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ヴァイオリンで育った人間がチェロに辿り着いた話【後編】

【前編】の続きです。
チェロは海を渡った向こうの全く別の世界でした。何が違うのか?

・右手のボウイング
ヴァイオリン、ヴィオラでは自分の右側に向かって高い音に移弦します。
チェロの場合は自分の右側に向かって低い弦に移弦します。
音程の上昇、下降の感覚が逆なのでココで混乱します。
またヴァイオリン、ヴィオラでは低い弦から高い弦へのアルペジオは
弓を引き降ろす感覚ですが、チェロの場合は跳ね上げる感覚になります。
また弾く位置ですが、ヴァイオリン、ヴィオラでは
駒から数mm~数cmあたりですが、チェロでこのあたりの音色は
かなり厳しいものがあります。
弦が長い分、弾く位置も若干駒から離す必要が有ります。

・左手のフィンガリング
ヴァイオリン、ヴィオラは1本の指で短2度分を担当します。
開放弦の位置から全音間隔で人差し指を置いて開放の半音上まで担当。
そこから薬指が短3度の位置に起き、中指は薬指の半音下全音下まで担当
薬指は半音上まで担当。こんな感じで一つの指で短2度分を担当します。
しかしチェロは1本の指で一つの音を担当し半音間隔で各指を配置しますが
人差し指だけは短2度を担当します。
人差し指を半音分ヒョイと下に伸ばします。
この運指を拡張形と呼びますが、低い音への拡張はコレで良いのですが
高い音への拡張の場合、人差し指を残して残りの3本の指を
半音分ずらします。この押さえ方にかなり混乱します。
ポジションの数え方も異なり、半音ごとにポジションが上がります。
全く文化が違うのです。
更に左手のフォームもチェロでは親指をネックの真裏に置きます。
ヴァイオリン、ヴィオラの間隔でネック横に添えたり
親指が出たりすると弦が太く指板への距離も遠いので
しっかり押弦できません。

・ヘ音記号
私は特殊な楽譜の読み方をするのですがそれでもヘ音記号への対応は
なかなか難しいです。
何が難しいかと言うとヴァイオリンとヴィオラは開放弦の音が
楽譜の線と線の間に位置しますがチェロは楽譜の線の上に位置します。
私的にはこれが偶数と奇数が入れ替わった世界にいるような気分になり
混乱するのです。
更にポジションの数え方やフィンガリングの考え方の違いが
ヘ音記号を読む作業を更に複雑にします。

・体力を使う
これは私がチェロに必要な筋力がまだ育っていないからだと思いますが
ヴァイオリン、チェロであれば数時間ぶっ通しで弾いても
たいして疲れないのですが
チェロだと20分も弾くとどっと疲れます。
そんなにチカラが必要という訳でもないんですが
カラダの使い方が違うんでしょうね。
楽器を顎に挟んで両肘を案山子の様に挙げた姿勢を続ける
ヴァイオリン、ヴィオラの方が身体的負担は高いハズなんですけどね。

チェロとヴィオラはオクターブ違いの同じ調弦ですから
ヴィオラ経験者ならすんなりチェロへ移行できるのかといったら
それはとんでもない誤解です。
ヴィオラでのスキルはほぼ役に立たないと思ったほうが良いです。

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