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「地域の産品」を「通販」で買うのは「誰」か?★自治体の方々と、これからの地域事業者の支援を考えたい

株式会社ただいまの佐藤と申します。これまで10年以上、地域の事業者さんの支援を手がけてきました。支援にあたっては、日本各地の自治体や、地域の金融機関さんや支援機関の方々とご一緒させていただく機会が多く、千葉、長野、京都、広島、福岡、長崎などで主に活動しています。

しばらくご無沙汰しておりました。あらためて、いろんなテーマから地域の事業者支援について考えてみたいと思います。

今回のテーマは、「通販(通信販売)」です。

新型コロナ禍が日々の暮らしや仕事に大きく影響するようになり、もう1年が過ぎようとしています。みなさまも体感されているとおり、消費のスタイルも大きく変わりました。そんな中で利用頻度がぐんと上がり、利用シーンも広がったのが、通販ではないでしょうか。

ショッピングサイトを立ち上げれば、本当に売れるのか?

ITの目覚ましい進化により、今やショッピングサイトは簡単・無料でどなたでも立ち上げることができるようになりました。それに対応して、写真の撮り方、動画の編集、キャッチコピーの書き方などのノウハウもネット上で簡単に学べるようにもなりました。私の会社も実は日本通信販売協会(JADMA)の会員ですが、ネット上に数多見られるノウハウを眺めまわしても、私にはいまひとつピンとこない感がありました。前職の百貨店での販売促進やECを通じた「地域の名産品を売る」経験を通してみた時、どれもどこかしっくりこない。なぜか。

そこで、あらためて「古典」をこのタイミングで読み直しました。

2004年初版で、日進月歩の通販業界では古典と言える本でしょう。ですが、その中身には普遍のヒントが詰まっています。「通販生活」を創刊された、カタログハウスの創業者・斎藤駿さんの著書です。

『なぜ通販で買うのですか (集英社新書) 』

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商品の販売は、単なる「売り込み」や「値引き(もしくは還元ポイントを上げる)」ことではないことを教えてくれた1冊です。。リアルであろうが、ネットであろうが、消費者の生活に隠れている「欲求」を観察し、「買いたい」と潜在的に思っているお客様に向けて、ていねいに提案することがすべての基本であることを教えてくれます。

かつての通信販売にはさまざまなトラブルが多く、業界全体でその問題や課題解決に取り組んでこられた歴史があるとうかがっています。そんな中で「通販生活」は、どうやって数々のヒット商品を生み出し得たのか。その活きたノウハウを、通販の勢いが増しているこのタイミングにこそ、読んでいただきたいとあらためて思いました。

もちろん、17年前の出版なので、背景となるIT技術は今とは異なりますが、現在のデジタル技術やSNSを活用するための「前提」となるヒントは満載です(ひとつひとつの商品が話題となり売れていく過程にもドラマがあり、物語としても非常に面白いので、一気に読めてしまいます)。

たくさんのヒントの中で最も役立つことをひとつあげるとすれば、それは、消費行動の性質を「自己保存」と「自己顕示」の2種類に整理している点です。

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本書では、「自己保存」的消費=身体の便利を生み出す消費、「自己顕示」的消費=他人とは違う自分を確認するための消費、と、消費行動を二つに分けて考えています。商品を販売する視点で見れば、「自分の命を守り、健康を維持したいという欲求を満たす自己保存的消費」「他よりも自分をよく見せたい、違うと思わせたい欲求を満たす自己顕示的消費」となると思います。

東日本大震災を経験し、新型コロナ禍にある今の消費者心理を考えると、このタイミングにおいては、3つ目の消費行動として「困っている人を購入を通じて助けるための社会貢献型消費」が加わってくるのだと思います。つまり「お得」「便利」だけでない消費行動の存在を、地域産品を販売する際には特に意識する必要があると思うのです。

以前も紹介しましたが、弊社がこれまで3年間支援してきた長崎市の地域商社活動では、最終年度であった今年、この3つ目の社会貢献型消費を意識して、社会的意義を感じながら地域産品を積極的に買っていただく販売方法を探りました。もちろんネットショッピング(EC)にもチャレンジしましたが、こちらはECだからと一般的に期待されるような目覚ましい成果には至りませんでした。

その地域産品を売らなければ、地域の事業者の苦境は続く。そんな中で1点でも多く販売先を探し売ってみせるのが、地域商社の役割です。その中で、長崎のジョイフルサンアルファ、FデザインNAGASAKIと取り組んだのが、以前、西日本新聞さんにも記事にしていただいた「オンライン居酒屋」です。

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主に大手ICT企業や、大手総合不動産会社の「福利厚生」で、今年度、想定を超えてかなりの数をご利用いただきました。福利厚生をご担当される部署が社員へ「オンライン居酒屋」を告知してくださったでなく、利用にあたって補助もしていただいたケースもありました。なぜでしょうか。

企業としては、社員のみなさんに、できる限り新型コロナ禍のリスクを避け、安全に仕事をしていただく必要があります。またこのご時世でも、収益が確保できていれば、できる限り自社とつながりがある地域を支援したいと考えます。前者はまさに「自己保存」型消費、後者は「社会貢献」型消費です。その結果、その企業の取り組みは他社と差別化される。場合によっては所属する社員は、自社の取り組みを面白いと感じ、SNSなどで発信するかもしれない。とすれば、これは「自己顕示」型消費です。

資本力があれば、ウェブ広告を大量に投下し、レスポンス率を上げなから売上を確保する方法もありかもしれません。ですが、弊社の支援先はそんな企業ばかりではありません。自社の商品を、きちんと消費ニーズにあてはめて、確実に販売額を確保することが必要です。

上記は弊社の支援のほんの一例です。引き続き、新型コロナ禍で変わること、変わらないことを見極め、生活者や企業それぞれの消費のニーズの変化にあわせて、地域産品を「欲しがられる商品」として販路拡大する活動を継続したいと思います。

今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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