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発刊順:17 邪悪の家

発刊順:17(1932年) 邪悪の家/田村隆一訳

ニックが狙われたのは4度目だった。最初は寝台上の大きな額が落ち、次は車のブレーキが壊れ、続いて崖の上から岩が転がり落ちてきたという。そして今度は知り合ったばかりのポアロの目前で、何者かに狙撃されたのだ。古びた邸の若い女主人でさしたる財産もないニックがなぜ襲われるのか?さしもの名探偵も解決の糸口がつかめない。そのうち、人違いか、パーティの最中にニックの従妹のマギーが射殺されてしまった。執拗にニックをつけ狙う謎の人物の動機、そして、待ち受ける驚くべき真実とは?

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より


読んでもすぐに忘れて、タイトルだけではどんな話だっけ?ということが多いけれど、この作品は印象的で覚えている。
 
イギリスの南部海岸で一番魅力的な町、セント・ルー。ポアロはヘイスティングズとともに優雅な休暇に来ていたが、そこで美しく魅力的な女性ニックに出会う。
 
この物語は、なんとポアロの目の前で殺人が起きてしまうのだ。
最近何度も危険な目にあっているというニックの命を守ろうと、そばに控えていたのに、ニックのショールを身にまとった従妹のマギーが殺されてしまう!
 マギーはポアロの助言で、危険な目にあっているニックを見守ってもらうように、セント・ルーに来てもらっていたのだ。
 

犯罪が起こってから犯人を追及するなどということは、いたって簡単なことです!
いや、すくなくともわたしの能力にかけたら簡単ですよ。
いわば、殺人者は犯罪を起こすことによって、自分の署名をするようなものですからね。
しかし、いまのところ、犯罪はまだ起こっていないのです。(略)
未然の犯罪を調査することぐらい難しいことはないのですよ。
 

本文より

と言っていたポアロの目の前で…。
激しく動揺し、自責の念に苦しむポアロは一晩中事件を考え、リストを作る。決して第2の殺人は起こさせないぞ、と。
 とてもドラマチックな展開で、犯人捜しと第2の殺人を防ごうと動くポアロ。
 
旧友との再会もあり、ジャップ警部がポアロの元へ訪れて、 

「ずいぶんお会いしていませんでしたね。ムッシュー・ポアロ?田舎でカボチャ作りに専念しているとばかり思っていましたよ」
「いや、さかんに作っていたのですがね。カボチャづくりをしていてさえ、殺人事件とはなかなか縁を切るわけにはいきませんよ、ジャップ」

と、過去の事件(アクロイド殺し)からの流れを感じられるやりとりがあって面白い。
その後、クライマックスでジャップは大事な役回りをするのだ。
 
意外性のある犯人と、ある仕掛けはさすがクリスティー。
再読のため、犯人は途中で気づいたけれど、仕掛けまでは思い出せなかった。

HM1-75 昭和63年4月 第10刷版
2022年4月2日読了

読後、カバーの表紙の絵を見ると、絵柄がとても暗示的なのだ。。

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