橘家文吾

落語協会所属、二つ目の噺家です。 HP→https://www.tachibanay…

橘家文吾

落語協会所属、二つ目の噺家です。 HP→https://www.tachibanayabungo.com/music 日常や思い出を書いています。

最近の記事

伊勢市クリエータズワーケーション

週明けから伊勢市にきてます。 コロナによる緊急事態宣言発令に伴い、全国のクリエイターに伊勢市を盛り上げもらいたいと立ち上がった「伊勢市クリエータズワーケーション」なるプロジェクトに、日頃からクリエイターの自覚が強い、二つ目ユニット「ちょちょら組」が応募して盛り上げにきました。 ところが、コロナによる猛威のため 「クリエイター、いまは伊勢市に来ないでくれ」 との伊勢市からお願いや 「クリエイター、どこ行く?座ってろ、都内から出るな」 との東京都からの要請に従い、延期

    • ピロリ菌

      健康診断でピロリ菌が見つかった。 一応長生きを希望しているので、毎年通り一遍の検査は行っているのだが、まさかガンマgtb以外に引っかかる項目があるとは思わなかった。 ピロリ、なんて音はかわいらしいが、調べてみると胃がんの原因の約98%がこいつによるものらしい。「ピロリ」では感じなかった危機感が、98%という数字で急に現実実を帯びる。「使用者の約98%が効果を覚えた」との文言をみて「残りの2%には効かんのかい」と、ひねくれたツッコミをかませるほどの強さはないのだ。 顕微鏡

      • タガマヤ村

        夕飯の買い物を済ませると、かみさんの後ろ姿を目にした。 一泊二日の旅行を終え、夕方には帰宅との連絡を受けていたのでその帰り道だろう。 声をかけると、さほど驚いた様子もなく「あぁ」とだけ漏らして立ち止まらずに帰路につく。 目がうつろで覇気がない。 疲れている彼女をソファに座らせ、晩飯の支度をするが、言葉数が非常に少ない。 なにか聞くと返事はあるので、機嫌が悪いわけでもないのだが、どこかいつもと違う。 あたまの上にくるくると、パソコンが処理中の際に表示される、あのアイコンが

        • 定休日

          気がついたのだが、目掛けて行ったお店の定休日にあたることが多すぎる。 行く店、寄る店、まぁやっていない。 やれ、定休日だ、移転だ、工事中だ、閉店だ。 こちらが出向くことを察して休みをぶつけているのではなかろうかと疑いたくなるほどである。 とくに悔しいのが、電話をかけて確認するほどの距離でもない飲食店がしまっている時である。 今日なら家で作るのも面倒だからと、わざわざ着替えて外に出た、そんな日に限って定休日なのだ。ただでさえ出不精なのに、一歩踏み出すその勇気がどんどんしぼ

        伊勢市クリエータズワーケーション

          寝台列車

          週末、生まれて初めて寝台列車に乗る。 とてつもなくわくわくしている。 わくわく旅の構想としては、まず20時に東京駅に到着し、深夜の車内で飲むお酒とつまみを吟味する。 コンビニから駅弁まで、東京駅構内すべてのショップを二周半はまわるつもりで、あまりに納得いかないラインナップであれば、駅を出て、デパートの食品売り場にも駆け込むことを辞さない構えである。 飲み物は限界まで冷やすので、クーラーバックも持参する。 用意周到、まさにこのこと。 そうして二時間半、お酒とつまみのオーデ

          寝台列車

          決闘

          物事を忘れている時というのは、妙にそわそわするものだ。 なにかが違う、いつもと違う。 14時開演の落語会の開口一番。出演は僕と師匠のみ。 いつも通りの時間に楽屋入りし、ケータリングをつまみ、根多帳を見ながらネタを選び、着物に着替えて帯を締める。 普段となんら変わらない作業なのに、なぜか、しっくりこない。 「なんだろう、この違和感」 そうして急に、なにか大事なことを忘れているのではないかと不安に襲われる。 たいていそういった不安は的中するもので、思い出した頃には、その用事

          フレンチ

          「ゲスト様に振る舞うコースはフレンチか中華、どちらになさいますか?」 「フレンチで」「中華を」 式場プランナーがゲストに提供するコースを僕らに訊いたのだ。 フレンチと答えたかみさんと中華を選んだ僕と「そこから意見割れてんのかい」とあきれ顔のプランナー。一瞬にして刻が止まった。 「え?フレンチでしょう?」とかみさんの声。 フレンチでのみ使う金のカトラリーがひとつのウリとなっている式場なので、食事はフレンチと決めたはず。それでも僕の口から「中華」という言葉が出てしまったの

          フレンチ

          結婚式の司会

          落研の同期に結婚式の司会を頼まれた。 大学一年からずっと一緒に遊んでいた加藤君は、二年だか三年だが四年だか前に、いまの奥様となる部活の同期と付き合い、いろいろ乗り越え、結果幸せに結ばれた。おめでとう。 その友人ふたりの共通の知り合いである噺家のぼくに白羽の矢が立ったのだ。 まず心から感謝した。もちろん大好きなふたりの門出を祝福したい。 だがそれ以上に「祝儀出すけど司会料で多少は出銭を抑え…」とかは考えていない。おめでたい門出にふさわしくない芸人の本音はこの辺にしておく。

          結婚式の司会

          暮れの噺

          正月か暮れかで言うなら圧倒的に暮れ派で、「明日できることは明日に回す」とか「年が変われば潮目が変わり、なんか突然爆売れする」など、ぼんやり考えてしまう噺家にとって、暮れは最高の季節だ。 あれやり残したなと思いながら呑む酒が 暮れだとなぜか格別美味い。 落語もそのためか、華やかな正月の噺よりかは暮れの根多に名作が多く、なかでも「芝浜」はその代表作で、僕も先日手を出してみた。 「芝浜」始めました。 同門の若手三人で定期的に開催している「三琳会」の話し合いで、半年に一度はゲ

          暮れの噺

          キャンプのはなし

          キャンプにハマっている。 子供の頃に父親に連れて行ってもらい、昨今のキャンプブームとYouTubeの普及により、その頃の熱が再燃したのだ。 ソロキャンパーが焚き火を起こし、屋外で静かに酒を飲んでいる映像を見ながら、自分は暖かい室内で酒を飲ませてもらっている。釣りをしているのを見ている人を見ている人くらい暇な行為だ。 毎晩の動画鑑賞で知識を蓄え、道具もある程度買い揃えると当然現地に行ってみたくなるのだが、そこで悪い虫が出てしまう。 「キャンプしているところを誰かに褒めてもら

          キャンプのはなし

          シャンパン

          かみさんの遠吠えが聞こえた。 大げさな表現でなく、たまに食事中に「わおーん」と遠吠えすることがある。 スパークリングワインがないからだ。 我が家最大の楽しみといえばやはりお酒と食事で、お互い仕事に出てから、今晩なにで一杯やるかを楽しみに生きている。冷蔵庫の食材先行で考えることもあれば、買い置きの酒をベースに何をあてるか考えている。たまにお客様からお酒をいただこうものなら二人でお酒様の前に土下座して、高いところへ飾り、週末の楽しみにしている。あなた方が手放した我が子は、う

          シャンパン

          先の予定

          2022年6月2日(木) 落語教室 19時より あさくさ・なまらく亭 詳細↓ https://www.office-zoe.jp/ 2022年6月4日(土) 文吾「大」単独 14時開演 なかの芸能小劇場 予約2000円 当日 2200円 ネタ出し「船徳」 主催・株式会社オフィスゾーイ 2022年6月8日(水) 巣ごもり寄席 13時開演 当日のみ1000円 スタジオフォー 橘家文吾→田辺いちか→春風亭昇市 2022年6月8日(水) ノラ犬の会 19時開演 当日のみ2000

          先の予定

          テントサウナ

          先日「ちょちょら組」という若手落語家のユニットの仕事で米沢に向かった。 かしめちゃんが前座の頃から世話になっている旅館の若旦那が世話人となり、宴会場で落語会を開いてくれるのだ。 一同楽しみに米沢駅に着くと、世話人の「近藤さん」が手を振りながら待っていてくれた。 そう、旅館の若旦那を務める近藤さんは駅で恥じらいなく手を大きく振ることができる、愛嬌の良い「いぬ」タイプだ。 若旦那らしい人のよさと屈託のないまっすぐな性格で、着くなりマシンガンのごとく喋っている。 気付いた

          テントサウナ

          サプライズ

          つながり寄席の主催、天野さんのお力でたびたび福岡で落語会をやらせてもらう。 会をやるだけでなく、送迎からチケットの手配、接待に遊びまで毎回完璧なプランを立ててくれるので本当に有り難い。 靴を舐めろ言われたらすぐに舐めさせて頂くが、靴を舐めろなんて決して言わない人格者、いつもニコニコしている。 その天野さんから北九州での仕事のお誘いが来た。 内容は弟弟子の文太が中心となって開発した「らくごcar」のお披露目公演に出てくれとのこと。 らくごcarのことを説明すると長くな

          サプライズ

          リコーダーと鈴

          小学校四年生の頃、クラス全体の演奏会があった。 体育館に集まりクラスごとに課題曲を発表する。合唱はなく演奏のみという、なんてことない行事だ。 我がクラスはネバーエンディングストーリーのテーマソングを演奏することになり、クラス内では「これを忠実に演奏できれば優勝間違いなし」と期待が巻き起こり、コンクール実行委員も、我々平民のクラスメイトも「演奏会優勝、力を出し切ろう」というやる気まんまんのスローガンを掲げ練習を始めた。 まず演奏する楽器を生徒自身で決めなくてはならない。

          リコーダーと鈴

          上地君

          上地君と知り合ったのは大学の頃で、僕は落語研究会、彼はマジック研究会の一年生同士だった。二人とも腕はともかくお互い部長という、とても小さく非常に無駄な天下を獲るころから本格的に飲みに行くようになり仲良くなった。  それから僕は噺家に、写真学科だった彼はカメラマンとなり、疎遠になりそうな時期も乗り越え、高円寺であーでもない、こーでもないと酒を飲みながらの愚痴話。 たいてい僕が酔っ払って『俺のことを褒めてくれ』と駄々をこねるのを笑顔で受け止めてくれた。一方僕はその記憶が酒のお