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カフェ夢Portという店〜発達障害が集まる店〜

2021年 3月31日 カフェ夢portは閉店する。
「第二の家」
をコンセプトに掲げる、発達障害をはじめとした世の中になじみづらい人々の「帰ってこれる居場所」であったカフェだ。


名古屋栄に店を構えるこのカフェは多くの人に愛されると同時に、コロナウィルス流行の煽りを大きく受けた。
結果、店長ほっしーの判断により一旦幕を閉じることになった。
私はこの店に人生のいわゆ「底」の部分を大きく支えてもらった。今日は一客の私とカフェ夢Portの思い出を語らせてほしい。

2019年の12月15日。大学生活に大きな挫折を感じ、鬱状態の私はツイッターで「発達交流会」なるものを見つけた。
発達障害らしく初回から遅刻をキメた私は、少々怪しげな雑居ビルの7階の重たい門を叩いた。


渡された名札に、自分の名前と抱えている障害、一言を添えて首からかける。
名札は表と裏で色が違っており、喋りたいことがある時は表、そうでない時は裏を見せる仕組みだ。
事前に参加者から寄せられたテーマに沿って店長ほっしーがみんなに話を振っていく。話した内容は正直よく覚えていない。
覚えているのはみんなが自分の悩みを肯定してくれたことである。

発達障害は多くの場合マイノリティだ。
「人と同じようにできない」「環境に馴染めない」総いった悩みを抱えていることが多い。
しかしここでは違う
「余裕を持った時間に起きたのに、1時間遅刻している」「椅子にじっと座っていられない」「何回も確認しているのに、ケアレスミスがなくならない」
今まで誰にも理解されなかった悩みに、共感が得られた。それがわかった瞬間に「世界の中に自分が馴染んでいる」という感覚が得られた

孤独じゃない。独りじゃない。私だけじゃない。それが実感できた時、私の世界は大きく広がったように思う。

「私のような人が集まれる場所なんだ」そう感じて以降カフェ夢Portは私の帰る「第二の家」となった。

しかし、カフェ夢Portに私が居ついたのは、悩みが肯定されるからというだけではなく、
店長であるほっしーの存在がとても大きいのである。

本人も発達障害当事者であるほっしーは、とても不思議な人である。

まず店で寝ている。
店の資金のためパン屋のバイトと店を掛け持ちしている彼女が、寝不足なのは常連客衆知の事実なので客も放っておく。帰る時や新たにお客さんが来た時は、呼び鈴をならすと驚くべき速度で起きるのである。

そして、よく物を壊している。コーヒーメーカーは2年半で20台ほど壊しているし、店の棚のガラス戸を割ったこともある。
カフェ夢Portは夜営業のバーを間借りして営業しているのだが、ほっしーが昼営業に入ってから食器をプラスチックと木のものに統一したらしい。

買い忘れもしょっちゅうなので、たまに提供できないメニューが生まれる。夏限定のそうめんなどは薬味が全て揃っていることの方が珍しかったような気がする。
「〇〇ないけどいい?」と聞かれて提供されるので、それに対してこちらも文句はない。が個人店特有というか、夢port特有の「ほっしーだから」というゆるさが存在していることは確かだ。


それでも人はほっしーのもとに集まってくる。


そもそも夜のバーを間借りして店を開けること自体がほっしーの人徳であるし、1度目の緊急事態宣言の際に行ったクラウドファンティングでは、夜のバー営業と合わせてのべ100万円の支援が集まった。

なぜほっしーに人が集まるのかといえば、ほっしーの人柄が全てだ。

バイトの方が儲かるとわかっていても、私たちのために店を維持しようと努力してくれた。
日常でどんなに苦しいことがあっても、栄に行けばあほっしーは普段通り出迎え、バタバタとコーヒーを入れ、たっぷり注いで出してくれる。

それが私たちにとってどれだけ支えになっていたかを、本人がどれだけわかっているのか分からない。
不器用ながらドタバタと日常を送っているほっしーの隣で、笑っているのが私にとっての幸せそのものなのである

ほっしーは漫画の主人公みたいだなと思う。みんなが力になりたいと、助けたいと思ってしまう力がある。周りを巻き込んで幸せを生むパワーを持っている。

ディスりに対して褒めが非常に抽象的になってしまったが、とにかくほっしーは唯一無二の魅力的な人物なのだ。

そんなほっしーの店が閉まる。

カフェ夢Portには精神的に疲れた人も多い。しかし、カフェの雰囲気は明るく帰る時はかならず笑顔になれる。パワースポットたいなそんな感じ。

美味しいコーヒーもスコーンと個性豊かな常連客も、魅力的な店主も一旦お別れだ。
ほっしーの人生があるので仕方のないことだが、本音をいうとちょっと寂しい。

だから人生に疲れた人は3月までに一回来てみてほしい。
できれば3回は通ってほしい


きっともっと早く知っとけばよかったと思うから。
大好きな店の大好きなところをいろんな人に知ってほしいから。
多くの人に愛されてほしいから。

3月31日まで勝手ながら応援させてほしい。
そしてもう一度オープンした暁には、帰らせてほしい。
みんなの「第二の家へ」



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