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ゆらめく炎に目を細め

6月。
焚き火をするのであれば、曇天の下で、が正しい。そもそも晴天を見込むのは野暮だし、小雨の中の焚き火ほど、他から見て見苦しい自慰行為もない。

葉山、御用邸の裏。物々しい詰め所にて、警備が施されている海岸で、僕らは火を起こした。もちろん、健全に。

土曜日の午後は、火を起こすのに適している。平日の、溜まった家事や疲れやら、なんとなく片付けてから。
焚き火の良さは、「ついでに」できないところだ。炎と向き合わなければならない。その行為が、人を無心にさせる。
炎は、静かに揺れる。今朝までの長雨のせいもあり、海岸で拾った木々は湿っていて、多くの煙を発生させた。白ワインを注いだグラスに、炭が跳ねて落ちる。気にせず、喉に流すと、酸味が広がる。江ノ島が、霞んで見えた。
波の音は、いつでも圧倒的だ。持参したスピーカーから流れる音楽も、脇役に徹する。火は、揺らぎ続ける。

椅子に深く腰掛けて、深呼吸。
炎の中に今の自分を見つめ、海の向こうに明日を探す。
飲みすぎたのは、きっと、焚き火と、潮風のせいだ。
夏が、もう、すぐそこまで。


6/10、ライター仲間たちと、焚き火をしてきました。焚き火セットを全て貸してくれ、手ぶらで楽しめます。
逗子駅からバスで20分。一色BASE。


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