心理学の知見:もしロボット僧侶が「般若心経」の法話をしたら
ロボット僧侶はすでに日本のお寺で導入をされています。
京都の高台寺では、高さ195cmのロボット僧侶が「般若心経」の法話を説いているのをご存じでしょうか。
アルミ製で、顔などはシリコンで覆われ、人間のように頭や胴体を動かすことができます。
さらに、プロジェクションマッピングを駆使し、スクリーンに映像を投影しながらのダイナミックな法話です。
BBCなど海外のメディアでも取り上げられ話題になりました。
さて、ロボット僧侶の法話力は人間僧侶と比べて、いかほどなのでしょうか?早速、世界の心理学者がこの問いに取り組んでいます。
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京都大学、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院、国立シンガポール大学らの研究グループは、6週間に渡り高台寺に訪れた参拝者398人を調査した。
調査
参拝者は、ロボット僧侶の法話か、人間僧侶の法話のいずれかを聞いた。
調査に参加してくれた参拝者には、謝礼として1,000円を支払った。その際、そのお金をお寺にお布施をしてもよいと伝え、どれくらいの参拝者がお布施するかを調べた。
結果
ロボット僧侶の話を聞いた参拝者の68%がお布施をしたのに対し、人間僧侶の参拝者の80%がお布施をした。
人間僧侶の話を聞いた参拝者の方がお布施をしていた。
その理由を調べると、人間僧侶の方が「信仰心の高いロールモデルとして行動している」「教えを守り、他人を傷つけていない」「教えを信じている」と思われていたからであった。
逆に、ロボット僧侶は教えを体現をしていないと思われ、お布施が減っていた。
シンガポールの道教のお寺で同じような調査を行ったところ、同様な結果となった。
結論
AIやロボットで布教しようとすると、宗教心が弱くなることが示唆された。
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この研究によれば、ロボット僧侶より人間僧侶の法話に分があるようです。めずらしく、機械ではなく人間に軍配が上がりました。
ここから、人間がAIや機械に置き換えられにくい分野のヒントが見えてきそうですね。
僕たちは、教えそのものの情報だけでなく、誰が伝え手なのかも含めて、楽しんでいると言えます。
そして、伝え手が教えを体現しているように見えるかどうか、信用を得られそうかどうか。ここが大事なポイントになるわけです。今のところ、このポイントに関しては人間の方が得意そうです。
Jackson, J. C., Yam, K. C., Tang, P. M., Liu, T., & Shariff, A. (2023). Exposure to robot preachers undermines religious commitment. Journal of Experimental Psychology: General.
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