ニンジャスレイヤーTRPGソロリプレイ:「ストレンジャー・アンド・フレイム・ガール」#4
◆注意◆ドーモ、Tac.Tと申します。この記事は1月2日の夜に実施された公式サンプルソロプレイを、自分がニンジャマスター(以下NM)を兼ねて大幅な加筆修正とオリジナルのストーリーを加えたものを公開したものです。◆新参◆出来る限り推敲はしておりますが、お見苦しい点ありましたらご容赦くださいませ。◆感謝な◆
◆自ニンジャの紹介めいたなんかな◆人助けをするだけの簡単なソロプレイです◆とはいえ実際SSめいていて長い◆今回が最終セクションだ!◆
SECTION: FIRST SECOND THIRD FOURTH(Last Sec.)
「ムッハハハハ!よいぞ!見事な働きであった!」トコロザワ・ピラー。謁見の間。マインドセットが跪き、こうべを垂れる。…彼の前に鎮座するのは、ネオサイタマの裏社会を牛耳るソウカイ・シンジケートの首領、ラオモト・カンである。「これでザイバツのネズミどもをイチモ・ダジーンにしてくれる!」1
「…勿体無いお言葉、ありがとうございます」マインドセットは慎重に言葉を選び、必要最低限の礼儀をもってラオモトに言った。2
「ヘルカイト=サンからも聞いておるぞ、マインドセット=サン。なんでもフリーランスの身でありながら、危険を顧みずザイバツのアジトへ乗り込んで、かのザイバツ・シテンノの一人相手に持ちこたえたそうではないか!」「たまたま近くにいただけです。…それにヘルカイト=サンが戻ってきてくださらなかったら、まず自分は死んでいました」「ムッハハハハハ!謙遜な男よ!」3
「……………」マインドセットは、目の前の巨悪を上目遣いで見る。…つくづく乗せるのが上手い男だ。自身のカリスマ性をもってして、敢えて「直々に」「自分だけ」褒め称えたと思わせることで、俺を取り込もうってか。お前の常套手段ぐらい、こちとら把握済みだ。……目の前にいるのは、あの事件の渦中にいる疑惑の人物である。だが今は詰め寄るべき時では無い。それに、真相を明らかにし、公にする手段は、一つでは無い。4
「…そう言えば、ヘルカイト=サンの他にも胡乱なカトン使いのニンジャとやらが居たらしいが、アレはどうした?ヘルカイトの言うところではザイバツに追われていたようだが」…どうやら彼女の存在は正しく知られていないらしい。内心安堵のため息をつきつつ、マインドセットは続ける。5
「ヌケニンでしょう。廃工場の近辺で爆発四散した彼女の装束から、これが」マインドセットは、ラオモトにザイバツのピンバッジを献上する。「…フーム?」「野良のニンジャにあっさりと殺されるぐらいですので、その程度のニンジャかと」6
◆◆◆
『……取り逃がした、か』「申し訳ございません…」アジトを捨て、ネオサイタマの廃ビルの一室から通信するものあり。ブラックドラゴンだ。「…さらにはシックスゲイツにも我々の動向が露見している可能性も高いです。いかがいたしましょうか」『……………』7
IRC端末の向こうで、沈思黙考するニンジャあり。…スローハンド。ザイバツ・シャドーギルドの幹部、グランドマスターの一人である。『…やはりヘルカイト=サン。侮れぬワザマエよ。逃げたマインドセット=サンとか言うニンジャも放ってはおけぬ…』8
ブラックドラゴンはじっと拝聴する。…やがてスローハンドが重々しく口を開いた。『ご苦労であった。一度キョートに戻ってきなさい。…ネオサイタマでの任を続けるかどうかは、それから決める。前哨基地も一度全て変えねばならないだろうな』「………は」『アリガ家の”御令嬢”の捜索は、出来る範囲で続けていくことにしよう。』
『……ウルカヌス・ニンジャのソウル憑依者はなんとしてでも引き入れねば』9
◆◆◆
レッドブロッサムは、久方ぶりにベッドの中で目覚めた。彼女は瞳を開けて最初に、自身の体のあちこちに包帯が巻かれている事に戸惑った。体を動かしてみる。「……ッ」アバラと腕が痛む。よく見ると右腕には添え木までされてあった。10
次に彼女は横の窓を見る。ブラインドカーテン越しに外の景色が見えた。ネオサイタマの空は重金属雲に覆われ、夜でも薄暗い…かと思えば、猥雑なネオンが夜でも人々を真昼のように照らす。昼夜のケオス。アンダーガイオンでは見られぬ、恐ろしくもロマンあふれる風景。少なくとも、彼女にとっては。11
「…………」レッドブロッサムは、自身の記憶を順番に手繰り寄せる。ブラックドラゴンと名乗るニンジャと遭遇し、イクサに負けた事を。あの時奴は何と言ったか。「お前の力が、我々に必要だ」……概ねそのようなことを言っていただろうか。12
「闇医者のセンセイ曰く、全治2週間だそうだ」フスマが開き、背の高い影が彼女を覆う。反射的にレッドブロッサムが影に向けてカトンを構える!「ウェイッ!マッタ!お前さんをどうこうするつもりは無い!」男は慌ててホールドアップし、敵意がないことを示した。13
「………!」レッドブロッサムは敵意を込めた瞳で男を見る。レインコートとつば広帽こそ脱いでいるものの、その声の調子と目元の丸ゴーグルは、まさしく彼女の見知ったニンジャのものであった。「……こんな所まで、私を連れてきて……どうするつもり…!?……マインドセット=サン…!」14
「悪いようにするつもりだったらベッドに縛り付けてる!それにお前さんの手当代だってバカにならなかったんだぜ?」ホールドアップを解き、片足を引きずりながらレッドブロッサムのベッドの近くに椅子を移し、座る。「…頼むからその手を降ろしてくれ。仮宿まで燃やされちゃかなわん」15
「………」レッドブロッサムは静かに手を降ろす。マインドセットは初めてフードの下の彼女の顔をじっくり観察することができた。可憐な顔立ちではあるが、大きな灰色の瞳には鋭い眼光を帯びている。同じく燃え尽きたような灰色の髪は今は下ろされており、吹き込む風に煽られ、炎めいて揺らめいていた。16
「…何も、別に猥褻な目的でお前さんをストーキングしてきたわけじゃあない。ただ話を聞きたかっただけだ…」丸サングラスめいたサイバーゴーグル越しに彼女の瞳を見、両手を組むと、彼は続ける。「改めてアイサツさせてくれ、アケミ・アリガ=サン。…俺はタニマチ・ギンジだ。今は個人営業でエージェント業をやってる」17
「……何故、私の名前を…!」レッドブロッサム…アリガの顔が、疑念に一層歪む。「………俺は個人的に、ある抗争事件についてを追っている。ネオサイタマのクリスマスに起こった事件の中でも、今までになく最悪の奴だ。」マインドセット…タニマチは、ゆっくり語り出した。「…マルノウチ抗争」「!」18
「聞き覚えは…言うまでも無いよな。お前さんは、巻き込まれて、生き延びた。」「……………!!」アリガの顔が憎悪に染まり、さらに一段階歪む。この男は自分の身に起きた惨事を突き回そうとでも言うのか!?日刊コレワの低俗記事のように!「…俺はあの抗争を、起こると知ってて止められなかった」19
アリガの表情から、微かに殺気が削がれる。一方のタニマチは…彼女に対し、努めて真摯に振る舞わんとしていた。自らの感情を押し殺してでも。「……生存者が居たら、一言謝ろうと思っていたんだ。…力至らず申し訳ない、真実を……明かしきれずにこんな事になっちまって、済まなかった…ってな」20
自責と悔悟に押しつぶされぬよう、タニマチは己を強い、淡々と言葉を発そうとした。それでも漏れ出る声は沈痛なものであった。「……………」アリガの表情から、殺気が消えた。「……何故私の事を?」「…街で初めて……バッタリ会った時にな。お前さんが死体からメンポ引っぺがす様を俺に見せた時だ」21
「…ああ……」「あの時お前さんのカトン・ジツから逃れようとして、とっさに俺のジツを使った時だ。…俺の頭の中にヘンな映像が流れ込んできてな」「…映像。」「いやね、俺のジツは相手に幻覚を…影像というかな?俺は”ビジョン”って呼んでいるが…そういったものを押し付けるジツな訳だが」22
「……」「どうも副作用として、相手の記憶だとか…頭の中で考えている事だとかが、時々コッチにも来ちまうらしい。…お前さんにジツを使った時が初めての例だったんだが。」「…それで?」「あぁそうそう。それでだ…その時のお前さんの記憶?思考?がヤケに具体的でな」23
「…押し付けられたビジョンの中で、お前さんはスゴイタカイ・ビルのスキヤキ・レストランでテンプラ食ってたよ」「!!」アリガの目は、今度は驚愕に見開かれた。……燃え盛る炎。焼け焦げたビルの壁面。目の前で倒れる男女。その記憶は、まさしく彼女自身の記憶であった…!24
「その時ガラスの窓に映った顔が、丁度お前さんが……そんな髪色になる前の感じの顔だった。マルノウチ抗争の生死不明者リストの中に、顔写真付きで名前があったよ」「……………」「…正直理由としちゃあ、それだけじゃない。お前さんが心配なのもあった」「え…?」25
「いや、理由や道理は詳しくは知れんが何も考えずにニンジャを燃やしまくってたろ。お前さん、ソウカイヤの警戒リストに入ってんぞ」「…前から分かんなかったんだけど、ソウカイヤって何よ」「ヤクザクラン。但し全員がニンジャで規模がバカでかい。睨まれたら…一巻の終わりだ」タニマチは親指で首を切るゼスチュアをした。26
タニマチはアリガに、己が知りうる事を簡単に明かした。ソウカイヤの事、ザイバツの事、マルノウチ抗争の事。話せば話すほど、アリガの顔は再び憤怒と憎悪に歪んでいく。「…ザイバツの目的は、現時点じゃあってオイオイオイ!?」タニマチがそこまで語った時、彼女の髪は炎めいて激しく揺らめいた。27
「……奴らは、いつ、燃やせるのよ…!」「待て!お前さんそういう所だぞ!特にネオサイタマじゃソウカイヤに大手を振って逆らうのはマズイッ……ッ!!」タニマチはアリガに落ち着くようにゼスチュア!そして脇腹の痛みに顔をしかめる…「…大体調べがつく限り、元凶はザイバツの方にある……どうにせよ、早まるな」28
「……」アリガは炎を収め、ベッドに横になる。未だ髪には種火が燻っている。タニマチは安堵のため息をつくと、デスクからパイプを取り出した。「…実質、お前さんが取れる選択肢は限られている。キョートに帰ってザイバツに追われ続けるか、ソウカイヤの下につくか、このまま無軌道にやって……どうにかなっちまうか。」29
「……」「…そこで、俺からの妥協案な訳だが。お前さん、ウチで働かないか?」「……はあ?」タニマチからの唐突な提案に、アリガは思わず呆れたような声を出す。「一応ソウカイヤとは、仕事を何度か任されているくらいは上手くやってるしな」彼はパイプに火をつけ、一服して見せる。30
「…私が、ソウカイヤのニンジャを燃やしたくなったとしたら?」「んああ、連中、木っ端のカスが一人二人死のうが勝手に殺し合おうが気には留めないよ」タニマチはそう言って肩を竦める。「実際お前さんのことも庇いきれるかもしれん。その…衝動的に燃やそうとする厄介な性格さえ、直してくれればな。うん?」31
タニマチは目の前の少女を見る。不安定で、危なっかしいこの少女。成り行きで保護してしまったが、後悔はすまい。…彼女の宿しているニンジャソウルも強大なのだろう。恐らくは、自分と同じく。(彼女とトレーニングしていく中で、俺のソウルをどうにかできるきっかけも、出来るやもしれんな…)32
「……ハァ」極めて面倒そうに、アリガはため息をついた。キョートから遠く離れたこの憧れの地で、親を殺され、人ですら無くなった。しかし幸か不幸か、ネオサイタマでの仮住まいと…この見知らぬ奇妙で胡乱な同居人を得てしまった。なんたる奇妙なインガオホーか。33
「まあそれにだ…」タニマチは二人分のコーヒーを淹れ、アリガのそばに置く。「独りでシチナラベやってるよりも、2人でオセロやショーギをやってる方がずっと楽しい。そうだろ?」そう言うと、被ってきたつば広帽子の中からトランプを取り出し、ニヤッと笑った。34
かくて巡り合った「変わり者の男と烈火の少女」。重金属酸性雨降るネオサイタマにて。
求むのは目先の幸せか、カーテンコールでの喝采か、平和な記憶の再現か。
ヤクザ組織にスカウトされて、闇に紛れて秩序を守るか。
それとも自らの正義に殉じて、酸性雨の下を走り続けるか。
生きるか死ぬか。脳天を光の矢で貫かれるか、地獄の豪炎に内臓から焼かれるか。
はたまたサムライの放った斬撃が、お前の首を撥ねとばすのが早いか。
……あるいはヒトならざるものに変じてなおも、大いなる悪意に無謀な戦いを挑むか。
【ストレンジャー・アンド・フレイム・ガール】
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「……イヤーッ!……イヤーッ!……イヤーッ!」
…ドージョーの中に、鋭いカラテシャウトのみが響き渡る。「一刀入魂」「美しきものを愛でる」「彎曲と可変性」の力強いショドーが、モール(訳注:巨大なハンマー)を幾度も振り下ろす男の姿をじっと見ている。
「……イヤーッ!……イヤーッ!……イヤーッ!」
……ジュドー着姿の男、シャープエッジは、一心不乱に素振りを続ける。絞られた身体に血管が浮き上がり、滝のような汗が身体から流れ出ようとも、モールを百度振り下ろし終わるまでは止めようとはしない。
…カラテシャウトが止んだ。シャープエッジがモールをタタミに下ろし、ショドーの下にセンコと共に置かれた、一枚の写真の前に正座した。……写真の中には、一人の老人の顔。
「…センセイ……」こんなものでは足りぬ。己のカラテを、己のイアイをもっと研ぎ澄まさねば。我がセンセイを惨たらしく殺した下手人に、一太刀でも多く刻み込む為に。もっと強く。もっと鋭く。シャープエッジの歯の奥から、軋む音が微かに聞こえる。
唐突に、IRC端末に着信が入った。イカルスと名乗るソウカイヤのニンジャからだ。シャープエッジは端末を手に取り……その内容をしかと見た。
「……とうとう、掴んだぞ」
「……首を洗って待っていろ………マインドセット=サン!」
◆忍◆
ニンジャ名鑑#0001-STILLALIVE
【マインドセット】
ネオサイタマの武装ジャーナリスト、タニマチ・ギンジにニンジャソウルが憑依。憑依したソウルの影響か、モータルの頃の善性や人間臭さをそのまま保持する。現在はフリーのニンジャエージェントとして糊口を凌ぐ。つばの広い中折れ帽に丸ゴーグルが特徴的。
◆殺◆
◆忍◆
ニンジャ名鑑#0002-STILLALIVE
【レッドブロッサム】
マルノウチ抗争で父母を焼かれた少女、アケミ・アリガにニンジャソウルが憑依。暴虐を振るう人間…特に放火魔を激しく憎み、強力なカトン・ジツを振るう。その表情は常に歪み、静かな怒りに満ちている。ソウル生成したドレスめいた装束を身に纏う。
◆殺◆
◆To Be Continued…!◆
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