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クラシック音楽の歴史を未来に伝えていくために。挑戦を続けるピアニスト、米津真浩の想いとは。

演奏会やレッスン、ライブ配信など多彩な活動にチャレンジするピアニスト米津真浩。8月からはYouTubeでのライブ配信を毎日行っている。

音楽をより多くの人に届けるべく、米津さんが取り組んでいることについてインタビューを行いました。
(インタビュワー:道下京子)

――― いまの活動についてお聞かせください。

クラシック音楽のピアニストとして活動しています。演奏とレッスンを音楽活動の主軸としています。
それから、17LIVE(ワンセブンライブ)というアプリで、インターネットの生配信を続けてきました。



――― 17LIVEって?

生放送しかできないアプリです。
コロナ禍で、その年の演奏会はすべてキャンセルになりました。演奏会を開催できない間も、音楽をどうにかしてお届けできないかと考え、生配信をしてみようと思って始めました。
リクエストに応えて自分の持ち曲を演奏したり、持ち曲ではなくてもチャレンジして弾いてみたり、それから練習しているところをたまに配信したりと、演奏会では見ることのできない部分をお伝えしたいと考え、約2年間ほぼ毎日やっていました。


――― ライヴ配信なんですね。

音楽は時間芸術ですので、この先いったい何が起こるのかというところに僕は魅力を感じます。だから生放送の方が面白いと思いました。レッスンや自分の練習をしながら動画を作るのは、時間的に厳しいところがありました。ですから、僕は生配信からスタートしました。
作品としてYouTubeにアップするとなると、きちんとした形でアップしようとどんどん欲が出てきます。作品一つひとつをしっかりと創り上げてYouTubeにアップする…それを短期間に次々と行なう自信もなかったのです。


――― リスナーの反応はわかるのですか?

リスナーは、文字でコメントを送ってくださいます。マニアックなリスナーからは、絶対に弾けないだろうと言わんばかりに難しいリクエストもいただきます。僕は負けず嫌いだから、それにチャレンジします(笑)。


――― まるで会話のようなやりとりですね。

まさに会話をしながらという感じです。
コロナ禍で演奏会ができない時期もありましたけれど、そういった意味で、コロナ禍前よりも、聴いてくださるお客さまとコミュニケーションをとる機会が増え、お客さまとの距離もとても近くなったような気がします。


――― 米津さんは、ピアノも教えていらっしゃいますね。

もともと東京音楽大学で講師として教えていましたが、その後イタリアのイモラ音楽院へ留学しました。教え始めて15年くらいになるかな。


――― 教えていて、良かったと思ったことを教えてください。

生徒さんから教えられることもたくさんあります。
まず、生徒さんがレッスンに持ってくる曲で、僕が知らなかった素晴らしい作品に出会えます。
あと、最近の出来事ですが、生徒さんに「趣味は何ですか?」と訊いたところ、「趣味はこれ(ピアノ)です」と答えが返ってきました。
ピアノを演奏することが、仕事という認識に完全に変わってしまい、音楽を純粋に楽しんでやってきた気持ちが、僕のなかでだんだん薄れてしまっていたのです。生徒さんのその言葉は、音楽を楽しむことを改めて教えてもらうきっかけにもなっています。

――― 音楽活動のなかで、ご自身の強みは何だと思いますか?

キャラクターでしょうか。親しみやすいと言っていただけるので、こんなやつでもクラシックをやっているんだなと思われているのではないでしょうか。お客さまとの距離がなくなり、一緒に何かを行なうことで、楽しさを改めて実感できることもあります。その距離の近づけ方が、僕は得意な方だと思います。


――― どんな活動を目指していきたいですか?

「演奏会やりたい」の一言です。
去年2月、稲垣さん(タクティカート代表取締役)のサポートのもとで会社を立ち上げ、ようやく自分で演奏会を引き受けることができる環境になりました。インターネットを通して僕を応援してくださるみなさまに、実際に会いに行くという形で全国各地で演奏できればいいなと思っています。
インターネットについても、17LIVEを卒業し、8月から完全にYouTubeへシフトしていく予定です。ただ、普通に動画を投稿する形ではなく、YouTubeという媒体で生配信を毎日やっていこうと考えています。

――― プログラムを組むとき、どんなことを考えていますか?

基本的に、僕が弾きたい曲とお客さまが聴きたい曲とが、わりとリンクしているのです。僕のやりたい曲は、聴きやすい音楽が多いので、自分が弾きたい曲を中心にプログラムを考えます。それから最近は、17LIVEでリクエストの多かった曲を中心にやることも多いですね。


――― それは、ファンのみなさまも楽しみですね。

でも、それだけではクラシックの新しい曲の紹介ができなくなってしまいます。
クラシック音楽は、古い音楽だと思われがちですが、いまもなお新しい音楽が生み出されています。そういう作品を紹介し、みなさまに知っていただくきっかけは、僕たち演奏家です。クラシック音楽の歴史を未来へつなげていく意味でも、新しい作品をとり上げることも考えて活動しています。



――― 今後、演奏したい作品があれば教えてください。

アレクサンダー・ローゼンブラットさんの作品です。彼とはFacebookでつながっています。彼の作品を取り上げて演奏していた時期もありました。それをローゼンブラットさんご本人が見て、喜んでくださいました。「ぜひ日本で広めてほしい」と公開されていない作品を送ってくださり、新曲の日本初演なども提案していただきました。彼の作品を演奏する機会を作っていければと思っています。
コンチェルトの新曲も送っていただいたので、タクティカート・オーケストラとの共演で初演できればいいのですが…(笑)。

ローゼンブラットの作品を演奏した公演。
次々と飛び出す多彩な演奏技法と超絶技巧に観客は釘付けに。


――― タクティカートとどんな活動をしていきたいですか?


タクティカートは、職業音楽家をサポートしてくれる会社だと僕は考えています。


芸術に特化し、音楽を極めている音楽家の生き方を僕は尊敬し、自分もそうありたいと思っています。でも、聴いていただく機会になかなか恵まれなかったり、有名なコンクールで入賞して来日した演奏家のコンサートでもお客さまが少ないことがあるのは、少し寂しいなと思っています。もっと多くのお客さまに集まっていただきたいとの思いも、僕のなかにはあります。

僕のなかで何かアイディアが浮かび、それを実行するとなった時、サポートしてくれる方も必要です。演奏会を開く場合、どこのプラットホームでチケットを販売すればいいか、まったくわからないわけです。音楽を仕事として生活したいけれど、どうしたらいいだろうと悩んでいる時もそうですが、そこに必要な物すべてをタクティカートは持っているように感じます。
プロの職業としてのアーティストを育成してくれる会社でもあるし、サポートしてくれる会社でもあると思います。

僕のなかでできることとできないことは、はっきりしています。苦手なところをタクティカートさんにお任せしようかなと、それくらい信頼しています。

米津真浩  Tadahiro Yonezu (Piano)

東京音楽大学器楽専攻ピアノ演奏家コースを卒業。同大学院を首席で修了。 在学中特待奨学生として在学。 2009年度、同大学ティーチングアシスタントを務める。大学院修了後、異例の若さで母校である東京音楽大学にて非常勤助手として後進の指導に当たり、その後、更なる研鑽を積むため、2013年・2014年度ローム・ミュージックファンデーション奨学生としてイタリアの名門イモラ音楽院へ留学。 2007年 第76回日本音楽コンクールピアノ部門 第2位入賞。岩谷賞(聴衆賞)を受賞。 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、千葉交響楽団、等様々なオーケストラと共演。
ソロ、室内楽等の演奏活動だけにとどまらず、クラシック音楽の普及をモットーに音源や記事の提供、TV出演、ボランティア活動、後進の指導、アウトリーチ活動にも積極的に力を注ぐ。
株式会社Avant所属アーティスト。
現在、人気アプリイチナナLIVEでほぼ毎日オンライン配信中。


【米津真浩 公式サイト】https://www.tadahiro-yonezu.com/ 
【SNSリンク】https://linktr.ee/yonezutadahiro 
【ピアノ教室】https://www.yonezu-piano.com

【YouTubeチャンネル】


【公演情報】

安嶋健太郎&米津真浩 ピアノデュオリサイタル
オールピアソラプログラム

<全3公演>
◯名古屋公演:三井住友海上しらかわホール
10月7日(金)18:00 開場 19:00 開演
◯札幌公演:札幌コンサートホール Kitara 小ホール
11月2日(水)18:00 開場 19:00 開演
◯東京公演:銀座・ヤマハホール
11月24日(木)18:00 開場 19:00 開演

出演:安嶋健太郎、米津真浩
曲目:ピアソラ:天使の復活、天使のミロンガ、アディオス・ノニーノ、ル・グランタンゴ 他
チケット: https://eplus.jp/sf/word/0000097729


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