ライプツィヒ対ヘルタ_1

ライプツィヒ対ヘルタBSC 分析 ~レッドブル、翼は生えている。~ [2019年3月マンスリー分析④]

今回で最後となるライプツィヒ分析。4試合目はヘルタ・ベルリンとのレッドブルアレナでのホームゲーム。スコアは5-0。ポウルセンが見事なハットトリックを記録しました。大敗を喫したヘルタですが、しっかり攻略策を構築していましたし、そのヘルタの策略を完全に封じ込んだライプツィヒの対策を分析していきます。

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これまでのライプツィヒ分析はこちら↓

ゴール ライプツィヒ 5 : 0 ヘルタベルリン

ライプツィヒ 17’フォルスベリ 27’ポウルセン 56’ポウルセン 62’ポウルセン 64’ハイダラ

スターティングメンバー

まずは両チームのスタメンから行きましょう。ライプツィヒはレギュラー右SBのクロスターマンはハムストリングの負傷で欠場。なので、ムキエレが先発。1月の移籍市場で加入したハイダラはリーグ戦初先発です。そして、フラット型の4-4-2ではなく、ダイヤモンド型4-4-2にシステムが変わりました。ヘルタの方は、前節レッドカードで退場になったトルナリガに代わり、レキクが先発。それ以外にメンバー変更はありません。

ライプツィヒ 守備 ~ヘルタの攻撃戦術を対策で封じ込む~

まずはライプツィヒの攻撃から分析していきます。

ライプツィヒは、ダイヤモンド型4-4-2。ヘルタは、中CBのルステンベルガ―が一列上がり、アンカーとなり、こちらもダイヤモンド型4-4-2に可変しました。これがこの後紹介するヘルタのダルダイ監督の構築していた攻撃戦術のポイントなのですが、ライプツィヒの対策により、この「ルステンベルガー上げ」が見られたのは序盤のみで、途中からは辞めていました。

そのヘルタに対して、ライプツィヒは、上図のように全員に対してマークをつける、フルマンツーマンを行います。そして、ハーフラインから5-10メートルぐらいに第一プレッシャーラインを設置して攻撃的プレッシング。

また、ルステンベルガ―をマークするフォルスベリは、

上図のようにルステンベルガ―がアンカーにならなくても、マンツーマンは継続します。

では、フルマンツーマンでのプレッシングをシチュエーションごとに見ていきます。

まずは相手の3CBが持っている時のプレッシング。中盤はガチガチの強いマンツーマンでパスを受けさせない守備ですが、DFラインに対しては違う守備をしていました。

上図のように、先ほど言ったように攻撃的プレッシング(相手DFラインのパス回しからプレッシングをかける)なので、プレッシングはかけます。ですが、プレッシャーをかけてボールを奪うことを狙うほどの強度の高いプレッシングではなく、自由は奪うが、ボールを持てるぐらいの時間をCBが持つ事ができる強度のプレッシングです。

では続いてGKがボールを持った時のプレッシング。

GKがボールを持った時は、DFライン(CB)の選手に対しても、中盤のマンツーマンと同じように強度の高いマンツーマンでつきます。しかし、GKにはプレッシャーをかけません。GKはボールを持てますが、パスの出しどころがない状況を作り出します。なので、GKは選択肢としては繋ぐことを諦めてロングボールを蹴るしかありません。

このボール保持者によってやり方を変えるプレッシングで、できるだけDFラインでボールを持っている時はボール持たせて停滞させ、ヘルタがしびれを切らしたところで不本意なロングボールを蹴らせます。そして、競り合いの強いいCB等のエアバトル、デュエルの強さを生かしてセカンドボールを回収。そこから、素早くアタッカーにパスを送り込み、カウンターアタックを仕掛けることを狙います。

この守備戦術を特に前半は徹底して遂行しており、何度もヘルタにロングボールを蹴らせ、回収してマイボールにし、完封しました。

しかし、ヘルタのダルダイ監督も、ライプツィヒから点を取るための「攻略策」を準備していたように見えました。しかし、根本のライプツィヒのシステムが想定していたものと違っていたので、機能しませんでした。

そのヘルタの攻略策も紹介します。

ヘルタ ~ダルダイ監督の準備していたライプツィヒ攻略策~

上図のように、ダルダイ監督はライプツィヒが4-4-2で来る、と想定していたと思います。(なのでここからはライプツィヒがフラット型の4-4-2であることを前提として話します。)これは当然でしょう。これまでライプツィヒは4-4-2で守備をしていたので。

ではポジションごとに見ていきます。

まずはDF/GKエリアから。中CBのルステンベルガ―が一列上がり、アンカーとなります。そうすることで、DFライン(レキク、シュタルク)はライプツィヒの第一プレッシャーラインに対しては2対2の数的同数となります。ですが、このDFラインで数的優位を得る、という狙いがあったとすれば、GKのヤ―シュタインをビルドアップに組み込んで3対2の数的優位を獲得しようとしていたと思います。

次に中盤のエリア。前述のようにルステンベルガ―を一列上げているので、中盤はグルイッチ、マイアー、ドゥダ、ルステンベルガ―の4人になります。なので、ライプツィヒの2ボランチの前後にフリーの選手が生まれます(ライン間のドゥダ、ボランチ前のスペースのルステンベルガー)。そして、IH(正確には可変しているのでIHになった。グルイッチ、マイアー)の2人がいるので、2ボランチはそのIHをマークしなければならない。なので中々ルステンベルガ―がボールを持っても、出て行って寄せることは難しいです。

このように、ボランチ前でルステンベルガ―がフリーになっているので、GKヤ―シュタインを組み込まなくても、中盤へのパスコースが常に空いています。ですので、CBが2対2の数的同数でも、パスコースがあるのでパスを繋ぐことが難しい状況に陥る可能性は大きく下がります。

このようにCBが2対2の数的同数でも困らない状況を作り出せているので、ダルダイ監督は、GKのヤ―シュタインを組み込んで第一プレッシャーラインに対して3対2の数的優位を獲得する、という目的は持っていなかったかもしれません。

そして最後にFWエリア。ライプツィヒの2CBに対して2トップなので、2対2の数的同数です。ですが、ドゥダがライン間に入ることで3対2の数的優位を獲得できます。なので、CBはフリーの選手がいるので、前に出て行く守備ができなくなりますし、後手の守備になります。

ダイヤモンド型4-4-2に可変することで、フラット型4-4-2のライプツィヒに対して中央でGKを組み込めば3人のフリーを作り出し、その選手を活用してライプツィヒの守備を崩す、という攻略策だったと僕は考えます。

しかし、ライプツィヒが先ほど書いたようにダイヤモンド型4-4-2システムでの対策を準備していたので、ダルダイ監督の思惑は完全に封じ込まれてしまいました。

ライプツィヒ 攻撃

続いてライプツィヒの攻撃の分析。システムは変わらず、SBが高い位置を取ります。そして、

上図のように左IHのカンプルは高い位置を取っている左SB-CB間に下り、右IHのハイダラは、あまりビルドアップには参加せず、常時ではありませんでしたがライン間に入ります。

このシステムでのビルドアップがこちらです。

2CBと、アンカーのアダムス、左IHのカンプルの4人でビルドアップを行います。2CBとアダムスが中央のアングル、左SB-CB間に下りる左IHのカンプルは、左斜めのアングルからライン間にポジショニングするアタッカーへの縦パスを狙います。そして、アタッカーとのタイミングを合わせて縦パスを入れると、ポジショナルな攻撃のフェーズ(崩しのフェーズ)では2パターンのどちらかで崩し、ゴールを狙います。

その2パターンが、図に示したようにアタッカーのコンビネーションでの中央突破と、SBに展開してのクロス攻撃。この2つです。

ですが、この試合ではほとんど2つ目のSBからのクロス攻撃という選択肢はほとんど選択していませんでした。

また、この試合の5ゴールは、このポゼッションをして、ビルドアップを行って前進して崩したゴールは無く、スローインからの速攻、ロングボール、そして鮮やかなカウンター3つです。

総括

守備 いつものフラット型4-4-2ではなく、ダイヤモンド型4-4-2を採用し、フルマンツーマンを行う。攻撃的プレッシングだがDFラインには持たせ、後方で停滞させ、ヘルタがしびれを切らしたところで不本意にロングボールを蹴らせ、回収。素早くアタッカーにボールを送り込み、カウンターを仕掛ける。フラット型の4-4-2ではなく、ダイヤモンド型4-4-2を使った対策を構築したことで、ヘルタのダルダイ監督を構築していた攻略策を封じ込んだ。

攻撃 左SB-CB間に左IHカンプルが下り、右IHハイダラはあまりビルドアップには参加せず、ライン間に入る。2CBとアンカーが中央アングルから、カンプルが左斜めのアングルからライン間への縦パスを狙う。縦パスが入れば、コンビネーションでの中央突破と、SBに展開してのクロス攻撃という2パターンがポジショナルな攻撃のフェーズで選択肢としてあるが、この試合ではほとんど2つ目のSBに展開してのクロス攻撃という選択は取っていなかった。

これでライプツィヒ分析は終わりです。来シーズン新監督に革新的な31歳監督・ナーゲルスマンが就任し、どんな進化を遂げるのか。とても興味があります。今回取り上げていない側面、詳細については、ぜひここまでの3試合の分析を読んでくだされば、深くライプツィヒの戦術が理解でき、また新たな冒険を始める、躍進を遂げるかもしれない面白いチームを楽しむ事ができると思います。

最後にもう一度書かせていただきます。もしこの記事を気に入っていただけたら、SNSなどでの拡散をぜひよろしくお願い致します。皆さんで日本サッカー界をもっと盛り上げ、レベルアップさせましょう!

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