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第45回:日本を代表する「あの会社」のソニック・ロゴを分析!クルマは革新し、未来に向けて走り出すのか?(前編)

前回の記事では、アメリカの保険会社ファーマーズ・インシュランス社のソニック・ロゴを分析しました。

分析の結果、私たちがファーマーズ社のソニック・ロゴを聞いて「なんとなく」感じた、「明るさ、安定している感じ、力強い大地に根差した信頼感のようなもの」、そして「底抜けの明るさ」は、意図をもって戦略的に作曲されていることがわかりました。

翻って日本企業はどうでしょうか?

日本を代表するあの企業、そうトヨタ自動車のソニック・ロゴを分析してみました。

さて、どのような結果になったでしょうか?(残念ながら・・)日本のトヨタ自動車は日本国内の音声広告やテレビコマーシャルでは、一貫したソニック・ロゴを使っていませんので、同社が北米の音声広告で仕様しているソニック・ロゴを分析します。*

まずは音声のみですが聞いてみましょう。


幸せ、信頼は感じるけれど・・記憶に残る?

このソニック・ロゴは、視聴者に幸福感、信頼度などを感じさせる点において、優良なソニックロゴです。しかしながら、一方で独自性・革新性の想起は強くありません。音楽的・心理的ロジックに基づき制作されたソニック・ロゴであると考えられますが、ソニック・ロゴのメロディ自体に社名が含まれていませんので、視聴者が街中を歩いている時やラジオを聞いている時など、ふとした瞬間にこのメロディを聞いても「トヨタ自動車」であることを想起することは難しいと考えられます。

更に、ソニック・ロゴのメロディに被されている「Let‘s go places」というキャッチコピーのナレーションを聞いても、キャッチコピーにも社名が入っていませんから、必ずしもトヨタ社を連想することはできません。従い、ブランドへの想起度を上げるためには、ソニック・ロゴに企業名を組み込むことをおすすめしたいところです。

ソニック・ロゴは企業理念も発信するもの

🎵ミ〜ソ♯〜ミ〜!

車製品のソニック・ロゴとしてだけ聞けば、「幸福感があり前に進む進行」を感じる良質なソニック・ロゴですね。しかし、そもそもソニック・ロゴとは「企業理念を発信する」ものでなければなりません。


この意味において、製品のソニック・ロゴと「トヨタ・フィロソフィー」との科学的関連づけと構築をおすすめしたいところです。

このソニック・ロゴは「明るく平和にキラキラと走り続けどこかに進む進行」を感じさせる効果があるため、車のソニック・ロゴとしては極めてGood!

しかしながら、ソニック・ロゴは一つの製品宣伝のためではなく、企業理念やメッセージを発し人々の共感を醸成する知財・無形資産となるべきです。これは、首相官邸の政策会議検討会知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン**に「ブランド価値は、、位置、立体形状など多様な商標によって保護されており、これらも知財・無形資産の対象範囲に含まれる。」と述べられていることとも合致します。

ですから、トヨタ自動車の場合で申し上げれば、一商品の宣伝ごとにソニック・ロゴを世に生み出すのではなく、企業名をメロディ化した新たなソニック・ロゴを制作し「トヨタフィロソフィーコーン」に述べられている企業理念やメッセージを音でも発信する事が望ましいのです。

独自の体験をいつでも、どこでも
ソニック・ロゴを科学的に構築し、企業理念を発信できるようになると、「社名の語感とメロディー、和音、進行、音の運び、振幅、周波数」等の音楽理論とヒトの心理との科学的相関により、音を通じてお客様の独自のユーザー体験と心のつながりを創り、お客様は製品だけではなく企業にも更なるロイヤリティを感じることができます。

更に、北米だけではなく、地域・製品・国を超えすべての音声コンテンツ、CMなどに社名を組み込んだ同一のソニック・ロゴを利用することを基本的には推奨します。

そう、「インテル入ってる。♪ピンポンパンポン!」を誰もが認識できるように。

とは言え、基本のソニック・ロゴをモチーフとして季節、地域、テーマ、更には社会情勢に応じてアレンジを行い、一貫性を持たせるのが良いでしょう。

そして最後に・・。今回のトヨタ自動車のソニック・ロゴは、ナレーションとソニック・ロゴの心理的不一致が発生しており、ヒトの心理に混乱を引き起こす可能性があります。また、ナレーションの音色や抑揚により若干強引なイメージを顧客に抱かせるリスクがあるといえます。次回以降、本格的な心理的検証・音楽的検証に踏み込んでいきましょう。

*今回分析を行ったソニックロゴは2020年頃まで北米等国外で使用されていたもので現在のソニックロゴとは異なります。現在のソニックロゴはより「ニュートラル化」された音表現となっています。

** 知財・無形資産の投資・活用戦略の開示及びガバナンスに関するガイドライン
(略称:知財・無形資産ガバナンスガイドライン)Ver.2.0 参考資料編 ‐5


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