疫病神-肆-
「誰も私を助けてくれない!
皆、自分勝手に私を使って面白がって、自分勝手に私から離れて行く。
私の人生、こんな事ばっかり。
いつも自分勝手な人間に、私ばっかり振り回される。
どうして誰も私を助けてくれないの?
どうして私を分かって、傍にいてくれないのよ!」
『言ったろう?
お前さんの周りに集まってくる人間は、ぜぇんぶお前さんの鏡だって。』
老夫は優しく、香織を諭しました。
『お前さん、ここが正念場だよ。
ここで自分を顧みなけりゃ、一線を超えちまうよ。』
「それ、今言う話!?
泣いてるんだから、慰めてくれたっていいじゃない!」
『今、必要だから言ってるんだぇ。』
「自分を顧みろ、引き返せって…。
私が何をしたっていうの?!
むしろ、私は被害者なんだけど!
大勢の人間に、ひどい事を沢山言われているんだけど!
ネットなんて、あっという間に話が広がっちゃう。
ゴシップならなおさらでしょう?!
どうせ広がっていく私の話だって、あることないこと尾ひれがついてさ。
皆、私と一緒になって霊能者をこき下ろしていた癖に、どうせ私一人が極悪人みたいに世間じゃ思われちゃうんだ!」
諭されたところで、香織の心は鎮まりません。
怖い。炎上が怖い。
それ以上に、顔も知らない人達から非難や批判を浴びるのが恐ろしい。
冷静に考えれば、今すぐパソコンを閉じるか、ブログから立ち去ればいいだけの話ではあります。
元よりネットは、匿名の世界。
今すぐ香織がネットーブログから立ち去ったところで、現実世界では誰一人香織がしてきたことを知る人はございません。
それでも真っ向およそ様から、異を反する意見を差し向けられると心臓の奥がきゅっと縮みあがってしまう。
それに便乗して、顔の見えない不特定多数の人間から批判されているとくれば、まるで全人格を否定されたような気がしてしまう。
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