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ツイッターの“魔力”~スワイプ=Swipeを日本語にどう訳す?~

文筆家の山本貴光さんとやりとりしていて、「スワイプ」ということばが気になったので調べてみました。

VR=バーチャルリアリティーの訳語が気になったのと同様の“病気”ですなw。

スマホに入っている「新明解国語辞典」(アプリ版)で調べてみると、「スワイプ」は載っていない。

続いて、「大辞林4.0」(アプリ版)。ありました!

タッチスクリーンなどで、画面に置いた一本の指を上下、左右に動かすこと。上下の場合は画面がスクロールし、左右の場合は前後のページに移動する。

とあります。なるほど。一方、「スクロール」との違いも気になりまして、調べてみると・・・

コンピューターで、ディスプレーの一画面で表示しきれないとき、巻物を巻くように表示内容を上下・左右に動かすこと

とあります。

「スワイプ」の方は、上下と左右を分けているのに、「スクロール」の方は、両方とも同じ。比べると、微妙に違っていて、面白いですね。

念のために、「新明解」で「スクロール」を調べると、「コンピュータの画面内の表示内容を左右・上下に動かすこと」とある。


「大辞林」の「スワイプ」の語釈はユニークと言えましょうかw。どうして区別したんだろうか。ページが、上下で動くなんて、コンピューターではふつうにありますもんね。 

OED(Oxford English Dictionary オンライン版)で調べてみると、

5. transitive. To pass (a credit card, identity card, etc.) through an electronic device in order to read and process data magnetically encoded on it. 

とあるが、私が想定したような語釈はなかった。あれ?調べ方が悪いかなあ。

「ウィズダム英和辞典」(アプリ版)には、

1...を強打する 2...を盗む、かっぱらう 3. <時期カードなど>を読み取り機に通す(OEDにあるのは、これだと思う) 4.[コンピュ]<タッチスクリーンなど>を指でさっとこする。スワイプする

とある。「強打する」って意味から「さっとこする」という意味が生まれたような気がする。ただし、「強」から「さっと」に変わっている。ここには、「かっぱらう」のニュアンスも入っているのかも。確かに、「スワイプ」の語感には、「強」はないような気がするが、「勢い」はある。

さて、次は、いつ、だれが、スマホの、現在「スワイプ」と呼ばれる操作に「swipe」という語を当てたかということだが、現時点ではそこまで調べがつかない。「スクロール」と区別しようという意図も感じられる。

実際、PCで、マウスを使ってスクロールするのと、スマホやタブレットで画面を動かす「スワイプ」では、身体感覚が違う。もう10年前、いや、たった10年前とも言えるが、「スワイプ」したときの軽快感、疾走感みたいなものは、とても印象的だった記憶がある。確かに、あれは、大きなステップだった。しかも、それは、指を、宙で上下左右に動かすのではなく、画面に物理的に触れることで行う。しかも、操作者が主体的に、能動的に、操作的に!その「触感を伴った疾走感」が、快感情動を引き起こすのは、自分でもよくわかる(もちろん、プログラム上の違いがあって、区別しようという意図があったのかもしれない)。しかし、「主体的」というのがくせ者で、これが、ツイッターやFacebookのアルゴリズムやUIで、どんどんスワイプさせられている(操作されている)としたらどうだろう・・・。つまりは、この「依存」的状態が仕組まれたものであったとするならば、ということだ。ぼくたちは、“SNS資本の魔力”に、まんまと虜にされているというわけにならないか。“むむむ”なのだ(このあたりの触覚の話は、美学者の伊藤亜紗さんの話も参考にさせてもらっている)。


さて、この「スワイプ」をどう日本語に訳せるのか?

スマホが登場した当時の記事を調べてみようと思うが、おそらく、上で示したような説明的なものはあっても、いわゆる訳語はなかったのではないかなあ。上記の説明を、例えば、2文字の漢字で表現できるだろうか?「触動」(しょくどう)なんてどうかなあ。いい案があれば、教えて欲しい。コンピューター関連の業界はいつから「翻訳」をあきらめて、カタカナにすることになったのだろう。

とはいえ、思想や哲学分野などでは、まだまだ、新造語を作るなどしてがんばっている。翻訳する人の苦労は並大抵ではないだろう。カタカナ化して導入するのは簡単なこと。ここは、日本語のふんばりどころなのかもしれない。

特に最近は、コロナウイルスの関連では、「オーバーシュート」や「ロックダウン」、「ソーシャルディスタンス」など、わざわざカタカナにしなくてもいいと思えることばがはん濫しているだけに余計にそう思う。




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