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【 読書レビュー 】レモンと殺人鬼

レモンと殺人鬼/くわがきあゆ著 宝島社

初読みの作家さんです。
読書アカのTwitterの #読了 で面白そうだったので読んでみました。

10年前、洋食屋を営んでいた父親が通り魔に殺されて以来、母親も失踪、それぞれ別の親戚に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回り出す。被害者であるはずの妃奈に、生前保険金殺人を行っていたのではないかという疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、その疑いを晴らすべく行動を開始する。

文庫本の裏表紙より


主人公の美桜は、派遣で大学事務で働いている。同世代はまだ大学生で、片やキャンパスライフを謳歌し、片や派遣のギリギリの収入でなんとか一人暮らしをしている。
顔に自信がなく、常にマスクをつけお昼ご飯も誰もいないところでお弁当を食べているほどだ。

美桜のたった一人の妹の死によって、突然マスコミに追われる日々。しかし、それは父親が殺される事件によって、過去にも体験したことだった。
その時は被害者家族としてだったが、今回はもしかしたら加害者家族なのか・・・妹に関して勝手に報道される保険金殺人疑惑。

中学生の時にいじめまではいかないが、美桜のことを笑いものにした真凛が、同じ大学に通い、美桜がひょんなことから副業として始めることになったボランティアにも参加している。
その真凛の恋人の渚が、ジャーナリストを目指しており、真実を見つけるために手を組まないかと声を掛けてくる。

父親を殺害した佐神翔が、再び現れて妹の妃奈、母親、そして次は美桜を殺そうとしているのかもしれない。
佐神翔の今の姿はもしかして・・・。

美桜の現在と過去が章ごとに描かれており、様々な疑惑が浮上していく。

後半は、反転に次ぐ反転で疑惑への認識が変わっていき相当にめまぐるしい。
が、混乱したり矛盾することもなく読みすすめることができた。

歪んだ人物も出てくるが、美桜の中にも歪みがあり、誰の中にもあってそれらをことごとくあぶり出していき、結局歪んでいない人なんていないんじゃないか?・・・となる。

しかし、なぜ私は加害者家族が必ず罪の意識に苛まれると思い込んでいたのだろう。罪を犯した自分の家族の正当性を信じている可能性を考えなかったのだろう。(略)
加害者家族の親がまた加害者気質であっても、少しもおかしくない。それは遺伝なのか運命なのか。

美桜一家は虐げられるべき星の下に生まれたと思っていた美桜だが、それも立場を変えれば虐げる側になる。


ラストは、美桜の行動と決断が潔くてとても良かったです。

2023年7月1日読了。



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