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アガサ・クリスティー関連図書9

アガサ・クリスティー とらえどころのないミステリの女王

ルーシー・ワースリー著/大友香奈子訳

全世界に読者を持つ巨匠アガサ・クリスティー。しかし彼女は職業を聞かれれば無職と答え、書類には主婦と記入した。当時の社会階層やジェンダーのルールにより平凡なふりをして生きた20世紀の偉大な作家の一生に光を当てる。

原書房 帯より引用

2022年に出版されたアガサ・クリスティー最新の伝記。
クリスティーが自身で書いた自伝には書いていない「裏事情」が、第三者の客観的な視点でかなり詳しく書かれている。

今まで伝記や、有名なクリスティーが起こした失踪事件の「真実」みたいなものにはあまり興味が持てず、他人が書いた伝記は読んでこなかったのだが、関連図書も読むものがなくなった時に新作が出版されたものだから、まずは図書館で借りて読み始めた。

最初に、自伝によくある古い写真と説明文が16ページあるのだが、今までどの本にも掲載されていなかったクリスティーのカラー写真が載っている!!
白黒写真ではわからなかったクリスティーの瞳の色がとても印象的✨
亡くなる少し前で心臓発作を起こした後の、痩せ細った姿のポートレートだが、美しいブルーの瞳が着ている服の色とも似ていて、とても落ち着いた穏やかな佇まいの肖像写真。
これは買わねば…と、結局Amazonで購入しました📖

クリスティー自身が書いた自伝では、子供時代~最初の結婚や家に対するこだわりのことなど、ほのぼのとした話も多く、戦時中は看護師や薬剤師として働いていた様子なども生き生きと書かれていて、美しい思い出を中心に『私はこんなことをしてきたのよ』と、多少自慢めいてもいる。そもそも自伝なので…。
クリスティーの悩みや葛藤の部分は、メアリ・ウェストマコット名義の小説に私小説的に書いてあって、それもとてもリアルな心情が垣間見える。

この本では、クリスティー自身が詳しく書いていない、出版社とのトラブルや失踪事件のこと、経済的な苦労として多額の税金のことなど、作品とは違った面も掘り下げられている。

もちろん、執筆に関してのクリスティーの言葉の引用なども時代時代で書かれており、クリスティーファンには必読に値する本だと思われます。

訳者あとがきにある、

孫のマシューが、アガサはつねに「生きる喜び」を感じていたと語っている。どんなにつらい状況にあっても、それを克服し、小説のネタにするたくましさが彼女にはあった。

アガサ・クリスティーの書く物には、ミステリという枠を超えて訴えてくるものを感じるが、それがこの「生きる喜び」なのかもしれない🍀🍀🍀

2024年2月 第2版 原書房


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