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【解説】アメリカ合衆国大統領への道

4年に一度あるものと言えば? オリンピック? うるう年?
実はアメリカ合衆国大統領選挙も4年に一度。
連日コロナウイルス関連の話題ばかりで世界が止まっているように感じますが、
そんな中アメリカは、合衆国大統領選挙の真っ只中。3月3日(火)には「スーパーチューズデー」と呼ばれるイベントが行われました。

■スーパーチューズデー(Super Tuesday):
アメリカ合衆国の多くの州で予備選挙が行われる、2月または3月上旬の火曜日のこと。「決戦の火曜日」ともいわれる、大統領選挙戦にとって重要な日。

アメリカ合衆国大統領は誰になるのか。世界経済の中心であるアメリカを率いるのは誰なのか。これはアメリカに住んでいる人のみならず、わたしたち諸外国で暮らす人々にとっても、とくに関心が高い話題のはず。でも実際のところ、アメリカ合衆国大統領ってどんなふうに選ばれるのか、よく知らない…という人は多いと思います。かく言うわたしも、アメリカ大統領選については、海外ドラマで得た情報しか知りません…

今回こちらのnoteでは、「分かりやすく丁寧に」を心がけ、アメリカ合衆国大統領選挙の仕組みについて整理していきたいと思います。

<目次>
1. 大統領選挙のおおまかな仕組み
2. 大統領候補者リスト(2020年3月8日時点)
3. 大統領選挙のスケジュール
4. 用語解説
5. まとめ

1. 大統領選挙のおおまかな仕組み
アメリカは「共和党」と「民主党」の二大政党制を採用しています。現在はトランプ大統領が所属する「共和党」が与党、「民主党」が野党となります。
大統領が決まるまでには大きく分けて二つのステップがあります。


■大統領を決める二つのステップ
①予備選挙+党員集会
②本選挙

①予備選挙+党員集会
予備選挙も党員集会も、目的はただ一つ。「自分たちの党から誰を大統領候補に選ぶべきか?」を決めることです。予備選挙や党員集会は州や地域ごとに開かれます。予備選挙は有権者なら全員参加可能、党員集会は認められた党員だけが参加可能となります。自分の支持政党の中で「推し」に投票するのが予備選挙。党員同士の話し合いで「最推し」を決めるのが党員集会です。

②本選挙
本選挙ではついに、大統領を決めます。①予備選挙+党員集会で選ばれた、共和党候補と民主党候補の一騎打ちです。ただしここでは、アメリカの有権者たちの票が、直接大統領を決めるわけではありません。アメリカの有権者たちは共和党候補か民主党候補のどちらかに投票します。そのあと、「選挙人」と呼ばれる人たちが再度投票を行い、獲得票数が多い候補が大統領となります。

2. 大統領候補者リスト
現在3月8日時点での大統領候補は次の4人です。

■候補者リスト
〈共和党〉
・ドナルド・トランプ
〈民主党〉
・バーニー・サンダース
・ジョー・バイデン
・トゥルシー・ギャバード

候補者の特徴:
・トランプ:現大統領。潤沢な資金をもつ。保守派。
・サンダース:民主党候補で最年長。学費無償化などを謳い若者に人気。
・バイデン:オバマ政権元副大統領。政治経験豊富。
・ギャバード:下院議員。軍経験あり。21歳で政界入り。

もともと10人以上の候補がいましたが、選挙戦には膨大な時間とお金がかかります。候補者たちはあちこちから政治資金をかき集めますが、資金がなくなった候補者は徐々に脱落していきます。

3. 大統領選挙のスケジュール
選挙活動開始から大統領就任までには、およそ一年間という長い道のりがあります。選挙期間前半戦は共和党・民主党それぞれの大統領候補を選出します。そして後半戦では各党候補同士の一騎打ちとなります。

■大統領選挙のスケジュール
・1月〜6月: 予備選挙+党員集会
・7月〜9月: 党大会(nominating convention)
・9月〜10月: 大統領候補者討論会
・11月初旬: 一般投票
・12月: 選挙人団投票
・1月20日: 就任式

 選挙期間うち最初の約半年間は、アメリカ全土のあちこちで予備選挙と党員集会が開かれます。この予備選挙+党員集会で選ばれた「代議員」と呼ばれる代表者たちが、夏の党大会に出席します。ここでは最終的に各党の大統領候補が一人に絞り込まれます。
 大統領候補者討論会では、共和党の大統領候補と民主党の大統領候補が一対一で討論します。この討論会はテレビ中継され、それぞれの候補者がどれほどの情熱を注いで政治に取り組むのか、何を成し遂げようとしているのかを、有権者たちに伝えます。
 そして運命の11月3日。アメリカの有権者たちは自分が支持する大統領候補に投票します。この票が直接大統領を決めるわけではないといっても、選挙人たちは有権者の意思をくんで投票します。ここでより多くの選挙人を勝ち取った候補者が晴れてアメリカ合衆国大統領に就任します。

4. 用語解説
ここまで大統領選挙戦の流れをおおまかに見てきましたが、中には「予備選挙」や「選挙人」など聞き慣れない言葉もありました。ここでは一つ一つの言葉をわかりやすく丁寧に説明していきたいと思います。

①共和党
共和党は、民主党と並ぶアメリカの二大政党のひとつです。現アメリカ合衆国大統領のドナルド・トランプ氏は共和党所属の大統領です。共和党は保守派とよばれ、支持層には中西部の農村地帯や南部に住む白人・キリスト教徒が多いとされています。宗教的倫理に基づき、同性婚や妊娠中絶には反対の立場をとる傾向があります。また別の視点からみると、共和党は個人を尊重するという信念を持っています。奴隷解放の父であるエイブラハム・リンカーンも共和党所属の大統領でした。個人の命は個人で守るべきという考えから、自己防衛のための武器所持にも前向きです。また個人の資産は個人に帰属すべきという考えから、ビジネスを奨励し、裕福な人からも貧しい人からも税金を取るべきではないとして、減税の政策を進めています。

②民主党
民主党は、共和党と並ぶアメリカの二大政党のひとつです。前アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏は民主党所属の大統領でした。民主党はリベラル派とよばれ、支持層にはカリフォルニアやニューヨークなど大都市に住む有色人種が多いとされています。地域とのつながりや社会的責任を重んじ、「多くの人が幸せになれる社会」を理想としています。同性婚や妊娠中絶を認め、政府による医療保障を重視する立場にあります。また民主党は増税の政策を進めています。これは裕福な人からは多く、貧しい人からは少ない税金を徴収し、その税収を社会福祉のために活用しようという考えを表しています。

③予備選挙
予備選挙は、本選挙に先立ち、党の中から大統領候補を決めるための選挙です。つまり共和党なら共和党にひとり、民主党なら民主党にひとりの候補を選ぶために、同じ党の中で競い合います。有権者は自分の住む州の予備選挙に参加できます。ただし、投票するといっても候補者本人に投票するわけではありません。地方議会の中から選ばれた「代議員」に投票します。代議員はあらかじめ自分が投票する候補を宣言しています。一般有権者たちは、「わたしが支持したい候補に間違いなく投票してくれる人」を選ぶことになります。

④党員集会
党員集会の目的は予備選挙と同じく、党の中から大統領候補を決めることです。予備選挙との違いは、参加者同士の話し合いで候補者を決めるという点です。参加者たちは自分が大統領に選びたい候補者を支援してくれる代議員を選びます。選んだ代議員ごとにチームを作り、他のチームから自分のチームに来てもらうよう説得します。この結果により、より多くの支持者を集めた代議員が、代表として夏の党大会に出席します。党員集会には誰でも参加可能というわけではなく、自分の支持政党を登録した有権者のみが参加可能です。誰もがふらっと気軽に参加できる場所というわけではないので、政治に関心があり、行事に参加する時間のある有権者、つまり若者よりお年寄りの支持が多い候補が有利となる傾向があります。

⑤代議員
代議員の仕事は、大統領候補を一人に絞り込むための投票が行われる「夏の党大会」に参加することです。代議員は、予備選挙や党員集会に先立ち、自分が誰を大統領候補として支持するかを宣言しています。代議員はその大統領候補を支持する人々の代表として、党大会に出席し、投票を行います。各州での代議員数は人口等により定められていて、決まった人数だけが党大会に出席できます。共和党・民主党それぞれにおいて、もっとも多くの代議員を獲得した候補が大統領候補として正式に指名されます。

⑥一般投票
アメリカ大統領選挙は「間接選挙」です。一般有権者たちは直接大統領に投票するわけではありません。一般有権者たちの票は、予備選挙と同じく、ある大統領候補への支持を宣言している「選挙人」への投票となります。一般有権者の票が直接大統領候補を決めるわけではないと言っても、選挙人はあらかじめどの候補に投票するか誓約しているので、選ばれた選挙人からどの大統領が勝利するかを推測するのは簡単です。そのため一般投票が行われる11月3日は選挙戦の中でも最も重要な日のひとつです。

⑦選挙人
選挙人の仕事は、12月に行われる選挙人投票において、一般有権者に代わり大統領候補に投票することです。選挙人候補になれるのは、州で公職に就いている人や州の議会政治に貢献した人などです。各政党は州ごとに決められた人数の選挙人を選びます。この選ばれた選挙人たちの集団を「選挙人団」と呼びます。一般投票では、有権者たちがこの選挙人団に投票することになります。

⑧選挙人投票
選挙人投票は、アメリカ合衆国大統領を決める最後のイベントです。大統領候補になるためには、アメリカ全土で538人いる選挙人のうち、過半数の270人を獲得する必要があります。
たとえば、アメリカで最も人口が多いカリフォルニア州からは、55人の選挙人が選ばれます。この55人の枠は、一般投票でより多くの票を獲得した政党の総取りとなります。仮に、カリフォルニア州にはの 100人の有権者がいたとします。そのうち、49人が共和党、51人が民主党に投票したとします。得票数の差はたったの2票ですが、この場合は民主党が55人の選挙人を総取りとなります。同じように人口の多いテキサス州(34人)、ニューヨーク州(31人)、フロリダ州(27人)などでも勝利すれば、民主党は過半数270人のうち147人の選挙人を獲得できます。ただし、人口の多い州すべてで勝利すれば必ず大統領になれるというわけではありません。州の特性により、共和党寄りの「赤い州」や民主党寄りの「青い州」があり、特定の政党が勝ちやすい州も存在します。こうして選挙人投票で勝利した候補が、晴れて大統領に就任します。

5. まとめ
アメリカ大統領になるためには、約一年間に及ぶ長い選挙期間を戦い続けなければなりません。強い信念と気力に加え、膨大な資金や、アメリカ市民に支持されるリーダーシップも必要です。しかし、大統領になるための三つの条件を満たしさえすれば、誰でも大統領になれる可能性があると言えます。現在、予備選挙や党員集会の真っ只中にあるアメリカ合衆国大統領選挙。この記事をきっかけに、ニュースをより深く読み解いていただけると幸いです。

■参考URL:
・駐日アメリカ大使館 https://americancenterjapan.com/
・アメリカ合衆国政府公式website
https://www.usa.gov/
・佐藤令「アメリカ大統領選挙の手続」http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/287276/www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0456.pdf
・民主党と共和党の違い
https://www.diffen.com/difference/Democrat_vs_Republican


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