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【解の一つ】組織における利益と理念の葛藤 ー私が会社を辞めた理由ー

お金が今の世の中で大切なモノであることは言うまでもありません。それは、個人であろうと組織であろうと同様です。しかし、昨今、お金を至上とする考えがあるようにも感じられます。私はお金はあくまでも手段であり目的ではないと考えています。今回はその立場から組織とお金について、私の意見を述べていきたいと思います。

私は、組織とはある目的達成のために人々が集まったもの、と考えています。そして、それは資本主義の原理で動く株式会社のような営利企業も例外ではなく、その目的とは理念の実現にあると考えています。

企業によって理念の呼び方は様々であり、パーパス、ミッション、ビジョン、バリュー、社是など、他にもありますが、いずれもその企業の存在意義や目指す方向、大切にしている価値観などを表すものです。

私が勤めていた会社は有名企業を親会社に持つ農業系専門商社で、その理念として「日本の農業に幅広く貢献すること」を掲げていました。

私はこの会社に大卒入社後9年半勤めた後に、退職しました。退職理由は一つではないのですが、一番大きな理由は価値観の相違でした。

私は、この会社の企業理念に賛同していましたし、何より先述の「組織とはある目的達成のために人々が集まったもの」であると考えていましたので、この企業理念を指針として働いていました。
変わっていると思われるでしょうが、そう考えてしまうのですから仕方がありません。そして、そう考える自分からすると、会社の行っていることが理念からずれており、価値観の相違を感じるようになっていました。

会社は採算性を理由に、事業の縮小や撤退を行うようになりました。生産性向上や効率化が叫ばれる昨今では当然の流れかもしれません。勿論、利益の出ていない事業は継続できません。傷の浅いうちに縮小して効率化したり、事業を他社に売却するなどは経営判断としては妥当なものでしょう。

しかし、それによって、企業理念に反してしまう場合はどうでしょうか。日本の農業に幅広く貢献することを掲げながら、農業の一部門から完全に撤退してしまうことは、日本の農業へ貢献できる機会を減らすことであり、理念に反することです。そして、その撤退理由が採算性であるところに、組織における利益と理念の葛藤があります。

私は、最終的に会社の方針に疑問を感じて退職したわけですから、利益より理念を優先しているのは間違いありません。先に理念があってその後にいかにして利益を出すかを考えるべきだと考えています。

しかし、理想に溺れて現実を見ないでよいと思っているわけではありません。つまり、理念は常に利益より優先すると言いたいわけではありません。

例えば、ある事業の赤字を放置すれば、会社が倒産し他の事業も継続できなくなる場合など、一部をやめるか全部をやめるかの二択になった場合などは、短期的には理念に反しているとしても赤字事業から撤退するのはやむを得ないでしょう。こういった状態にならないように努力すべきですが、それは結果論です。最悪の選択を避けるためには少しでもましな方を選ぶしかないときもあります。

しかし、そういった切羽詰まった状態でない場合には、短期的な利益であったり株主への配慮だったりではなく、中長期的な視野を持ち、企業理念を基にどうするべきかを熟慮する必要があると考えます。

そもそも、理念から外れて利益を出したとして、その組織はどうするのでしょうか。何を目指すのでしょうか。理念を失った組織は、目的地を忘れてしまった旅人のようなものです。あてもなくたださまようだけではないでしょうか。

繰り返しになりますが、お金(或いは利益)は大切です。しかし、それは組織にとって、あくまでも目的達成の手段の一つとして大切ということです。何事も目的と手段が逆になってしまい、本末転倒とならないように、何が本当に大切かを考えながら行動することが肝要だと考えています。

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