見出し画像

リチャード・ギアがホームレスを演じる映画を父娘の心理学的な目で観てみた

こんにちは!
カードリーダー/カウンセラーの橘奈緒美です。

皆さんの地域は台風の影響はあったでしょうか?

何事もなく過ごされていることを願うばかりですが、私自身は予定していた仕事がなくなり、千葉はなかなかの豪雨でもあったので1日引きこもっていました。

せっかくぽつんと空いた時間だし、映画でも観ようと思い立ち、Youtubeで無料公開中のものから選ぶことにしました。


あのリチャード・ギアがゴミ箱を漁る衝撃

『Lost in Manhattan』という映画をご存知でしょうか?

今回はこの映画を観た感想を少しだけ心理的な目線も加えつつ、あまりネタバレしないように書いてみようと思います。

10年前の作品ですが、リチャード・ギアが仕事も家族も失ったホームレスを演じたことで話題になった映画です。

実際に街中で撮影中の彼を見た人も、まさかあのビッグスターだとは気づかなかったくらい役作りが素晴らしかったというエピソードも有名なのだそうです。

毛玉だらけのマフラーに薄汚れたシャツを着て、ゴミ箱の中から食べかけのバーガーを拾って食べるリチャード・ギアなんてなかなか想像できませんもんね。

私は今回前知識なしに観始めたので、雨戸を締め切った暗めの部屋で見るには暗すぎた!?とちょっと後悔するくらいホームレスの現実を突きつけられて、救いようのない気持ちに持っていかれるところは、やっぱりすごい俳優さんです。

リチャード・ギア演じるジョージは、仕事も家族も失ってしまった孤独な老人です。

子供の頃に見た「プリティ・ウーマンのエドワード」のイメージが強烈なので、ここまで落ちた彼を見ると、もしエドワードがヴィヴィアンに捨てられて、事業も大失敗して身ぐるみ剥がされたらこうなるかもしれない…マンハッタン恐ろしや、と想像したりもしました。

ホームレスから立て直すことの難しさと父娘の複雑な感情が絡み合う

この映画のテーマは二つあって、一つはアメリカが抱えるホームレス問題。

「時々、情熱を持って俺たちを助けようとする若い奴も現れるが、すぐに諦めるんだ。ホームレスは毎日増えるだけだからな。」

ホームレス仲間のディクソンの言葉に「当たり前だ」と言わんばかりにぼんやりした視線を送るだけの希望のなさ。

冬のニューヨークは寒いのに、着ている服を売って酒を買い、現実から目をそらす。

やっとの思いでシェルターに入ってもいつ追い出されるかもわからない、仕事を得るために必要な社会保障番号が書いてあるものも持っていないし、「代わりになるパスポートや出生証明書を出してください」などと言われて遅々として進まない行政手続き。

「何も持っていない、何もないんだ!」と叫ぶ姿は本当に見ていて辛くなります。

実際にホームレスの社会復帰が難しい理由の一つは、煩雑な手続きやそのために必要なお金を稼ぐ苦労を経てまで立て直したい理由がないと難しいのだろうと思いました。

そしてこのどうやって立て直すか?というところに映画のもう一つのテーマ「父と娘の愛情問題」が絡んでくるんです。

底辺に落ちてもプライドを捨てきれない男が立ち直るためにしなければいけなかったこと

ジョージには疎遠になった一人娘のマギーがいますが、彼女に家族の写真を渡すためになけなしのお金と写真を他人に託し、マギーに渡してもらいます。

その理由がまた父親としては情けないのですが、もし彼に娘の存在がなかったら、なんとかしようという気持ちはとっくに尽きてしまっていたのかもと思うんです。

彼女に頼らないとどうにもならないという状況まで追い込まれないと、プライドも捨てきれなかったはず。

黒人のディクソンが言う「白人のホームレスはプライドが高いからこんなところ(シェルター)には来ないんだ」というセリフがあるのですが、ジョージは周りから誰もいなくなって、本当にどうしようもなくなるまでプライドを捨てられないんですね。

「俺はホームレスじゃない」と言って度々現実逃避をします。これが本当に、娘視点だとイライラします笑

ジョージは無駄なプライドを捨てること、そして「助けてほしい」ということが必要だったのに、ギリギリまで人に頼れない。

依存の自立の状態なので、自立心があると言えばあるけど、行動が依存的なのです。
その行動を逆にすること、つまり「助けを求める行動をして自立に繋げる」ことが必要だということに限界まで気づけないんですね。

そもそも娘に対しては彼は父親の役割を放棄してしまったし、すぐにアルコールに逃げたり女性に手を出してしまう男です。

そんなプライドだけ高くてどうしようもない父親に再会した時、「もう会わない」と言うマギーの気持ちもよくわかる。

娘側の心情が共感しかない

そんな恨みにも似た気持ちを持った彼女だけど、親子のつながりが感じられることもわずかに見えます。

そこは映画を観てみていただけたらと思うんですが、ああ、この彼を選んだのって、この職場で働いているのって、もしかしてお父さんの影響かな?と思うシーンがあるんです。

ジョージが行政の女性から「娘と父には特別な絆がある」と言われるシーンがあるのですが、何か気に食わないとすぐ酒に逃げるダメ親父だし、父親らしいことをしてこなかった父親だけど、確かに何かしらの縁は残っている。

どんなクソ親父でも完全に捨て去る決意をするのはこんなに難しいのね、と思い知らされます。

私自身も父と娘、と言うテーマでカウンセリングをすることもあるし、私も長年向き合っている課題でもあります。

父親からどんな影響を受けているのか?という視点も大事なのですが、それを踏まえた上でこれからどうしたい?という気持ちを明らかにすることも同じくらい重要なこと。

娘側の本音がこの映画のラストシーンに現れているので、ダメ男を父親に持つ娘仲間に観ていただきたいなって思います。(メンタルが安定しているときにどうぞ)

黒人が白人を助けるという構造も組み込まれている?

そしてこれはちょっとこの映画のテーマとは別の話かもしれませんが、ジョージを助けようとしてくれるおせっかいなホームレスのディクソンは黒人男性です。

以前ホアキン・フェニックス版の「ジョーカー」が上映された時も話題に上がった「困難に陥る白人に対して、行政の従事者や援助をする人たちが黒人」というのがこの映画でも共通していたんです。

シェルターや支援施設で就業する人に黒人が多いということもかもしれませんが、見方によってはアメリカの格差が人種によるものではなく、個人の資質によるものに変わってきたのはもう10年も前からだったのかもしれません。(もちろん環境の影響が大きいのは前提としてありますが)

これはジョージが「ハンサムなのに」「白人なのに」という設定の上で、プライドを捨てきれずに追い詰められる男を引き立てるための演出だったのかなとも思うので、この映画でそのことを伝える意図があったかというと不明です。
観た方の感想が聞けたらなと思います。

今回は私の映画感想文というか、やっぱり国が変わろうが父娘って複雑だよねというお話をつらつらと書いてみました。突然ザックリ終わります。

こんな映画感想文を読んでいただいた優しい方、(いるのかな?)
ありがとうございました!

橘奈緒美でした。


今月のカードリーディング/カウンセリングセッションのご予約はこちらから↓


8月31日(土)のカードリーディングイベントの予約もまだまだ受付中です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?