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私の骨には棘がある

お盆の頃から右足首が痛みだし、とうとう腫れぼったくなったので整形外科を受診した。
どうせ捻挫だろうから日にちが薬、わざわざ病院に行かなくても…
と思っていたが、夫がもしかしたら骨が折れているかも知れないから念のため行けと言ったのだ。

整形に行っても「老化です」と言われて、痛み止めとロキソニンテープを処方されるだけだわよ。

車で5分くらいのところに整形外科の医院がある。
子育てのころは何かとお世話になった。
自分もかかったことがある。

真夏に庭にビニールプールを出して、長男と近所の幼馴染とを行水させていた。
日よけのパラソルが突風に飛ばされ、傘のてっぺんの硬いところが私の眉間の少し左を直撃した。

目から火が出る、文字通りの痛みだった。
たん瘤ができたけれど、アザにもならないし育児に忙殺されて放っていた。

秋も深まった頃に、ふと眉間の少し左側が少し膨らんで影を作っているのに気づいた。
それまで気にも留めなかったのに、気が付いてしまうとどうにも気がかりになる。

私は近所の整形外科を受診した。
私より二十ほど年上の医師は、打撲してすぐに治療をするべきだったと言った。

このコブは治りませんよ…
まあ、もうそんなこと(顔のコブ)いいでしょう、結婚前の娘さんじゃないのだし※概ね

と言った。
それはそうかもしれないが、ちょっと傷ついた。

そんな事があったせいか、それ以降は足が遠のいた。

数年後、その先生は酔っ払って自転車に乗っていて、側溝に落ちて身体が不自由になったと噂に聞いた。
そんな噂はデマに違いないと信じていなかったが、どうも本当だったらしい。
間も無く医院はたたまれ、建物と看板は残った。

それがつい先ごろ、新装開業したのである。
壁は白亜に塗り替えられぐっとオシャレになった。
webページで確認すると、医師の名前は前の先生と同じ苗字だった。
娘さんがいるとは聞いていたが、医師のしかも整形外科医の息子さんがいらっしゃるとは知らなんだ。
それにしても、大先生の事故からゆうに十年以上は過ぎている。
再開までずいぶんと長い時を経たのだなあ…
と感慨深い。

どうせ捻挫だと思っているので、近いにこしたことはないと受診した。
もうあの失言については時効だ。
大先生もすでに亡くなっているのだし。

なかなかの賑わい、老人がほとんどだが近くに県立高校があるせいか体育会系の高校生の姿も多い。

診察室で医師と初顔合わせ、まだ二十代と思しき、今風のイケメンだった。
大先生のお孫さんなのかもしれない。

レントゲン写真を前に、説明するところによると足首の関節にコブができている…

私はすかさず

老化ですか?
とたずねた。

いや、老化とは限りません。
昔の捻挫や骨折が原因かもしれません。

さまざまな不調で受診をすると、異口同音に

老化です。

と答えられる。
老化は原因ではないだろうと私は思う。
老化して何らかの不都合が生じてこの症状ではないのか?
私が知りたいのは「何らかの不都合」の部分で、不都合が改善できるならするし、取り去れるなら取り去りたい。

しかし「老化です」には食い下がれないインパクトがある。
有無を言わさず受け入れなさいという、あやすような突き放され感がある。

苦笑いして「そうですね…」
と答えざるを得ない。

処方されたのは最新の貼り薬で、効果が強く副作用があるので一日二枚までの制限があると薬剤師に説明された。
ネットで調べると、関節症専用の貼り薬だそう。
知らぬ間にこんな薬が開発されていたんだなあ…

痛みを抑えながら筋力トレをして、ウォーキングも続けて良いのだそう。

医療も日進月歩だとつくづく思った。


※ヘッダー画像は更地に咲いている朝顔です。

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