまた恐怖。ドアが後ろにあるから薄暗い。その中をゆっくり足を後ろに。落ちたらどうしようという恐怖・・・・。
AMDAの代表に話したら、「ドアの方を向いてすればいいんだ!」と。なんと!つまり反対を向いてトイレする?!そんな発想はなかったな・・・・。

 でも本当に怖がったのは実は、AMDAの代表で、トイレが「ポットン」だったら来年は行きたくないなぁ・・・と。そうモンゴル側に伝えた結果、モンゴル側が考えたのが、1mぐらいの深さで直系1mぐらいの穴を大草原の真ん中に掘って、周りを1mぐらいまでの高さでビニールシートで3方を囲むという正に「大草原の小さなトイレ」!。 最初は他の人たちの目もあって、「こんなの無理!」と思ったけど、必要に迫られて使用しました。次の朝、朝日と真っ正面から対面。これこそまさに”Nature is calling”

 何気ない日常をおくっていると、トイレは、自分の毎日の生活の質を左右することを忘れがちですよね。毎日の生活=人生です。

『おまけ』

 大草原の小さなトイレの後、プロジェクトに関わる仲間たちとの朝食はまさにオープンカフェ!普通のパンと普通のコーヒーが極上の味に変わった最高のひと時でした。

モンゴル大草原での朝食

そして、振り向いたら両端が地平線と接している虹(動画をご覧ください)

本当に自然の中で生きているという貴重な感覚。

私の母は、虹の根元に行けたら、虹を渡れるって言ってたな・・・。


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