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パンドラの箱みたいな初恋

お腹が減っている。
でも、何が食べたいのか分からない。
なにか口にしたいのは確か。
空腹なのは、確かなんです。
そんなときに、なんとなく偶然、
口にしたものが所望していたものだった。

それが私にとっては、はじめて好きになった彼なんです。

正直、これまで本気で恋をしたことがなかった。
熱しやすく冷めやすい私。
好きって感情も刹那的でイマイチまだわからない。

そんな私に恋を教えてくれた君との出会いは、パンドラの箱からやっと希望を見つけたような瞬間だった。

そんな君を、
忘れられるはずない。
憎めるはずない。
嫌いになれるわけない。


悩みや辛いことを抱え込む私を、否定せず話を聞き、寄り添ってくれた。

家に帰るのがつらいこと。
私を育ててくれた親に感謝をしなくてはいけないことだけど、そうは思えないこと。
人に嫌われたくて言えなかった気持ちを、はじめて君に話せた。

「嫌いになんてならないよ。そういうこともあるよね」
と寄り添い続けてくれたのが君だった。

「おはよう」
「今休憩だよ」
「今帰ったよ」
「おやすみ」
連絡をこまめにしてくれた。電話もたまにしたね。

恋愛経験の少ない私が、そんな君を好きになるのは時間がかからなかった。


「嬉し楽しい恋愛が永遠に続くことはない。いつか終わりがくるよ。僕が証明しちゃったんだ」
だから恋愛をするより遊んでたいかな、と悲しい目をして君は言っていた。

だから、私の片思いなのは分かっていた。
でも私は、「私は、その証明崩してみせるよ。好きだよ」
気づいたらそんな言葉が先走っていた。人生初の告白をしてしまった。


そんなことに気づく暇を与えないように君が口を開いた。
「正直僕、年上の女性が好きなんだ」
彼は、3つ年上の社会人。私は、年下の大学生。

あーあ、早速振られた。

がっかりしている私を気を遣ってくれたのか
「はじめてだったよ。年下の子と一緒にいて、こんなに楽しいって思えたのは」
と言ってくれた。

これが君と過ごすのは最後の日になった。


そんな初恋だった君と会わなくなって、もう2年が経った。

チューリップの咲く、この季節になると今でも懐かしく思い出してしまいます。
一緒にコナンの映画見たよね。
君は、「毎年違う女の子と見るなぁ」
って、悲しそうな目をして言っていた。

またその目をしている。
でも、そんな君がとてつもなく好きだった。
「来年も私と一緒に見よう」
と言いたかったけど、口約束にしてしまったらと怖くて、それまで離れないという覚悟を決めることしかできなかった。

それを叶えることもできなかった、当時の弱い私。

そして、私は自ら君の元から離れた。
君と繋がっている連絡先をすべてブロックした。
君を好きで好きなのに、それがつらくなってしまった。
好きでいるだけを続けるのは無理だった。
私も好かれてみたかった。
その欲求に負け、君を好きでいるのを諦めた。
私は、自分の幸せになる選択を私はとったのだ。
最低だ。


私は、今年のコナンの映画は、君じゃない人と見たよ。
きっと君も違う子と見たのかな。
幸せを願う資格もないかもしれないけど、君には幸せであってほしい。

私たちは、パンドラの箱から希望を、愛を、
見つけ手にし続けることは難しいと思う。
でも、その希望を見つけられた瞬間を、忘れずに噛み締めて、今を生きていきたい。

また、その瞬間に出会える日がくるまで、
私は、愛に振り回され続ける。

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