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第29回:オープンプランのオフィスはリスクだらけ?

最近流行りのフリーシーティングや社員のコラボレーションを促進するパーテーションの低いオープン・プランのオフィス。

もしせっかく改築したオフィスが開放的でコラボレーションを促進するどころか、社員の生産性と心身面での健全性を低下させていたらどうでしょうか?

残念ながら実際そのような事が起こってしまっています。仕切りのないオフィスはあらゆる音・会話・ノイズは反射反響し、よく聞こえてしまうのです。

今回はオープンプランのオフィスが社員の生産性と心身面での健全性を低下させているという具体例をご紹介しましょう。

1.オフィスに仕切りがなく同僚の動作音、会話、電子機器の音などが否応なしに聞こえてくる環境では社員の生産性が損なわれます。(注¹)

2.仕事に集中している時に雑音やBGN(Background Noise)が聞こえると、注意力が途切れ、いったん途切れた注意量をもとに戻すのは大変難しく、読み書きのスピードと正確性も低下します。(注²、注³)

3.オープンプランオフィスのBGN環境下で3時間以上仕事をすると、エピネフリン(ストレス反応ホルモン)の値が上昇し、前かがみになって座る傾向から、腰痛や椎間板ヘルニアなどのリスクが高くなります。(注⁴)

4.仮に、BGNレベルが高い環境下での作業が断続的であったとしてもコルチゾール(ストレスホルモン)の濃度が上昇するなど、ストレス反応が見られ、女性の場合は月経困難症のリスクにつながる可能性があります。(注⁵)

5.シドニー大学のある調査では、従業員の最大の不満は「サウンドプライバシーの欠如」でした。開放的なオープンプランオフィスだと、やはり自他の会話が聞き取りやすくなってしまうので、プライバシーの問題が発生します。(注⁶)

開放的で明るく、従業員同士がコミュニケーションの取りやすいオープン・オフィスプランを導入することには筆者も大賛成。しかし、その結果従業員の生産性や心身面での健全性が損なわれたら本末転倒というものです。

コストもかからず従業員のコミュニケーションを促進し、コロナ感染対策もしやすいオープンプランオフィスを従業員の生産性や健康面のリスクをなるべく排除して導入したいものですね。

さて、わたしたちはソニック・アーキテクト。「音の総合建築家」です。音響科学や騒音防音制御だけの専門家ではありません。

オフィスのBGNレベルを減らしたい。どうやって従業員の生産性や心身面での健康をリスクにさらさず、オープンプランのオフィスレイアウトをデザインすべきなのでしょうか。

次号、ソニック・アーキテクトの視点からご説明をいたします。

(注¹)Haapakangas, A., Haka, M., Keskinen, and E., Hongisto, V., (2008). Effect of Speech Intelligibility on task performance and experimental laboratory study.
(注²)Ophir, E., Nass, C., and Wagner, D.A., (2009). Cognitive control n media multitaskers.
(注³)Banbury, S., and Berry, D.C., (2011). Disruption of off-related tasks by speech and office noise.
(注⁴) Evans, G.W., et al., (2000). Stress and open-office noise.
(注⁵) Spreng, M., (2000). Possible health effects of noise induced cortisol increase.
(注⁶)Kim, J., (2013). Workplace satisfaction: The privacy-communication trade-off in open-plan offices. Journal of Environmental Psychology. Vol. 36, pp18-26.


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