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下弦の月が見える刻、 それについて張り巡らせた糸を数える


夜ごはんの後に
息子たちと
MVを観ながら歌った
しあわせ
忘れるのが怖い
左胸がさざなみ立ったまま
夜の糸を数えている

それが
歌になって
世のひとたちに広く愛されていること
少し怖くて
それらは
まだずっと怖くて
あの人がいない夜には
眠れない
命を終えたひとの
痩せてゆくからだが木漏れ日に揺れる姿も
赤ん坊を抱けなくなった手の温もりも
生きはじめたひとの
それに向かおうとして痛くてやめた話も
両腕の不規則なひび割れも
刺さったまま螺旋状に行ったり来たり
忙しくしていることで覆い隠している
それらは
口にするのも文字に起こすのも
まだずっと怖い

あの子は
それに
とらわれはしないだろうか
この子は
それに
奪われはしないだろうか
脆弱な母親は感受性ばかりを研ぎ澄ませ
泣くことを置き換える術を探りつづける


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