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いつかどこかで…

『なんで、なんで…』

ウクライナ国内外の避難者活動の間、私の頭の中でぐるぐるしていた言葉、

なんで、なんで?

なんで、なんでやめられないの?

これまで、
2016年、熊本地震の時、2回の震度7の後、立て続けに起きる震度5クラスの余震、ああああああああ!天よ、もうやめてぇ~!

2018年、天に海があるのかと思うくらいの豪雨、あぁぁぁぁ!天よ、これ以上の雨を降らさないで~!

そう、天災は、どれほど願っても人は止められない。

でも、ウクライナで起こっていること、これは人災!
だからやめようと思ったらいつでもやめられる。そう、今すぐにでも!

ハンガリー側のウクライナとの国境、ベルグシュラーニに避難してくる家族。ほとんどがお母さんと小さなこどもたち。そしてお年寄り。そう、お父さんはウクライナ国内に残ってる。18歳から60歳までの男性は国を守るために国から出られないから。

まるで遠足に来ているような幼気なこども、ミニカーを大事そうに持ってる。避難するとき、たくさんのおもちゃの中から選んで握ってきたんだろうな・・・。きっとこの子、何も状況はわかっていないのだろうな・・・。
よかった・・・。誰も悲しい思い出は残したくないよね。

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 避難所の入口で仕事をしていたら、チョコレートを持ってきてくれる男の子。冒頭の写真の女の子の弟くん。えっつ、私にくれるの?食べたかったんじゃないの?驚いている私の手に、次から次に避難所の中からチョコレートを持ってきてくれる。私は幼いころよく父に言われてたな・・・・。「一人占めするな。」って。この子のお父さんもきっと、だれかと分かち合うことを教えてくれてたのかな・・・。お父さんに会いたいよね。こんなに小さくても、日本から遠く離れたこの地で、私に亡くなった父を思い出させるなんて・・。

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 しばらくしたら、お母さんの両手には大きな荷物。その横で、ちょこちょこ走り回る弟くん。両手にチョコは持ってない。さっきのチョコ、返そうか?お姉ちゃんは、言葉は通じないのにハグしてきた。「バイバイ~!」と笑顔で手を振ってくれた。数時間前に来たばかり。仲良くなれたのに、もう行ってしまうの?

どうかどうか、元気でいてね、
幸せであれ、と願うしかない、さよならの瞬間。


もう少しだけでも長くいてくれたら、私にももっと何かできることはあったかもしれないのに・・・。
災害支援と違うのは、
ここに来る避難者の方々と長く一緒にはいられないこと・・・・。。

 このベルグシュラーニ、ヘルプセンターは、ウクライナ国境から約800M。歩いてでも国境を越えられる。ここに来るまでに首都キーウから1か月以上かけて歩いてきた人もいた。靴はボロボロ、手には小さな傷がいっぱい、棘が刺さっている人もいた。その人は、奥さんと娘さんがドイツで待っているとのこと。最初は写真撮らないでと言ってたけど、別れ際には、記念写真を撮ってほしい、私は、日本の文化と伝統を尊敬していると言って、すぐに次の目的地に向かって行った。

私がそこにいた頃、一番寒かった夜は、-6度。生死をかけた時、人は寒さを感じないのだろうか・・・・。突然降りかかってきたあまりにも理不尽な日々、彼らもきっと、「なんで、なんで?」と思っているに違いない。

おまけ

『あぁ~、うまっ!』

 ここベルグシュラーニで、ウクライナの国境を越えてきた人たちを迎えるのは、ハンガリーの地元の人たちに加えて周辺諸国のボランティアの人たち。フランスのキッチンカーでは、24時間体制で温かいコーヒーやサンドイッチ、(ベジタリアン用もある)お菓子などを提供している。ある程度顔なじみになると、コーヒーの好みもわかってくれて、私にはミルクを入れてくれる。言葉は通じなくても温かい笑顔で避難者を迎えている。 
 それから、地元の人たちがボランティアでたくさん入っている。支援物資も自分のところにあったものやわざわざ買って持ち寄ってた。この光景は首都ブタペストの西駅でも、その他の町でもみかけた。ハンガリーは、シリア難民はじめこれまで多くの難民を受け入れていると聞いた。
日本人は果たして外国からの避難者をこのように受け入れることができるだろうか・・・・。

ここで忘れられない味がある。冷え切った身体に沁みるハンガリー伝統のスープ、グヤーシュ。パプリカや玉ねぎ、ジャガイモ、そして牛肉。森の中からでてきたような大きなおじさんが大きな窯で時間をかけながら、ゆっくりゆっくり、でかいお玉でぐるぐる煮込んでる。私はおじさんがこのグヤーシュの鍋の中から、骨付きの大きな牛肉の塊を取り上げて、先が鋭く光るナイフで肉をスープの中にそぎ落とすのを横で見てた。おじさんは、器にふくよかな手でスープを注いで、私に渡してくれた。おじさんの目が「うまいぞぉ~」って語ってた。

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うわぁぁぁlなんだこれは・・・。うまっ! 
本当に驚きのおいしさを味わった時、きっと人は、「あぁ、おいしい」より、「うまっ!」と心で叫ぶんだと思う。そしてこれに添えられるのは、近所のおばちゃんの手作りパン。ちょっと固め。小麦の匂いが優しい。これはグヤーシュに絶対合う。食べる前からわかる。
あぁ、なんてあたたかいんだ・・・・。

冒頭の子どもたちもこのスープ、食べたかな・・・・。

写真の女の子、別れる間際に、「元気でいてね」と言った私に、「サーシャ」と言った。きっと彼女の名前かな・・・・。
サーシャ、いつかどこかでまた会えたらいいな・・・。その時は、弟くんにお返しのチョコ持っていくから・・・。

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