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オランダの食事に「ちょっと待ったー!」

「夕食がフライドポテトだけ」なんて嘘だと思ってた

オランダに来たばかりの頃、海外の文化を紹介する日本のバラエティー番組で、「オランダ人の夕食は、フライドポテトだけという日もある」と紹介されていると聞いた。レポーターの「食材がポテトだけで味気なくないのか」という質問に対して、取材に答えたオランダ人は「ソースの種類が多いから、飽きないよ」という衝撃の内容だ。

わたしの最初の感想は「いや、さすがにそれはないでしょう。栄養偏りすぎだし。またテレビが大袈裟に伝えているのかな」だ。

当時、外国人(オランダに移住してきた人たち)とは仲良くなるものの、現地の人と交友関係はほとんどなく、わたしが知っている数少ないオランダ人は彼氏と彼の家族だけだった。たとえば、同棲前に、彼のアパートに遊びに行った頃は、パスタやラザニアなどのイタリアンを振る舞ってくれることが多かったため、「日本と比べると、品数少し物足りないけど、普通に美味しいけどなぁ」というのがわたしの認識だった。実際のところ、それは今でもさほど変わっていない。

時は経ち、仕事で仲良くなったオランダ人数人にその日本のテレビ番組の内容を打ち明けてみた。「えー、ありえないよ、さすがに。やっぱりマスコミは大袈裟だよねー」とかいう反応を想定していた。

すると、その同僚は「あー、そういう日もあるね」。

.....え?

そういう日もあるの?!

オランダ人の”食”感覚

続けて、同僚は「実際、夕食でファストフードで済ます人っているでしょ?そんな感覚。個人的には、むしろ、そういうところで済ます方が不健康な感じだな」と。

それ、どういう理屈?!

彼によると「だって、そういうファストフードの食事って添加物とかたくさん入ってそうじゃない?あと、食材の少なさは、確かに健康的とは言えないけど、たとえばペペロンチーノだって、パスタにガーリックと唐辛子だけじゃない。それとさほど変わらないよ」と。

な、なるほど〜。えー、でもぉ〜....うーーん、そうかー。

なんだか、腑に落ちたような、そうでもないような。

あらためて、オランダ人彼氏に「嘘だと思ってたから、聞いたことなかったけど、フライドポテトだけの夕食ってあった?」と聞いてみた。

彼氏の場合は、「僕の家では、それはなかったけど、そういう家庭もあるかもね」と。

彼曰く....

・一般的にオランダ人は、日本人ほど食事に対して執着してない。
・お腹が空いたから、お腹を満たす。それが、食事の第一義。
・家族や友人と食事の”時間”を楽しむ事は重要だけど、”食”自体を楽しむという欲求はそこまで高くない。

だそうだ。

彼の実家で「ちょっと待ったー!」

初めて彼の実家に招待された時も衝撃を受けたのを覚えている。

彼がどのような食事文化で育ったかというと、ほぼ毎日、ポテト+肉(牛・豚・鶏)+野菜1、2種のワンプレートだったそうだ。ポテトはマッシュドポテトの時もあれば、フライドポテトの時も、茹でただけの日もある。刹那的に「毎日、じゃがいもって。飽きそう」と思ったが、わたしだって米を毎日飽きもせずおいしく食べているのだから、そういうものなのだろう。

招待を受けた日は、彼の家族がわたしをあたたかく迎えてくれた。天気が良かったので、裏庭で食べることに。

聞き及んでいたワンプレートの食事が出てくるかと思っていたが、意外や意外、料理が次々と運ばれてくる。まず、パンに載せて食べる数種類のハムや、チーズに、オリーブなどのおつまみ。木肌がサイドにそのまま残されているお洒落なボードプレートに載せられたそれらは、「ほれ、わたしら、うまそうでしょ?ふふん」と心なしか誇らしげ。さらに、2つの大鍋にはそれぞれカスタードスープとマッシュルームのスープが入っていた。パンをじんわり浸してたべたい!

わぁ〜これは、思いの外、豪華♡こんなに素敵なオードブル&スープを用意してくれるなんて、特別な日にはこういった食事もするんだなぁ、と感動していた。

しばらくして、みんなの食べる手が止まってきたので、彼母が立ち上がった。

わたしは「お、そろそろメインディッシュ?このリッチな前奏だから、期待しちゃうなぁ」と心躍らせた。

すると、彼母は「さ、みんな。そろそろお皿を片付けるわよ。デザートのアイスクリームがあるの。イチゴとチョコどっちがいい?コーヒーも入れるわね♡」と意気揚々。

一方、わたしは「え.......メインディッシュ....ないの?!」とプチパニック。

盛大に勘違いをかましてしまっていたようだ。勝手にメインディッシュが出てくるものと思っていたが、スープがそれに当たるようだ。

「ちょ、ちょっと待ったー!まだお皿下げないで。まだ食べますーー」と内心、絶叫しながら、急いで、目の前にあった残飯をできるだけ目立たないようにささっと自身の皿へ移動させ、事なきを得た。あ、危なかった。危うく、素で「え、これで終わり?」と失礼な発言をしてしまうところだった。

結婚するならオランダ人?!

オランダ人の名誉のために、個人的な見解を言っておくと、決してオランダ料理がまずいわけではない。ただ、バリエーションが少ないのは否めない。先述の彼の見解のとおり、食への探究心とかパッションがイタリアやフランスなどのいわゆる美食国と比べると一歩譲る、というのはあるかもしれない。

しかし、野菜などの食材自体の品質や味はいい。特に、さすが酪農大国オランダ、乳製品は格別だ。さらに、ベジタリアンやBIO系の食材はすごく入手しやすいので、自炊するときは日本にいるときよりレシピの幅は広がるし、いろんな味に挑戦できるから楽しい。また、インターナショナルな国なので、さまざまな国籍のレストランが多く、食生活に彩が加わる。

なかなか、慣れるまでは多少の時間を要するオランダ食文化だが、オランダ人の彼と同棲した今、実はありがたみを感じている。「あ、失敗したかも」という料理でも、「おいしいよ」とモグモグしているし、美味しくできた料理は「え、何コレ、めっちゃ美味しいんですけど」とバクバク食べる。

結婚相手にするなら、こういう相手がいいな。

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