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随筆のお手本にしたい記事

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2023年8月の記事一覧

極私的聖域の旅

極私的聖域の旅

東京から関西に引っ越したばかりのころ、奉職先の神社に、気の合う学生の巫女がいた。眼鏡をかけ、低めの声で話す彼女は、神社の近くにある小さな書店の娘で、小さい頃から本に親しんでいたせいか、独特の語彙を持っていた。「祈祷控え室」のことは「待合」と言っていたし、なぜ巫女の助勤をしているのか聞いたときには、「ここの土塀が好きなんですわ」と答えたし、書店を経営しているお母さんについて「あの人は近江商人やから」

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