青黒のチュセジョン&山本コンビから考える「中盤の底」~2021 J1 9節 柏vsガンバ~
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はじめに
今回は、柏レイソル対ガンバ大阪から、ガンバの攻撃にフォーカスして書いていきます。
約1ヶ月の中断期間を経て、4月3日からリーグ戦を再開したガンバ大阪。未だ得点は生まれておらず、中断前の神戸戦を含めると2分2敗の未勝利。シーズンオフに攻撃陣を補強し、タイトル奪還を目指して戦っているものの、結果が出ずに悩ましい現状を抱えています。
この記事では、攻撃が機能していない原因を「2CHの使い方」という視点から考えていきます。ボールを保持して攻撃的に戦いたいチームにとって、中盤の底の選手はチームの心臓であり、その役割は非常に重要です。ガンバが施していた工夫を分析、検証します。
※前線の動きにも問題は生じていますが、今回のテーマからは逸れるため、その点の分析は割愛しています。
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第1章 スコア&スタメン
柏レイソル 1 : 0 ガンバ大阪
76'大谷
ホームの柏は、3-4-2-1の配置。水曜日の鹿島戦からは染谷、神谷、細谷の3人が外れ、仲間、北爪、三丸がスタメンで起用されました。
アウェーのガンバは、中断前は4-3-3にチャレンジしていましたが、中断明けの広島戦からは馴染みのある4-4-2(4-2-2-2)へ回帰。この試合もその流れを汲んで4-4-2で臨みました。水曜日の福岡戦からは小野瀬、井手口、福田、宇佐美の4人が外れ、高尾、山本、チアゴアウベス、パトリックがスタメン入り。
第2章 初期配置と柏の概要
最初に、両チームの初期配置と、守備側の柏の基本スタンスを確認しておきます。
柏は前からプレッシングを行うことはほぼなく、自陣に5-4-1ブロックをセットして守備をスタート。後ろに9人を配置してスペースを消し、相手の勢いを吸収。CFクリスティアーノ(9)は攻め残りし、ボールを奪った時にはターゲットになります。SH江坂(10)、マテウスサヴィオ(11)もスプリントして前線へ押し上げてカウンターを狙います。
第3章 「中盤の底」へのガンバのアンサー
チュセジョン、山本の立ち位置
ガンバは、序盤こそロングボール多めで攻撃したものの、基本的にはボールを保持し、試合の主導権を握ることを好みます。4-4-2ベースでありながらも、左右非対称の4-1-5のような配置。左CH山本(29)が一列上がって右CHチュセジョン(6)と段差をつけ、ライン間の左ハーフスペースに立つ時間が多かったためです。山本の列上げに伴って左SH倉田(10)はタッチライン際にポジショニング。
一方で右サイドは、SHチアゴアウベス(32)がハーフスペースへ入り、状況に応じてSB高尾(27)が高い位置へ押し上げていきます。
上述したように、2CH山本(29)、チュセジョン(6)は並行に二人並ぶのではなく、山本が前に出て段差をつける形です。意図は、中盤の底を1枚にすることでチュセジョンにスペースを与え、組み立てを任せることでしょう。
福岡戦で証明したように、プレーメイクには抜群の安定感があり、サイドチェンジや縦パスをズバズバ通すことが出来る。そんな選手がチュセジョンです。
従って、任せる領域を広げることでチュセジョンがボールに触れる回数を増やし、ビルドアップを機能させたいと考えるのは合理的だと言えます。中盤を一人で賄えれば、前線により多くの選手を配置できる利点もあります。
しかし、ここで問いたいのは「山本の起用法」です。山本の良さもプレーメイク。その選手をライン間に配置すると、「出し手」側の選手のはずが「受け手」側に固定されてしまい個性が発揮されません。チュセジョンの良さは強調できる反面、山本の良さは消えてしまいます。
なぜ、2CHの縦関係と4-1-5は機能しなかったか
次に、2CHの縦関係に伴う4-1-5気味の配置が、チーム全体の攻撃にどのような影響を及ぼしていたのかを見ていきます。
結論から言うと、ガンバは「立ち位置が動的になっておらず、5-4-1に突っ込むだけになる」状態に陥りました。
山本(29)を高い位置に上げているため、前線に5人の選手がおり、4バックとACの4+1でビルドアップを行います。相手は5-4-1でスペースを消しているので、立ち位置を取っているだけで前線へのパスコースが生まれたり、出口を作れることはほぼありません。後方に存在しているスペースを相手を引っ張り出すことで前方に移し、前線の選手にスペースがある状態を作る工程から始める必要があります。
しかし、この試合のガンバはその工程がうまく行えませんでした。スペースを埋めて待ち構えている相手に対して無防備に突っ込んでいき、ボールロストを繰り返していました。
後ろの4+1には5-4-1ブロックを動かし、相手を引っ張り出すための仕組みがない。前線の5人には複数人で連携してフリーを作る(=出口を作る)仕組みがない。
自分達が立ち位置を取っているだけの棒人形であるため、当然相手は動かない。結果としてスペースが移り変わらないのでボールが進まない。結局、前線5人は前にいるだけになってしまい、後方から効果的にビルドアップを行って前線へボールを配球し、チャンスを作ったシーンはほとんどありませんでした。
ボールを前進させることが上手くできず、不用意なロストが増えてしまうと、カウンターを食らうリスクも高まります。4-1-5のような配置で前線5人が前に張っていて、中盤にはチュセジュン一人しかいないのであれば尚更です。「リスク管理」の観点から考えても、機能性は決して高くありません。
49'10~
上述した攻撃の機能不全が分かりやすく現れていた49'10~のシーンを紹介します。
自陣で5-4-1ブロックを組んだ相手に対して、ガンバは後方でボールを保持した状態。上図に示した通り、倉田(10)、山本(29)、宇佐美(33,ハーフタイムにLペレイラと交代)、パトリック(18)、チアゴアウベス(32)の5人に加え、SBの高尾(27)、黒川(24)も高い位置を取っている状態。昌子(3)がパトリックへロングフィードを送ります。
パトリック(18)へのロングボールを起点に倉田(10)や山本(29)が2ndボールを回収しにいくも、上手く繋がらず相手にクリアされる。前に出ていた黒川(24)の背後へボールが送り込まれ、この時右サイドにいたSHマテウスサヴィオ(11)が抜け出します。必要以上に前線へ人数をかけていたことに加え、5-4-1に対してロングボールで突っ込むという単調な攻撃になってしまったので、逆襲を食らいます。
後方に2CB昌子(3)、三浦(5)+ACチュセジョン(6)しか残っていなかったので、黒川(24)へのカバーリングはなし。左CB昌子(3)がタッチライン側へ引っ張り出されると昌子はドリブルで縦に突破されてしまい、エリア内にグラウンダーのクロスを入れられる。何とか三浦がクリアして難を逃れたものの、立ち位置が静的な状態で相手ブロックに突っ込んでしまったことで大ピンチを招きました。
ガンバは、単に立ち位置を取っているだけの、「静的」な立ち位置になってしまっていました。そうではなく、自分達の方から立ち位置を動かす(トリガーを引く)ことで相手を強制的に動かし、必然的にスペースが前方へ移り、前線の選手がフリーになる。ボールをゴールへ向かって運んでいくには、このような仕組みが用意された、「動的」な立ち位置であることがとても重要になります。
第4章 「中盤の底」への解決策
前章まで、2CHを縦関係にした4-1-5が機能しなかった原因について分析しました。問題点を指摘するだけでは無意味ですので、しっかりと解決策も提案します。
人選のバリエーションや、相手のシステムの多様さまで考慮すると話が広がり過ぎてしまうので、「vs柏の5-4-1、柏戦のスタメン」のシチュエーションに限定します。
上図の通り、基本配置は4-2-2-2。最初はチュセジョン(6)と山本(29)を並行に並べます。
4-2-2-2の立ち位置を取った上で、2CHチュセジョン(6)、山本(29)を動かします。ボールサイドのCH(上図ではチュセジョン(6))が2CB昌子(3)、三浦(5)の脇に降り、もう片方(同、山本(29))は中盤のど真ん中(相手CF+2CHの三角形の中点)に立つ。①相手SHを引っ張り出すトリガーと②中盤の組み立て役を設定。①に連動して、SBが高い位置に上がります。
①を設定することで立ち位置に移動が発生するので、相手SH(同、江坂(10))がボールに食いつくきっかけが生まれます。相手SHが食いつけば、相手SHの手前にあったスペースがその背後へ移るので、高い位置をとったSB(同、黒川(24))へのパスコースが生まれます。
また、直接的に相手SHが食いつかなくても中盤の真ん中に立っている②を経由するルートもあるので、①②を組み合わせれば誰かが食いつく可能性が高い。
このような形で「動的」な立ち位置になれば、ビルドアップの機能性が上がると同時に、チュセジョンと山本が入れ替わりながら中盤を担うので、二人の良さを両方活用できます。
これはあくまで一例ですが、2CHに段差をつけるアイデアをこのような形で若干修正すれば攻撃の質を高められるのではないかと思います。
おわりに
ここまで、ガンバの攻撃における「2CHの使い方」について分析してきました。攻撃において、常に中盤の底に2人の選手が並んでいる状態というのは、スペースを効率的に使うためにはあまり効果的ではありません。そのためチュセジョンと山本の立ち位置に段差をつけるアイデアはとても合理的です。
しかし、山本の起用法が「前線に配置する」という極端なものであったがために、立ち位置を取って終わりになってしまいビルドアップは機能しませんでした。
2CHに限らず、様々ポジションで様々な組み合わせが試されており、試行錯誤の最中であるガンバですので、機能的な組み合わせ、立ち位置の取り方が(出来るだけ早く)見つかることに期待しましょう。
※補足
ハーフタイムのレアンドロペレイラに代わっての宇佐美投入によって、前半より後半の方がボールがスムーズに繋がる傾向は見られました。宇佐美がパトリックと縦関係になり後方と前線の中継点の役割を果たしたからです。
しかしあくまで前線の選手の交代であり、ビルドアップの機能不全を解決することは最後まで出来ていませんでした。
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最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!
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