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人を説得するとはどういうことか/マーケターにおすすめのマーケ本以外#1


私はマーケター向けのメディアの編集者をしています。同時に大学院で政治学、組織論、メディア論などを勉強し、この春修士課程を修了しました。マーケターや経営者の方々に取材したり、ビジネス書を読んだりすると同時に、学術論文や学術書にも触れるなかで、タイトルに「マーケティング」という言葉が入っている本や雑誌以外にも、マーケターが読むと面白く感じるコンテンツがあるのではないかと思うようになりました。それらを少しずつ紹介していくのがこのnoteです。

『創造的論文の書き方』伊丹敬之著/有斐閣

今日取り上げるのは、『創造的論文の書き方』。経営学の先生の本です。手元に置いて何度も読み返すタイプの本だと思います。

社会科学の論文の書き方を学ぶために読んだのですが、人になにかを論理的に伝えるとはどういうことか、納得してもらうとはどういうことか、ということについて、深く考える機会になりました。コミュニケーションの仕方は生活の中でなんとなく身に着けていくものですが、だからこそ「よいコミュニケーションとは何か」を言語化するのは難しく、上達のための訓練も難しい。それに気づかせてくれたうえで、ではどうすればよいのかを教えてくれたのがこの本です。

たとえば本書では、ある理論的命題が現実に妥当していることを他人に説得する方法(=説得の方法)を3つに分類しています(p.45)。

①データをものすごくたくさん集めて「大量データがあるから信じてください」と訴える
②公理論的な説得。誰しもが認めそうな理論的な前提を置き、その全手の上に演繹理論を積み重ねていくと、この理論的命題が正しいということになる、と論理の展開をきちんと説明する。論理操作の複雑さで信用してもらう。
③データの切れ端を少しづつ集めて、それらを論理でつないでいくと、だいたいこういう絵になる、だからデータの切れ端と論理の全体の合わせ技で説得的と思ってくれ、という方法。

「説得に必要な要素」をこんなふうに整理できると、ぐっと見通しが良くなりますよね。自分は3つのうちどの方法で人を説得しようとするのかあらかじめ意識することで、どんな材料を集め、どんな準備をすればよいかロードマップがひけます。

他にも、良い研究とはなにか良い文章とはどんなものか論理的であるとはどういうことか、といった骨太な問いに対して明快な回答を提示しており、大学院生が読んでもビジネスパーソンが読んでも、面白い本だと思います。

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